小説読書感想『レヴォリューションNo.3』友、生きる、反抗

毛沢東の肖像を掲げたって
世界は変えられないよ
      ――ザ・ビートルズ

ギョウザ大好き!
      ――ザ・ゾンビーズ

金城一紀(2008)『レヴォリューションNo.3』角川文庫,p5.

「ギョウザ大好き!」

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。
(「『狐人』の由来」と「初めまして」のご挨拶はこちら⇒狐人日記 その1 「皆もすなるブログといふものを…」&「『狐人』の由来」

今回の小説読書感想は、
金城一紀さんの
『レヴォリューションNo.3』
について書いてみたいと思うのです。

金城一紀さんといえば1998年に
『レヴォリューションNo.3』
で小説現代新人賞を受賞してデビュー!

2000年、
半自伝小説、
『GO』
で第123回直木賞受賞!

『レヴォリューションNo.3』は、
ザ・ゾンビーズ・シリーズ第1弾!

僕は今回、
『レヴォリューションNo.3』
ではじめて金城一紀さんの小説を読みました。

ザ・ゾンビーズ・シリーズは、

第2弾『フライ,ダディ,フライ』
第3弾『SPEED』
完結篇『レヴォリューションNo.0』

となるわけですが、
ぜひ全部読んでみたいと思いました。

もし読んだら、
また『読書感想』で書きたいと思います。

しかし、
とにかく今回は、
『レヴォリューションNo.3』
ということで、
まずはあらすじを簡単に。

この小説は3篇の物語から成っています。

一つ目は、
タイトルにもなっている、
「レヴォリューションNo.3」

「君たち、世界を変えてみたくはないか?」

「僕」の通うオチコボレ男子高の生物教師、
ドクター・モローが授業中に突然放った一言で、
「僕」たちは世界を変えるための行動を開始する。

その方法とは、
鉄壁のガードを誇る近所の女子高、
「聖和女学院」の学園祭に潜入し、
ナンパをすることだった。

1年目2年目と立て続けに失敗した、
「ザ・ゾンビーズ」

いよいよ最後の3年目、
「ザ・ゾンビーズ」の潜入作戦は、
はたして成功するのだろうか――

「ザ・ゾンビーズ」結成のきっかけが語られる第一篇!

二つ目は、
「ラン、ボーイズ、ラン」

最後の学園祭潜入作戦から三か月後。

「ザ・ゾンビーズ」は、
最後の襲撃に参加できず、
病でこの世を去った友達の墓参りをするために、
メンバー47人分の沖縄旅行資金を稼ぎ出す。

しかし、
その旅行資金を、
とある理由から、
《史上最弱のヒキを持つ男》
仲間の山下に託してしまい……

三つ目は、
「異教徒たちの踊り」

最後の学園祭潜入作戦より、
少し時間を遡って、
夏休み。

ストーカー被害にあっているという、
女子大生のボディーガードを依頼された「僕」は、
ガード中に命を狙われ、
それを契機に総力を挙げて犯人を捕まえることに。

僕がこの小説から受け取ったメッセージは、
3つあります。

ひとつは、
社会に自然と形成される差別への小さな反抗。

これについては、
中学卒業と同時にヤクザからスカウトされるほど、
けんかが強い在日朝鮮人の朴舜臣によって主に示されます。

就職差別や人種差別について、
等身大の高校生として、
抗おうとしている姿は、
だから未熟なようであって、
どこか説得力を有している。

そんなふうに感じました。

ひとつは、
友達や仲間といった存在の尊さ。

前述の朴舜臣もそうですが、
この小説に登場する高校生は、
普通の高校生とは言い難いのです。

日本人とフィリピン人のハーフ、
抜群の容姿であらゆる女を落とし、
広いコネクションをもって、
相談屋をやっているアギー。

《史上最弱のヒキを持つ男》山下。

父親が受刑中であり、
家計を助けるためにバイトに明け暮れる萱野。

一見普通に見える語り部の「僕」も、
その行動はとても普通とはいえません。

普通じゃない高校生たちのバカ騒ぎ。

こんな仲間たちの一員になれたら、
楽しいだろうなぁ、
と思わずにはいられません。

逆に言えば、
現実にはなかなかこんな変わった高校生はいないからこそ、
これだけ楽しい小説が書けるのだと思わされるのです。

しかし同時に、
友達や仲間を大切に思い、
考えたり、
行動したりする、
といった大事な根底は、
現実でも物語でも通じるところだと感じさせられます。

ひとつは、
生きるということ。

主に第一篇で亡くなってしまう友達、
それを「僕」がどのように感じるか、
ということを通じて、
生きるということを学んだように思います。

「俺、まだ死にたくねぇよ」

雨の中、
病院の屋上で高層ビル群を眺めながら、
「僕」とその友達と、
ふたりで立ちションをするシーンがあります。

「生きてる、って感じがするなぁ」

そして、
この小説のラストの一文。

「なにがあっても、踊り続けるんだ」

これらが、
生きるということについて、
強く印象に残った部分なのです。
(ほかにも印象的なフレーズや場面はあるのですが)

まっすぐに、
生に向き合う、
「僕」を通じて、
感じるものがありました。

以上のように、
差別・友情・生、
こういったメッセージを強く感じることのできる小説が、
『レヴォリューションNo.3』
だと狐人的には思うのです。

以下、
ほかに印象深く残っているところなのです。

p.17
アギーの魅力的なキャラクター
(小説を書く上で参考にしたい!)

p.43
「本当に眠くなる人間には、無傷のままの人間に戻る可能性がある」
というフレーズ

p.102
昔舜臣が喧嘩で人の命を奪おうとしたとき、
前日に父親に買ってもらったパソコンを思って、
それができなかったこと。

人の命を奪うには、
在日というだけではなく、
あと四つか五つぐらいのハンデがないと、
舜臣は人の命を奪えないと思った。
(命の重さをある視点から見据えている)

p.113
「『ドラゴンボール』の絵を見るといまだに吐き気がする」
という萱野の言葉。

製本所での長時間ライン作業の末に感じた言葉。

僕はそんなふうに思ったことも、
ましてやそんな感じ方があると考えたこともなく、
労働のつらさを知らないことを、
少し恥ずかしいように思いました。

p.186
僕がストーカーにやられた、
首輪のような痣を見て、
「ちくしょう、飼い馴らされてたまるもんか、絶対に噛みついてやる」

p.269
高校生でも正しいことと間違ったことの区別はつく、
だけど言葉が足りない、
言葉を探しているうちに、
もっともらしい言葉を喋るやつらに丸め込まれてしまう。
(多くの十代が感じていることのように思うのです)

なつやすみも後半に突入!

角川文庫は281ページ!

ユニークでポップな語り口はとても読みやすい!

大切なテーマも見えやすく、
読書感想文も書きやすい一冊、
と思うのです。

宿題の読書感想文がまだな学生のみなさん、
小説を書く小説仲間たち、
小説を読む小説仲間たちも未読の方はぜひ、

『レヴォリューションNo.3』

ご一読ください!

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

それでは今日はこの辺で。

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