キャラメルと飴玉/夢野久作=お菓子大戦争勃発! 愚者どもに裁きの鉄槌を下すのは神か、あるいは――

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狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

森永製菓 ミルクキャラメル 12粒×10箱

今回は『キャラメルと飴玉/夢野久作』です。

夢野久作 さんの『キャラメルと飴玉』は文字数1000字ほど。今月はホワイトデー(3月14日)もあるということで、狐人的には結構タイムリーな短編小説をチョイスできたでしょうか(結果論ですが……)。反省したり勉強したり楽しんだりした結果、お菓子を食べたくなりました。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

お菓子大戦争勃発!
東西に分かれ、泥沼化する戦況……
愚者どもに裁きの鉄槌を下すのは神か、あるいは――

(短く、パブリックドメイン、どうぞ)

『キャラメルと飴玉/夢野久作』

キャラメルと飴玉あめだまとがお菓子箱のうちで喧嘩をはじめました。

「ヤイ、飴玉の間抜け野郎。貴様はまん丸くて甘ったるいばかりで何にもならないじゃないか。俺なんぞ見ろ。ちゃんと着物を着て四角いおうちにはいっているんだぞ。貴様なんぞは着物なんか欲しくたって持たないだろう。ざまをみろヤーイ」

飴玉は真赤になっておこり出しました。

「失敬なことを言うな。うちにいる時は裸だけど、外に出る時にゃちゃんと三角の紙の着物を着て行くんだ。第一貴様の名前が生意気だ。キャラメルなんて高慢チキな面をしやがって、日本にいるのならもっと日本らしい名前をつけろ」

「こん畜生、横着な事を言う。キャラメルが悪けりゃあカステイラは西班牙スペインの言葉だぞ。シュークリームでもワッフルでも良いが、菓子にはみんな西洋の名前が付いているんだ。あめだのせんべいなぞ言うのはみんな安っぽい美味うまくないお菓子ばかりだ」

「嘘をけ。羊羹なんて言うのは貴様よりよっぽど上等だぞ。コンペイトウは露西亜ロシア語の名前だけれど、俺よりずっと不味まずいぞ。ウエファースなんていう奴はいくら喰ったって喰ったような気がしないじゃないか」

「馬鹿を言え。あれでもなかなか身体のためになるんだ。おれなんぞは牛乳が入っているから貴様よりずっと上等だ」

「こん畜生、おれだって肉桂ニッキが入っているんだ。肉桂はお薬になるんだぞ。貴様の中に牛乳が何合入ってりゃあそんなに威張るんだ」

「何を小癪な」

「何を生意気な」

とうとう取っ組み合って、大喧嘩になりました。最前から見物していたキャラメルの仲間のミンツ、ボンボン、チョコレート、ドロップス、飴玉の仲間の元禄、西郷玉、花林糖、有平糖なぞはソレというので馳け寄って、双方入り乱れてゴチャゴチャに押し合い掴み合っているうちに、みんなお互いにくっつき合って動けなくなってしまいました。

そこへ坊ちゃんが来てお菓子箱のふたを取ってみるとビックリして、

「お母さん。大変大変。お菓子が喧嘩をしている」

 と叫びました。お母さんもやって来てこの有様を見ると、

「それ御覧なさい。一緒に仕舞って置いてはいけないと言ったではありませんか。私がこわして上げるから、お姉さんやお兄さんと一緒におやつに食べておしまいなさい」

と言って金槌を持って来て、パラパラと打ちこわしておしまいになりました。

狐人的読書感想

さて、いかがでしたでしょうか。

喧嘩するお菓子たちに裁きの鉄槌を下したのは神――ではなくて、母でしたね(笑)。

そろそろ夢野久作(香倶土三鳥) さんの「九州日報シリーズ」の傾向が見えてきて、いかにもなオチだと思えるようになってきた今日この頃なのですが、当ブログを読んでくれている皆さんはいかがですか?

(こちらの「九州日報シリーズ」もよろしければ)

あいきゃんとすぴーくいんぐりっしゅ!を反省

キャラメルと飴玉-夢野久作-狐人的読書感想-イメージ-1

これまでに読んできた夢野久作 さんの「九州日報シリーズ」は、いまのところほぼ擬人化小説ということで、僕の中で擬人化小説の大家としての地位を、着々と築いていってくれているわけなのですが――しかし、おもちゃ・虫・きのこなどなど、発想力が凄いし、おもしろいですよねえ。

最近、天体を擬人化している小説を読んだので、ひょっとしてこの世にあるもので、擬人化されていないものはないんじゃあ……、と思わされてしまうのですが、さすがにそんなことはない、ですよね?

