父/横光利一=ギクシャク家族…何か深い事情が?家族ってこんなもの?

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

父-横光利一-イメージ

今回は『父/横光利一』です。

文字数3000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約13分。

父の笑顔に底意を感じ、母の言動にイライラする、
青年期の子。
ギクシャク家族には何か事情が?
それとも家族ってこんなもの?
解釈にちょっと迷いました。
家族の機微の描写が秀逸な小説です。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

父が祇園に踊りを見に行こうと言い出す。子は父の笑顔にある底意を感じる。母は乗り気でない様子。子は「行かない」と言って二階へ上がる。しばらくするとよそ行きの着物を着た母が二階へ上がってくる。「行くの?」と聞く子に母は答えない。子は腹を立てて、行くものかと思う。「用意しなさい」と母が言う。結局、家族は踊見に出かけることになった。

歌舞練場で、父がたばこをくわえると、子はマッチで火をつけるが、父に媚びている自分の気持ちを両親に見抜かれているような気がして、父の煙草入れから一本抜きとって吸う。子は可愛い踊り子を探そうとする。自分の目を後ろへ向けさせようと努める母の気持ちを意識する。母が最後から二番目の踊り子を可愛いと言って指さすが、まだ小さな子供だ。子は美しい踊り子を探したかったが、母の看視を思うとできなくなる。父ははじめからずっと舞台だけを見ており、子は父をありがたく思った。

帰り道、子は恋人を抱く自分の姿を思い浮かべ、いま母の目の前で、通りすがりの少女にキスしてやろうかなどと考える。ふいに母は子が万年筆を欲しがっていると夫に伝える。子は口では「いらない」と言いつつも、じつは欲しかった。ある文房具屋の前までくると、父は黙ってその中へ入っていく。子は万年筆を手にとっている父を見ると、急に父が恐ろしくなってきた。

狐人的読書感想

家族の日常(休日?)の一コマを描いている小説のようですね。家族の物語といえば感動ストーリーを求めがちになってしまうのですが、この作品はとくにそういった展開を見せません。淡々と話が進み、淡々と話が終わります。

父と母と子。三人家族。

この家族、感動どころか、どこかギクシャクしているように感じられる家族なんですよね……何か事情があるのでしょうか? 本文でも使われていた『子は父の笑顔からある底意を感じた』という描写が意味深なんですよね。

底意って、下心的な意味合いですよね、父には何かやましいところがあって、母と子の機嫌を取りたいがために、「そうだ! 祇園へ踊りを見に行こう!」なんていいだしたのでしょうか?

(……まさか浮気か?)

などと勘ぐってしまいたくなりますが、それにしては母も子もとくに怒っているわけでもなくて、なんとなくわずらわしいなあ、くらいに感じているらしき雰囲気です。

休日の外出とか、父だけが妙に張り切っていて、母と子はそんなでもないんだけどなー、みたいな状況は、ひとつの家族の在り方として容易に想像できるように思えます。

そう思えば、普通の家族なのかな、って気にもなります。

子は、母も父もわずらわしく感じているふしがあって、踊り子や通りすがりの女の子に対する関心や、ときに覗かせる自意識がいかにも思春期・青年期といった感じですね。

十九歳なので、年齢的には青年期ということになるのでしょうが、こういう時期は誰にでもあるはずで(近年ではなかったという話もちらほら聞きますが)、多くの人が共感できる心情だと思います。

子の視点で話は進み、まさに青年期の子を中心とした家族、が描かれている作品だと僕は結論付けたのですが、ひょっとすると何か複雑な事情を抱えた家族なのか、という思いもじつは捨てきれずにいます(やっぱり父の浮気なのか?)。

ともあれ、リアルな家族の機微が感じられて、これを文章で書き表すのは非常に難しいことのように思えて、やはりさすがは小説の神様だと、唸らされる思いがしたのですが、他の人が読んでどう感じるのか、ちょっと興味を覚えるところです。

秀逸な小説だと思いました。

読書感想まとめ

青年期の子がいる、ごく一般的な普通の家族が描かれているように感じましたが、じつはそうではないのかもしれません。

狐人的読書メモ

思春期・青年期の子供は父や母を軽蔑的に見ることがあっても、やはり畏怖のような感情も持ち合わせていて、そのあたりがラストの子が父を思う感情に表れていたのだろうか? そうだとしたら、そのあたりの心の機微の描き方は本当にすごい(だけどもっと深い意味があるのかもしれない)。

・『父/横光利一』の概要

1921年(大正10年)1月、『時事新報』にて初出。発表時のタイトルは『踊見』。青年期の子がいる家族の機微の描き方がとても秀逸に感じられた。しかし、読み切れていない部分があるような気もする。

以上、『父/横光利一』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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