もしも父親が4人もいたら――
はたして、
煩わしいと思うでしょうか。
それとも、
喜ばしいと思うでしょうか。
あるいは……
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
(「『狐人』の由来」と「初めまして」のご挨拶はこちら⇒狐人日記 その1 「皆もすなるブログといふものを…」&「『狐人』の由来」)
今回のおすすめ小説読書感想は、
伊坂幸太郎さんの『オー!ファーザー』
について書きたいと思うのです。
伊坂幸太郎さんのおすすめ小説読書感想は、
以前『重力ピエロ』について書きましたが、
(⇒小説読書感想『重力ピエロ』シビれる冒頭!春が二階から落ちてきた。)
今回の『オー!ファーザー』とこの『重力ピエロ』は、
伊坂幸太郎さん作品のなかで、
狐人的に1,2位を争う小説!
みなさんは、
どの小説が一番のお気に入りでしょうか?
下のブログ記事へのコメントや、
Twitterのツイートなどで、
よかったらぜひ教えてください!
伊坂幸太郎さんは結婚されていて、
息子さんが1人いらっしゃるそう。
魅力的なキャラクターの登場する小説を読んでいて、
よく思うのは著者である作家さんのキャラクターが、
その小説のキャラクターに反映されているのかなぁ、
ということ。
『オー!ファーザー』の、
お父さんたちのキャラクターに、
上記が当てはまるのだとしたら、
伊坂幸太郎さんはすごくいいお父さんなのでは、
とかつい想像させられてしまうのです。
あるいは高校2年生のとき伊坂幸太郎さんは、
主人公・息子の由紀夫みたいだったのかなぁ、
とか。
(もちろんモチーフとなる人物がいる場合もあるので、
一概には言えないわけではあるのですが)
狐人的にはこれも、
読書する上でのひとつの楽しみ方、
になるのではないかと思うのです。
それではそろそろ簡単なあらすじを。
文武両道で女子にも人気の高校生・由紀夫。
彼の秘密は父親に!
由紀夫の父親は、
嘘に妙な説得力がありギャンブル好き!
モデルみたいに格好良く女性にモテる!
大学でも教えられるほどに博学で多識!
格闘技好きで喧嘩が強くスポーツ万能!
なんでもできる息子には完璧な父親が、
と思いきや、
一子四父!?
由紀夫にはなんと4人の父親がいた!
白熱する知事選挙、
不登校のクラスメイト、
ドッグレースで盗まれた鞄、
巻き込まれた友達のトラブルに、
偶然居合わせた男女の心中遺体現場。
由紀夫が遭遇する、
事件! 事件!! また事件!!!
物語の中に散りばめられた、
数々の伏線がひとつになるとき、
予測不能の物語が完成する!
といった感じでしょうか。
主人公の由紀夫はバスケ部所属の、
なんでもできて4人の父親がいる、
ちょっと普通ではない高校2年生、
ですが、
正義感が強く、
思春期らしい素直じゃない一面もあり、
その在り方はいたって普通の高校生なのです。
上で述べたような、
個性豊かな父親は、
鷹と葵と悟と勲の、
4人。
それぞれがそれぞれに、
息子のことを大事に思っているのです。
そこに由紀夫のクラスメイトの多恵子や中学時代の友人・鱒二など、
ユニークな人物たちが登場して物語が織り成されていくわけですが、
伊坂幸太郎さんの小説はどれも魅力的なキャラクターが登場します。
『オー!ファーザー』の登場人物たちも実にユニークで、
由紀夫父子の交わす会話を中心に、
ユーモラスで楽しいやりとりが読者を飽きさせません。
(単行本:p.11,13,33,54,135など他多数!)
登場人物たちが魅力的な小説を読むたびに、
どうすればこのようなキャラクターづくりができるのか、
いつも疑問に思います。
やはり著者となる作家さんのパーソナリティーが、
影響を及ぼしているのでしょうか。
「魅力的なキャラクター」 = 「魅力的な小説」
というひとつの定義が成立するならば、
よい小説を書くために研くべきは人間力?
とか思わされてしまうのです。
(未熟者の小説ですが、
『狐人小説』もどうかよろしく!)
『オー!ファーザー』
の一番の見所といえば、
そのタイトルのとおり、
由紀夫の4人の父親でしょう。
『オー!ファーザー』では全編を通じて、
父が子をどれだけ大事に思っているのか、
何気ない日常の会話や行動から伝わってくるのです。
(単行本:p.71,101,108,156,208,222,268,291,324,343など他多数!)