キャラメルと飴玉のキャラも立っています。

包装紙を着物、入れ物の箱をお家と言って自慢するキャラメルがかわいく映ります(「ヤーイ」って……、ホントに言う奴いるのでしょうか?)。

対する飴玉も負けてはいません。「日本にいるなら日本らしい名前をつけろ」となかなか賢しい指摘をしますが、僕はこの点、ちょっとまじめに捉えてしまい、痛いところを突かれた気分でした。

というのも、外国から日本に来られている方に、英語で質問されて「あいきゃんとすぴーくいんぐりっしゅ」と答えるたびに、(日本にいるなら日本語話してよ)と思わず心の中で呟いてしまうからです。

英語のほうがグローバルスタンダードである以上、向こうからすれば「君がもっとまじめに英語を勉強したら?」となるわけで、反論に窮するところがあり、反省させられてしまいました。さらに、戦争の火種になることを思えば(?)、よりいっそうの反省が必要、ですね。

コンペイトウはコンフェイト?カンフェータ?

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その後もキャラメルと飴玉の舌戦は留まるところを知らず――カステラ、シュークリーム、ワッフル、コンペイトウ、ウエハースなど、次々と槍玉に挙げていきますが、この辺り、他者を争いの舞台に巻き込んでいく主導者の才覚を感じさせると思うのは、僕だけ? 実際の戦争も、ほんの些細ないざこざが、このようにして拡大していった結果なのか、と想像してみると、考えさせられるところがあります。

ところで、お気づきの方もいらっしゃるかもしれませんが、飴玉は「コンペイトウはロシア語の名前」だと言っていますが、正確には「ポルトガル語のconfeito(コンフェイト)」が、その語源だそうです。ただし砂糖菓子のことを「ロシア語でконфета(カンフェータ)」というそうで、さらにロシアの作曲家・チャイコフスキー さんの作曲したバレエ音楽『くるみ割り人形』の中に『金平糖の精の踊り』というものもあり、これらからの誤認だったのかもしれません(ちなみに『金平糖の精の踊り』の「金平糖」の語源は糖衣菓子を意味する「フランス語のdragée(ドラジェ)」、「ロシア語のдраже(ドラージ)」というのがよりややこしいところ)。

キャラメルと飴玉どっちが身体に良いの?論争

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そしてキャラメルと飴玉の舌戦は「どっちが身体に良いのか」といった領域に突入します。

キャラメルの主張は「俺には牛乳が入っている!」ということですが――たしかに昔から「牛乳は骨を強くする」といわれているように、多量のカルシウムを摂取できるので、一見体に良さそうですが、カルシウムは緑黄色野菜や大豆製品などからバランス良く摂らなければ意味がないとも聞きますし、最近では「飲み過ぎるとがんになる!?」ともいわれていて、なかなか一辺倒に語れないところがあります。

「育ち切った大人になっても乳を飲むのは人間だけだ」という牛乳反対派の方々の意見を聞くと、「たしかに……」と思わず頷かされてしまいそうになりますが……。

対する飴玉の主張は「俺には肉桂が入っている!」とのことですが、僕などは「お薬にもなるニッキって何?」といった感じなのですが――調べてみると、「シナモンとニッキの違い」といった感じで、セットで出てくるのですが、香辛料のあのシナモンですよね?

