小説読書感想『医者と病人 夢野久作』ブログでさらっと読める医療小説!

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。
(「『狐人』の由来」と「初めまして」のご挨拶はこちら⇒狐人日記 その1 「皆もすなるブログといふものを…」&「『狐人』の由来」

今回は小説読書感想『医者と病人 夢野久作』です。

夢野久作さんの『医者と病人』は1分かからずさらっと読める医療小説!

ふむ、医療小説といえば、

白い巨塔(一~五) 合本版

神様のカルテ (小学館文庫)
エンブリオ 上 (集英社文庫)
新装版 チーム・バチスタの栄光 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
 

といったところでしょうか。数え上げればキリがないわけなのですが。

そんなわけで、前回の『森の神』もブログで読める超短編小説でしたが(⇒小説読書感想『森の神 夢野久作』ブログで全文が読める! 森の神ツンデレ説?)、今回の『医者と病人』もなんとこのブログで全文読めちゃいます!

こちらも『森の神』同様、『医者と病人』は、夢野久作さんのペンネームの一つ、香倶土三鳥(かぐつちみどり)さん名義で発表されました。香倶土三鳥さん名義の小説は、超短編が多いのですかねえ……「このブログで全文読める! シリーズ」が作れそう――とか考えてしまいそう(ニヤリ)。

などとあざといことを言いつつも早速全文をどうぞ。

『医者と病人 夢野久作』

死にかかった病人の枕元でお医者が首をひねって、

「もう一時間も六カしいです」

と言いました。

「とてもこれを助ける薬はありません」

これを聴いた病人は言いました。

「いっその事、飲んでから二、三日目に死ぬ毒薬を下さい」

全文短っ!

112文字……同じく夢野久作さんの『懐中時計』が181文字でしたので(⇒小説読書感想『懐中時計 夢野久作』1分で読…てかこのブログで読める!)、これまで小説読書感想を書いてきた夢野久作さんの小説の中で、最も短い小説となります。

ひょっとすると、意味が分からなかった方もおられるかもしれません(かく言う僕も一読しただけでは理解できませんでした)。少し解説してみたいと思います。

まず「六カしい」という言葉の読み方と意味が分からずに、悩んでしまった方がいるのではないでしょうか(かく言う僕も悩みました)。

「六カしい」は「むつかしい」と読みます。ここまで聞けば、言わずもがなかもしれませんが、意味は「難しい」です。ちなみに『日本国語大辞典(小学館)』に「六借しい」、『あて字用例辞典(雄山閣)』に「六かしい」、「六ヶ敷い」の表記があります。

医者は、病人の容態を見て、「もう一時間も(生きることは)難しい、とてもこれを助ける薬はありません」と言っているわけです。

それを聞いた病人は、一時間後に死ぬのはイヤだ、もっと生きたいから「いっその事、飲んでから二、三日目に死ぬ毒薬を下さい」と医者に言うわけです。

たぶん、この小説は、主に二つの捉え方に分かれるお話だと僕は思いました。

すなわち「ユーモア」と「シリアス」です。

読後、思わずクスリ(薬の話だけに)とした人が多いのではないかと思います。とんち話や落語を彷彿とさせるような「ユーモア」のあるお話だと読み取ることができますよね。おもしろいお話です。

しかし一方、これを現実にあったノンフィクションだと考えると、病人の最後の台詞はとても切実なものです。

死にたくない、もっともっと生きていたい……こうした病人の願いは、人間の本能的なもので、誰でも共感できる思いでしょう。

想像してみます。

病人は一家を支える大黒柱かもしれません。妻や子供――残された家族の苦労を考えると簡単に死ぬわけにはいきません。

病人には恋人がいるかもしれませんよね。恋人を一人残してどうして逝けるでしょうか。

病人は夢を追う若者あるいは未来ある子供かもしれません。

まだ死にたくない。少しでも長く生きていたい。

「いっその事、飲んでから二、三日目に死ぬ毒薬を下さい」

これを聞いた医者の気持ちを想像すると、僕はなんだかやりきれない気持ちになります。

実際、余命宣告をしなければならないとき、現実のお医者さんというのは、どんな気分なのでしょうか。仕事だから、淡々と行うのが、普通なんですかねえ……、それこそ、ちょっとしたユーモアとして笑ってしまえるくらいの精神でないと、続けられない職種なのかもしれませんが(不謹慎な発言になっていたらすみません)。

