知恵者エルゼ/グリム童話=エルゼの賢さとは?(サイコ野郎ハンス再び)

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

知恵者エルゼ-グリム童話-イメージ

今回は『知恵者エルゼ/グリム童話』です。

文字数3000字ほどのグリム童話。
狐人的読書時間は約8分。

過ぎたるは及ばざるが如し? 先見の明、想像力、共感力……賢いエルゼの賢さとは? 当時の風習であった近親婚が生む遺伝的弊害(知的障害)が描かれている? サイコ野郎ハンス再び。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

彼女は両親から「賢いエルゼ」と呼ばれて育つ。エルゼが年頃になると、ハンスと名乗る男が遠くからやってきて、「彼女が本当に賢いなら自分の妻にしたい」と申し込み、両親は娘の賢さを保証する。

その日の夕食後、母は地下室からビールをとってくるよう、エルゼに言いつける。地下室へ下りたエルゼは、頭上につるはしが置き忘れられているのを見る。

「将来、私とハンスの子供が生まれて、大きくなって、地下室へ下りたとき、このつるはしが頭に落ちてくるにちがいない」

エルゼが地下室で一人泣いていると、母に命じられたメイドが様子を見にきて、エルゼから一部始終を聞く。「なんて賢いエルゼでしょう」。メイドは共感して一緒に泣き始める。

その後、執事、母、父と地下室へ様子を見に行く。エルゼから一部始終を聞く。なんて賢いエルゼでしょう。……。

誰も戻らないので、いよいよハンスが地下室へ下りる。エルゼから話を聞くと、彼女の賢さ、先見の明に感心する。二人は結婚する。

結婚してしばらく、ハンスはパンを焼くための麦を刈っておくよう、エルゼに言いつけてから働きに出る。エルゼはおかゆを作って畑に出かけると、それを食べてひと眠りすることに――

夕方になっても帰ってこないエルゼを心配して、ハンスが様子を見に行くと、畑の麦は刈られておらず、エルゼは眠りこけている。ハンスは家に戻って、鈴のついた鳥網を持ってくると、エルゼにかぶせる。

夜になってようやく目を覚ましたエルゼは、歩くたびに鈴がなるので、自分が本当に自分なのか、わからなくなってしまう(アイデンティティーの喪失)。家の戸には鍵がかかっていて、エルゼは中のハンスに声をかける。

「ハンス、エルゼは中にいる?」
「ああ、中にいるよ」
「どうしよう、私はエルゼじゃないんだわ!」

エルゼは他の人にも聞いてみようと家々を回るが、鈴の音を夜警だと勘違いした人々は戸を開けようとしない。

エルゼはそのまま村を出ていき、その後、誰もエルゼを見た者はなかった。

狐人的読書感想

前に『(KHM32)ものわかりのいいハンス』で、ハンスをサイコ野郎として紹介してしまったのですが……また出たよ、ハンス!

エルゼにも悪い所はあるのですが、何も家から閉め出したりしなくても……って、思ってしまいますね(男なんてこんなもの?)。

しかしながら、このわけのわからない物語が、好きになってきている自分がいて……今後のハンスシリーズ(?)にも期待してしまうところです。

今回のお話は教訓が見出しづらく感じました。あえて言うなら「過ぎたるは及ばざるが如し」ということになるんですかね、エルゼもハンスも。

「賢いエルゼ」の賢さとは「先見の明」、想像力の飛躍にあるように、僕は思いました。

将来を見通す力は言うまでもなく重要ですし、今回の場合、それをもたらした想像力も、善く生きるためには欠かせない素養だと考えます。

人は他人の痛みを自分の痛みに置き換えて想像することができるから、ひとにやさしくできるのではなかろうか、などといつも感じているのですが、この力は共感力とも呼べる力で、メイド、執事、母、父――他の登場人物たちの共感力の高さも印象に残ります。

「頭上に置き忘れられたつるはしが、将来子供の頭の上に落ちてきて、その命を奪うかもしれない」

――なんて話を聞かされて、共感して泣けるって、どんだけ共感力高いんだよ、って気もしますが、共感力が高い人を「エンパス」とか呼んだりします。

エンパスは、相手の立場になって考えられるからこそ、コミュニケーションがうまいというメリットもあれば、ひとに影響されやすく気分が移ろいやすい、みたいなデメリットもあるらしいです。

先見の明、想像力、共感力――エルゼの賢さをこのように語ってきましたが、だけど、単純に読んでみると、正直、エルゼの賢さというものは実感しにくいように思います。

「知恵者エルゼ」というよりは「愚か者エルゼ」といった感じですね。

一つ興味深いと思った読み方に、本作もまた、当時のヨーロッパの風習を表している物語なのだ、というものがありました。

メイドや執事がいることから、エルゼの家は貴族階級、そこそこ身分の高い家柄だと想像できます。

当時のヨーロッパでは、血を貴ぶ風習のため、近親婚が多くみられたといいます。近親婚が遺伝的弊害を生むことはよく知られた話で、エルゼもその影響を受けた知的障害者的な存在だ、ともたしかに読み取れるんですよね。

突き詰めてみると何かしら意味を見出すことができて――やっぱりグリム童話って奥深くておもしろいな、と感じた、今回の狐人的読書感想でした。

読書感想まとめ

エルゼの賢さとは?(サイコ野郎ハンス再び)

狐人的読書メモ

・メイト、執事、母、父の共感力、というよりは、エルゼの感情の伝染力、という言い方もできただろうか、エルゼのカリスマ性を感じられて、そういった捉え方で言及してもおもしろかったかもしれない。

・結局、つるはしを移動させれば済む話なのでは……と思ったのは僕だけではないはず。

・エルゼが自分を見失うシーンはアイデンティティーの喪失を表している。創作のテーマとしておもしろい題材だと感じる。

・『知恵者エルゼ/グリム童話』の概要

KHM 34。(勝手に)ハンスシリーズ第2弾。意味の解釈に困った作品。当時の風習を表している童話だと思えばたしかにしっくりくる。今後もハンスの異常性には期待してしまう。

以上、『知恵者エルゼ/グリム童話』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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