ちょっと興味が出てきたので、引き続き見てみると、両者の違いは以下のとおりです。

ニッキ

  • 原料が日本産の常緑樹である日桂の根っこ
  • ちょっと辛味がある
  • シナモンよりも高級

シナモン

  • 原料がスリランカ、セイロン産の日桂の皮
  • 辛味がない
  • ニッキよりも安い

――といった感じ。

さすが薬というだけあって、血行促進、殺菌・解熱作用、中性脂肪やコレステロールの抑制効果、血圧・血糖値の低下、抜け毛予防、胃腸強化などの薬効とも呼べるような効能があるみたいですね。

ただし、こちらも虫よけや防腐剤となる成分が含まれているので、摂り過ぎには要注意とのこと。

この論争は、まったくの私見ですが、お菓子として摂るなら、飴玉のニッキに優位性があるように感じました。

喧嘩両成敗といじめの問題とお菓子をたべたい

キャラメルと飴玉-夢野久作-狐人的読書感想-イメージ-2

――とは言ってみたものの、彼らの争いは止まらず……、ついに東西陣営に分かれて、武力を用いた総力戦に突入し、泥沼の様相を呈することになるわけですが、そこで神ならぬお母さんの裁きの鉄槌が下ります(お、おかあさ~ん……、といった感じですが)。

ベタベタに引っついて、バラバラにされたカオスなお菓子を食べることになる子供たちの気持ちを思うと……(い、意外とおいしいかもよ?)。

この容赦ないオチは、夢野久作 さんの「九州日報シリーズ」ファンの方ならば、「お決まりの」といった感じのものですが、この作品に含まれる寓意は、このオチから明らかなように思います。

すなわち、

喧嘩両成敗

ということではないでしょうか。

しかしながら、この「喧嘩両成敗」という言葉、「喧嘩をするのは両方に原因があるのだから両方悪い」みたいに、なんとなく良いイメージで捉えているのは、僕だけでしょうか?

じつはこれ、戦国時代の日本で実際に法制化されたものなのですが、江戸時代には廃止されています。その理由として、これは上で言ったように、「事情の一切を問わず、喧嘩をした者は、双方厳しく処罰する」といった法だったのですが、結果いっそう社会を混乱させる場面が生じてしまったからです。

一見道理のとおった法のようにも見えますが、これを翻すならば、自分の身を顧みなければ、道連れに相手を陥れることができるわけで、このように牽強付会ぎみに捉えて、悪用する者が後を絶たず、争いを減らそうとして逆に争いを増やす結果になってしまいました。

たしかに「喧嘩両成敗」とはいいますが、先に喧嘩をふっかけた方が明らかに悪いわけで(この場合はキャラメルが悪い)、両者平等に裁くというのは、よくよく考えてみれば(お菓子だけに)おかしな話のように思われます。

どこか「いじめの問題」を思わせる話のようにも感じました。「いじめる方もいじめられる方も両方に原因があって両方悪い」みたいに言われると、そんなふうな側面もないではないのかなあ……、とついつい心のどこかで思ってしまいそうになりますが、そうじゃないだろ! みたいな。

……あれ? ひょっとして喧嘩両成敗は寓意じゃない?

ということは、この物語に含まれる寓意としては、母の裁きの鉄槌は、まさしく神の裁きの鉄槌で、人間の(お菓子の)身ではどうにもならない理不尽が、世の中にはあるのだという、教えなのでしょうか?

あるいは自分の正義を信奉し、他者を裁くことの愚かさを、高らかに謳った作品なのでしょうか?

……うーん、意外と考えさせられる小説です。

――とはいえ、お母さんもまさかお菓子たちが魂を持っているとはつゆとも知らず……、ならば深い考えがあったわけもなく……、であればやはり、「はだかのお菓子を一緒にしまってはいけないよ」というのが、この物語の教訓なのでしょう(適当?)。

もっと純粋に物語を楽しもうよ!
――というのが、僕にとっての教訓となりそうですが……、皆さんはいかがでしたでしょうか?

そんなこんなで。

かわいくておもしろいお菓子たちの物語……、お菓子を食べたくなりました(適当)。

(ちなみに膵臓をたべたくなる小説の読書感想はこちら)

読書感想まとめ

ゴディバ(GODIVA) ラッピングトリュフアソートMMH 9粒

英語をまじめに勉強しないことを反省し、ロシア語、ポルトガル語、フランス語などを勉強し、さらに牛乳とニッキの効能について学び、喧嘩両成敗に思いを馳せた結果、純粋に物語を楽しむことの大切さを知り、お菓子を食べたくなった作品でした。

狐人的読書メモ

いまだ擬人化されていないものに、創作のヒントがあるように思った。

・『キャラメルと飴玉/夢野久作』の概要

九州日報シリーズ。1922年(大正11年)12月7日、『九州日報』初出。

以上、『キャラメルと飴玉/夢野久作』の読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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