父子の絆のようなものが、
ところどころから感じられ、
こういった父親がほしいとか、
こういった父子関係が築けたら、
思わず、思わずにはいられません。
4人の父親に1人の息子ということは、
本当に遺伝子がつながっているのは1人、
ということになるのですが、
あえてDNA鑑定をしようとはしません。
そこには、
もし俺が父親じゃなかったら……、
といった不安もあるのですが、
そんなことをしなくても俺の息子、
という想いもあるように感じ、
血のつながりだけじゃない父子の絆のようなものを感じました。
このことは、
『重力ピエロ』においても重要なテーマになっていましたが、
もしも血がつながっていない子供を授かることになったとき、
はたして自分が親だったなら……、
と考えさせられるテーマなのです。
じっくり考えてみましたが、
結局答えは出ませんでした。
もちろん事情や状況にもよるのでしょうが、
『オー!ファーザー』の由紀夫の父たちや、
『重力ピエロ』の泉水と春の父親のように、
分け隔てなく我が子を愛せる人間になれれば、
と願わずにはいられません。
小説仲間のみなさんはどう考えるのでしょうか?
ぜひ意見をお聞きしたところなのです。
『オー!ファーザー』では、
無条件に守られている子供の甘え、
政治やいじめといった社会問題など、
いろいろ考えさせられるテーマも取り上げています。
どれもやはり簡単に答えの出せる事柄ではなく、
だから読者も由紀夫と一緒に考えさせられます。
「学校の授業を妨害する、なんて、ジェットコースターと一緒だぜ……しょせんは守られた中での、遊びだ」
伊坂幸太郎(2010)『オー!ファーザー』新潮社,p26.
大人たちに守られた世界から突如はみ出してしまったとき、
自分の立つ土台を揺さぶられるような恐怖を感じたときに、
苦労や面倒から逃げてどうにかなる十代までのガキの甘さ、
を知って、
由紀夫とともに愕然としました。
「……さぞかし政治家たちは責任の重さと心労で大変な毎日を送っているのだろうな、と同情したこともあるが、それにしてはテレビに現れる彼らの顔色が良くて……」
伊坂幸太郎(2010)『オー!ファーザー』新潮社,p49.
あくまで由紀夫の一高校生としての意見なのですが、
同感させられてしまったのです。
「答えや正解が分からず、煩悶しながら生きていくのが人間だ」
伊坂幸太郎(2010)『オー!ファーザー』新潮社,p69.
答えを教えてもらえるなんて滅多にない、
「聞くは一時の恥聞かぬは一生の恥」とはいいますが、
聞いたからといって教えてもらえるとは限らないわけで、
学校で当たり前に教えてもらえるうちに、
それに気づくのは難しいと思ったのです。
「地味な人助けはよっぽどのことでないと、歴史に残らない」
伊坂幸太郎(2010)『オー!ファーザー』新潮社,p191.
だから戦争か法律かに政治家はこだわる。
父親たちの言葉にはいちいち頷かされますが、
とくに悟さんの言葉には学ばされることが多かったのです。
「『由紀夫が将来、苛められっ子になるのと、苛めっ子になるのと、どちらかを選ばなければならないとしたら、どちらにするか』」
伊坂幸太郎(2010)『オー!ファーザー』新潮社,p197.
この二択なら、
親ならば苛めっ子になれと、
願うしかない。
だからいじめはなくならない。
これもまた、
正しい答えのない問題だと思いました。
「由紀夫、おまえは、今まで十何年か生きてきて、友人でも教師でもいいから、この人は優れている、と思える人間に会ったか」
伊坂幸太郎(2010)『オー!ファーザー』新潮社,p200.
「う~む」
と唸るしかありませんでした。
伊坂幸太郎さんの小説は、
たくさんの伏線がとてもスマートに回収されるイメージがあります。
いつも読後にすごくすっきりした気分になるのです。
ひょっとして伊坂幸太郎さんは几帳面な性格?
とか思わされてしまいます。
4人も父親がいたら、
頼りになること4倍、
煩わしいことも4倍、
喜ばしいことも4倍、
そして、
寂しいことも4倍……
『オー!ファーザー』は、
すべての父に、
そしてすべての子に、
ぜひぜひ読んでほしい小説!
読んだら、
その内容について、
父子で語り合ってほしい、
狐人もおすすめの小説なのです!
なつやすみもいよいよ後半!
新潮文庫は557ページ。
(僕は単行本で読みました!)
若干厚みはありますが、
軽快な語り口はサクサク読める!
読書感想文の宿題にも最適の一冊!
宿題の読書感想文がまだな学生のみなさん!、
のみならず、
小説を書く小説仲間たち、
小説を読む小説仲間たちにも、
未読の方にはぜひぜひおすすめしたいのです!
一子四父の物語、
父子の絆が描かれて、
すべての父子におすすめ!
いかがでしょうか。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
それでは今日はこの辺で。
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