狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『七羽のカラス/グリム童話』です。
文字数2000字ほどのグリム童話。
狐人的読書時間は約5分。
緊急の場合、親であってもイライラして、勘違いして、子どもに呪いの言葉を言ってしまうことがある。たいていの場合、あとで謝って仲直りできるが、そうならない場合もある。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
ある男に七人の息子がいて、ようやく待望の女の子が生まれるが、病弱な子供だった。男は急いで洗礼するため、息子たちに水をくんでくるよう命じる。
息子たちは慌ててしまい、水差しを井戸の中に落としてしまう。なかなか帰ってこない息子たちが、どこかで遊んでいるのだろうと思い込んでしまった父親は、「みんなカラスになってしまえ!」と呪いの言葉を口にする。
途端、息子たちは七羽のカラスとなって飛んでいってしまい、その羽音を頭上に聞いた両親は、呪いの言葉を言ってしまったことを後悔して、悲しむ。
女の子は兄たちのことを知らず、美しく元気に育ったが、あるとき自分のために不幸になった七人の男の子の話を耳にしてしまい、両親にそのことを問い質すとすべて事実だった。
女の子は兄たちを救うことを決意する。両親からもらった小さな指輪と、少しばかりの食料を持って旅に出る。
女の子は世界のはてまで歩き、太陽、月、星に出会う。太陽と月は恐ろしかったので、すぐに逃げ出してしまったが、星は女の子に優しかった。
星は、兄たちがガラスの山にいることを教え、カギとなるヒヨコの足を女の子に渡す。
女の子はガラスの山に辿り着くと、ヒヨコの足を包んでいた布を開けるが、そこには何もなかった。どうやら道中でなくしてしまったらしい。
女の子は自分の小指をナイフで切り落とし、ヒヨコの足の代わりに門に差し込み、扉を開けた。
中には小人が一人いて、七羽のカラスは留守であることを伝えた。女の子は七羽のカラスを待つ間、彼らの食事と飲み物を一口ずつもらい、最後のグラスに両親からもらった小さな指輪を落としておいて、扉の陰に隠れる。
やがて七羽のカラスが帰ってきて、自分たちの食事が減っていることに気づく。七番目のカラスがグラスを飲み干すと、中から小さな指輪が現れる。
彼らにはそれが両親のものであることがわかり、「もしもここに妹がいてくれたなら、僕らは元の姿に戻れるんだけど……」と呟く。
それを聞いた女の子は扉の陰から姿を見せる。
七羽のカラスは驚きとともに元の人間の姿に戻り、喜び合って家に帰ったという。
狐人的読書感想
自分のために七羽のカラスになってしまった兄たちを救うため、女の子が世界を旅するお話といえば、女の子が主人公であることが多いグリム童話らしい物語です。
小さな指輪やカギとなるヒヨコの足などのアイテムも出てきて、なんだかRPGっぽくて楽しめました。
冒険の途中で出会う太陽と月が恐ろしい存在として描かれているのも意外な感じがしておもしろかったです。熱すぎる太陽は小さな子供たちを食べていて、冷たい月はいじわるだった、って……、どんなイメージなんでしょうね?
太陽や月といえば、美しかったり生き物に恩恵を与えてくれたりする、神様に近い印象を僕は持つのですが、しかしこれだって人間の勝手なイメージであって、場所やその環境によって全然違うものになるんだろうなあ、とか考えると、なんだか不思議な気がしてきます。
恐ろしい太陽と月……、恐ろしいといえば、ガラスの山に入るカギとなる、ヒヨコの足をなくしたことに気づいたときの、女の子のとった行動もまた恐ろしかったですね。
ナイフで自分の小指を切り落とすって……。
そこまでしても兄たちを救いたいという女の子の気持ちには感動を覚えますが、童話特有の淡々とした文章で書かれていると、メンヘラとかにも通じるような恐さを、このシーンには感じてしまいました。
恐さの話が続きますが、この物語で一番恐ろしく感じたのは、じつは冒頭の、両親の呪いの言葉で七人の兄弟が七羽のカラスになってしまうシーンなんですよね。
父親は生まれたばかりの娘が病弱だったので、焦って洗礼を施そうと、息子たちに急いで水をくんでくるよう言いますが、息子たちも慌ててしまい、水差しを井戸の中に落としてしまって、水をくめなくなってしまいます。
息子たちがなかなか戻ってこないので、父親は息子たちがどこかで遊んでいるのだと勘違いして、イライラして、ついつい呪いの言葉を言ってしまいます。
親だって人間です。
現実の世界でも、イライラして、勘違いして、ついつい子供を傷つけてしまう言葉を、言ってしまうことがあるように思います。
あとで謝ることができれば、許してもらって、仲直りして、何事もなくこれまでのように仲のよい家族としてやっていけるかもしれませんが、親としてのプライドが邪魔をしたり、この物語のように、息子たちが七羽のカラスになって飛んでいってしまったりしたら……、親の後悔と悲しみはどんなに深いものだろうか、と想像してみると、本当に怖い感じがしてくるんですよね。
人間、ちょっとした勘違いや行き違いから、呪いの言葉を言ってしまうことがありますが、たいていの場合、それはあとで謝ることで事なきを得られるわけなのですが、そうはいかない場合もあります。
後悔しないように、悲しまないように、なるべく呪いの言葉を言わないようにしたいと思った、今回の読書感想でした。
読書感想まとめ
呪いの言葉を言わないように。
狐人的読書メモ
・女の子が生まれてほしいと願う親というのも、子供にとっては残酷なことのように思った。
・『七羽のカラス/グリム童話』の概要
KHM 25。アールネ・トンプソンのタイプ・インデックスは451。『六羽の白鳥』『12羽のマガモ』『ユーディアと7人の兄弟』『野の白鳥』『十二人兄弟』『鵞鳥白鳥』などと同系統のグリム童話である。末子相続の慣習が描かれた作品ともいわれる。
以上、『七羽のカラス/グリム童話』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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