客観的に事象だけを見れば、余命宣告をされた病人が、混乱のあまり的外れな返事をしてしまっただけの簡単なお話ですが、想像力を働かせることで、多様な読み方ができる、人間心理の本質をついたシャープな小説だと思いました。

「ユーモア」と「シリアス」の境界は紙一重なのかもしれません。さらっと読めば笑い話ですが、読後改めて考えてみると、なんだかはっとさせられるようなギミックがある物語――夢野久作さんの短編小説はこうしたお話が比較的多いように思います。

前述のとおり、このブログで『懐中時計』と『森の神』が読めるので、興味を持たれた方は、ぜひ読んでほしいです(今後も増やしていく予定)。

小説読書感想『懐中時計 夢野久作』1分で読…てかこのブログで読める!
小説読書感想『森の神 夢野久作』ブログで全文が読める! 森の神ツンデレ説?

「医者と病人」つながりということで、医者と病人の純愛を描いたこちらの小説もおすすめです。

小説読書感想『外科室 泉鏡花』哀純愛…こんな一目惚れしたことある?

「医者」といえば、漫画や小説の題材にもよく取り上げられるテーマですよね。というわけで、こんな雑学も書いています。

小説・漫画の創作に役立つ(?)雑学『江戸時代の医師はみんなブラック・ジャックだった?』

(ここから医療小説からの医療漫画雑談)

上の雑学ブログ記事のタイトルにも使わせていただきましたが、「医者漫画」といえば手塚治虫さんの『ブラック・ジャック』ですよね。最高の漫画といっても決して過言ではないでしょう。『ブラック・ジャック』連載当時、手塚治虫さんは『三つ目がとおる』、『火の鳥』、『ブッダ』を同時連載していたといいますから、本当に漫画の神様、ですよね。

 

近年の「医療漫画」としては、産婦人科を舞台にした鈴ノ木ユウさんの『コウノドリ』も人気ですかね。一般的にあまりスポットの当たらなかった産婦人科について知ることができて勉強にもなりますよね。2015年には綾野剛さん主演でドラマ化しています。

 

他にも、ドラマ化している「医療漫画」は結構ありますよね。

恵三朗さんの『フラジャイル 病理医岸京一郎の所見』は、タイトルのとおり病理医のお話。リアルな医療現場を感じることができる作品。2016年にTOKIOの長瀬智也さん主演でドラマ化。

 

乃木坂太郎さんの『医龍-Team Medical Dragon-』は、絵がとても上手なので、難しい話でもすらすら頭に入ってきます。
テレビドラマは2006年から第4期まで放送されています。ドラマの方が印象深い方もいらっしゃるかも。

 

村上もとかさんの『JIN-仁-』は、医者×タイムスリップといったSF要素もある医療漫画としては新鮮さを感じさせる設定で、2009年から第二期まで放送された大沢たかおさん主演のテレビドラマは大ヒットしました。

 

佐藤秀峰さんの『ブラックジャックによろしく』は、山崎豊子の小説『白い巨塔』を彷彿とさせる医療システムについて考えさせられる医療漫画です。2003年の妻夫木聡さん主演のテレビドラマも話題となりました。

 

……医療漫画雑談というか、ただの医療漫画のおすすめになってしまいましたが。医療漫画って実写ドラマ化が結構成功しているイメージがありますね。一般に受け入れられやすい題材なのかもしれません。創作の参考になりそうですが、すごく勉強が必要そうなテーマですよねえ、医療って。

…………。

というわけで(何が?)、以上、『医者と病人 夢野久作』の小説読書感想でした。

二次元のイケメン好き女子集合! ショタ美少年な夢野久作さんが登場する『文豪ストレイドッグス』

・漫画版

・小説版

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

それでは今日はこの辺で。

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