狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『一燈/太宰治』です。
文字数3000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約8分。
芸術家は人々に希望を与える作品を作らなければならない。というのが、太宰治さんの基本姿勢だったのかもしれない。ひとりでも喜ばせることができたらいいなと思った。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
昭和八年十二月二十三日の夕暮れのこと。私は大学を卒業できる見込みがなく、父親代わりの長兄に怒られていた。が、やがて外が騒がしくなり、提燈行列と群衆のバンザイの声が聞こえる。皇太子殿下ご生誕のお祝いだった。
兄の私への説教はそれで終わりとなった。私たちは外へと繰り出す。兄はそっと眼鏡をはずしたので、私はふとおかしくなった。大正十四年に照宮さまがお生まれになったとき、兄が「おれは、泣かなかった」と強がっていたのを思い出したのだ。
あのとき、全国民が歓喜と感謝の声を上げたが、そのような声を聞くのは、これからはなかなかむずしいだろうと、私は八年前のことを思い出していた。
狐人的読書感想
最初の文章が印象的だったので、以下に残しておこうかと思いました。
『芸術家というものは、つくづく困った種族である。鳥籠一つを、必死にかかえて、うろうろしている。その鳥籠を取りあげられたら、彼は舌を噛んで死ぬだろう。なるべくなら、取りあげないで、ほしいのである。
誰だって、それは、考えている。何とかして、明るく生きたいと精一ぱいに努めている。昔から、芸術の一等品というものは、つねに世の人に希望を与え、怺えて生きて行く力を貸してくれるものに、きまっていた。私たちの、すべての努力は、その一等品を創る事にのみ向けられていた筈だ。至難の事業である。けれども、何とかして、そこに、到達したい。右往も左往も出来ない窮極の場所に坐って、私たちは、その事に努めていた筈である。それを続けて行くより他は無い。持物は、神から貰った鳥籠一つだけである。つねに、それだけである。』
太宰治さんの作家としての基本姿勢が垣間見られる文章だと思いました。
本作のメインの話は、皇太子殿下誕生の日の、太宰さんの思い出話といった感じです。生まれたことをたくさんの人に喜んでもらえるのって王様とかの特権だという気がします。
王様には王様の責務や不自由があったりして、それはそれで大変なのでしょうが、こういった部分はちょっとうらやましく思ったりもします。
このように多くの人に希望を与えられるような作品を、芸術家は作らなければならないということを言いたいのだと思われますが、たしかにそれはむずかしく感じられてしまいますね。
たくさんの人を喜ばせるのはむずかしいですが、誰かひとりでも喜ばせることができたらいいなと思った、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
たくさんの人を喜ばせるのはむずかしいけれど…
狐人的読書メモ
・『一燈/太宰治』の概要
1940年(昭和15年)11月、『文芸世紀』にて初出。
以上、『一燈/太宰治』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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