工場の窓より/葉山嘉樹=所得格差と学力格差。ケチな狐人のグチ。

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

工場の窓より-葉山嘉樹-イメージ

今回は『工場の窓より/葉山嘉樹』です。

葉山嘉樹 さんの『工場の窓より』は文字数5700字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約15分。

我らは貧しい。
だから我らの子も貧しくなるのか。

所得格差が学力格差を生む。
現代だからこそ共感できるプロレタリア文学。

利より愛で団結!
目覚めよ! 兄弟よ!

ケチな狐人のグチ?

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

工場の窓より-葉山嘉樹-狐人的あらすじ-イメージ

労働はすばらしい。だけど我らは貧しい。労災の補償はひどい。

貧しさゆえ我が子に満足な教育を与えてやれない。そのために我が子もまた貧しくなる。平等に幸福であること、誰でも知っているけれど、実現するのはとても難しい。

資本家は、労働者から搾り取ること、利用することしか考えない。我らは一致団結しなければならない。

我らは「利」を追求してはいけない。「愛」をもって団結しなければならない。資本家よ、労働者も人間である。

この地上に神の国がやってくるのはいつのことか。この地上の全人類が目覚めることで神の国はやってくるのである。

狐人的読書感想

工場の窓より-葉山嘉樹-狐人的読書感想-イメージ

さて、いかがでしたでしょうか。

前回読んだ葉山嘉樹 さん作品は、プロレタリア色の薄い随筆でしたが、今回はまさにプロレタリアといった感じですね。

(前回の葉山嘉樹 さん作品の読書感想はこちら)

アジテーション的というか、強めの調子で書かれているので、ちょっと引いてしまうというか、戸惑ってしまうような部分もありましたが、これは現代人だから感じるギャップなのかもしれません。

(当時の労働者を知るには、こちらも)

当時の劣悪な労働環境を知らない僕からすると、どこか愚痴っぽく捉えてしまうところもあるのですが、逆にいえば、このくらい強い口調で非難したくなるくらいの社会状況だったのだと思えば、やはり考えさせられるところがあります。

そして、いまのようにインターネットやSNSなどが普及しておらず、多くの人が、それを上手く言葉にして発信できなかった時代を思えば、やはり葉山嘉樹 さんのような作家が果たした役割は、大きなものだったのかなあ……、と文学の持つ社会的役割の一側面を、改めて見つめ直す思いがしました。

とはいえ、ブラック企業やブラックバイト、ブラック保育園など、さまざまな労働問題は、現代においてもなお厳然として存在しているわけで、いくら昔よりは改善されているとはいえ、これはいつの時代にもなくなることのない内在的な問題である、という気がしてしまいます。

とくに、「貧しさゆえ我が子に満足な教育を与えてやれない。そのために我が子もまた貧しくなる」といった点は、所得格差が学力格差につながっているともいわれる現代だからこそ、実感しやすい要旨のように思いました。

所得の低い家庭の子供ほど学力も低い、というのは、狐人的には一概に語れないところがあるのでは……、とか思いつつも、ワーキングプア×シングルマザーなど、いくつかの要因が重なって、かなり深刻化しているケースも見受けられるようで、昨今になって叫ばれている社会問題の一つです。

お金がないから我が子を塾に通わせてあげられない、ということで、「無料塾」なるものが、近年全国的に増えていることを、恥ずかしながら今回初めて知ったわけなのですが。これは、一人親で本当に苦しい、といった家庭にはとてもありがたく、とてもいい試みのようにも思えるのですが、地方自治体の施策として、税金を投入して次から次へと増やしている現状には、ちょっと違和感を覚えます。

こういったものは、寄付やボランティアで賄われてこそ、その効力を最大限に発揮できるもののように思うのですが、やはり「利」がなければなかなか難しく……、では国の施策として税金を投入してやるべきだ、という意見になるのも頷けるところではあるのですが、結局根本にある所得格差の対策にはなり得ないようにも思います。

しかしながら、東京オリンピックの費用問題、森友学園問題や豊洲移転問題などなど、最近のニュースを見ていて、「いったいどんだけのお金を無駄にしてくれてんだよ」と、思わず呟かずにはいられない情勢を鑑みれば、有益に使われているだけ全然いいのかなあ、とも思います。

そんなわけで、「平等に幸福であること、誰でも知っているけれど、実現するのはとても難しい」という要旨は、たしかにその通りで、だけど神の国なんて、きっといつになっても訪れやしないんだろうなあと、僕のようなひねくれものは、ひねくれた見方をしてしまうわけなのです。

そんな僕でも、こういった作品を読むたび、平等や隣人愛について思わないわけにはいきません。

(平等や隣人愛に思いを馳せた読書感想はこちら)

人間の欲望というものは、どこまでも果てのないもので、儲けるというのは当然ながら難しいことなのですが、適度に儲けるというのはさらに難しいことなのだと、今回の読書で改めて思わされました。

『工場の窓より』は、悲惨な労働者の叫びが綴られている小説です。

ただしそればかりではありません。

人間は、ひとよりもいい暮らしをしたいし、ひとよりも楽をしたい――と、どうしても考えてしまいますが、それが誰かの不幸を望むことであってはいけない、ということも、本質的に描かれている作品だと思います。

こういうことを思わされる作品に出合うたび、日頃の自身の態度を反省させられるわけなのですが、日々生きていくなかで、この思いを継続的に持ち続けることが、僕にはなかなかできません。そんなわけで、具体的に行動することとなると……(いわずもがな)。

ただのケチなのかもしれませんが、誰かに何かを分けてあげることにも、躊躇するときがあります(てかただのケチです)。物質的に満たされているから、誰かにものを分け与えることができるし、精神的に満たされているから、誰かにやさしくできたりするのであって、貧しくなれば物を惜しみ、不幸になればひとにやさしくなんてできるわけない……、と、どうしてもこの思いが拭えません。

そんな自分がとても嫌で、どうせ変われないと諦めている自分がもっと嫌で、それでも変われない自分がいます。結局は本気で変わろうとしないから変われないんだろ、といわれてしまえばそうなのですが……。

う~む。何がいいたいのか、わからなくなってきました。

(尻切れトンボ)

読書感想まとめ

工場の窓より-葉山嘉樹-読書感想まとめ-イメージプロレタリアの愚痴ではなくて、僕の愚痴みたいになってしまった……。

狐人的読書メモ

工場の窓より-葉山嘉樹-狐人的読書メモ-イメージ「兄弟よ! もう眼を覚さなければならない」とはいわれても、なかなか目覚められません。このまま一生目覚められないのだろうか……。

・『工場の窓より/葉山嘉樹』の概要

1921年(大正10年)初出。プロレタリア文学。アジテーション? 自分を見つめ直すためにも定期的に読み直したい小説だと思った。

(自分を見つめ直す読書感想はこちら)

・プロレタリア文学

低賃金悪条件で働く労働者を題材とした文学。

・アジテーション

強い調子の文章あるいは演説などにより人々の気持ちを高揚させてある行動を起こすように仕向けること。

以上、『工場の窓より/葉山嘉樹』の読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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