フリーダーとカーテルリースヒェン/グリム童話=サイコ童話?

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

フリーダーとカーテルリースヒェン-グリム童話-イメージ

今回は『フリーダーとカーテルリースヒェン/グリム童話』です。

文字数6000字ほどのグリム童話。
狐人的読書時間は約13分。

あなた! すごいこと思いついたの! 家のドアをいつも背中に背負って大事に持ち運ぶの! これでいつでも泥棒から家を守れるわ! やれやれ、なんて賢い奥さんだ…。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

昔、フリーダーとカーテルリースヒェンという若い夫婦がいた。ある日、夫は妻に焼いた食べ物と飲み物を用意するように言いつけて畑仕事に出かけた。妻はフライパンでソーセージを焼いていた。と、そのあいだに地下室にビールを注ぎに行こうと思った。地下室でビールを注いでいると、犬をつないでいなかったことを思い出した。台所に戻ると、犬はソーセージをくわえて逃げていった。妻はそのあとを追ったが、結局捕まえられなかった。その間に、地下室の床はビールだらけになっていた。樽の栓を閉め忘れたのだ。妻は物置に小麦粉を買ってあったのを思い出し、それを地下室の床にぶちまけた。その勢いでジョッキのビールがこぼれた。

昼に夫は帰ってきて、妻から事情を聞いた。夫は(これはダメ妻だ。僕が用心しなきゃいけないな)と密かに思った。夫は金貨をつぼに入れて牛小屋に隠した。そして妻に「あれはゲームの黄色いチップで牛小屋に隠したから近づいてはいけないよ」と諭した。妻は「絶対近づかないわ」と約束した。夫がいないときに行商人がやってきた。陶器やつぼを見せてもらったがお金がなかった。妻は「黄色いチップならあるわ」と言って牛小屋の隠し場所を行商人に教えた。行商人は「黄色いチップでいいよ」と言って牛小屋に隠された金貨を堀出して逃げた。

夫は帰ってきて一部始終を妻から聞いた。二人は泥棒から金貨を取り戻そうとあとを追った。夫は妻にバターとチーズを持ってくるよう言いつけた。妻は言われた通りにして、夫のあとをついていった。妻は上り坂で地面に車のわだちがあるのを見てかわいそうに思い、そこにバターを塗ってやった。そのときポケットからチーズが転げ落ちた。妻はチーズを取りに戻るのが面倒だったので、残りのチーズを坂道に転がして迎えにやった。当然チーズは戻ってこなかった。

夫は妻から事情を聞き、何もつけないパンを一緒に食べた。そして妻に家の戸締まりをしてきたか尋ねた。当然していなかった。夫は妻に戸締まりと他の食べ物を持ってくるように言いつけた。妻は家に帰り、乾し梨と酢を持ち、上の戸にかんぬきをして、下の戸を背負い夫のもとへ戻った。その戸を安全なところに持っていけば、家は守られるに違いない。夫は「なんて賢い奥さんだ……」とあきれた。妻は乾し梨と酢が重かったので、戸に持ってもらおうと思い、戸にぶら下げてからその戸を背負った。

ふたりは森に入り、木に登って夜を過ごすことにした。するとその木の下に悪党どもがやってきて野宿を始めた。夫は木の反対側におり、石を拾ってきて悪党どもに投げつけたがてんで的外れだった。妻は戸の重みに耐えきれず、まずは戸に下げていた梨を落とした。悪党たちは「鳥のふんが落ちてきた」と思った。つぎに酢を落とした。悪党たちは「霧がおり出した」と思った。いよいよ妻は戸を落とした。悪党たちは「悪魔が木からおりてきた!」と叫んで逃げ出した。こうして二人は金貨を取り戻した。

さて、家に帰ると、夫は妻にも畑で働くように言いつけた。妻は畑で麦を刈る前に食事をして眠くなり、麦を刈るうちに寝ぼけて自分の衣服を切り裂いてしまい、そのまま居眠りをしてしまった。妻は目覚めると半裸で畑に立っていた。「これは私? ああ、私じゃない?」と妻は家に帰り窓をたたき、「カーテルリースヒェンが家にいるか知りたいの」と夫に尋ねた。夫は「ああ、中で眠っているよ」と答えた。

妻はたしかに自分は家にいるのだと思い、走り去った。泥棒を見つけて「盗みを手伝ってあげる」と言い、家々の前で「みなさん、ものはありますか? 私たちは盗みたいんです」と叫んだ。泥棒たちはあきれ、厄介払いをしようと思い、村の外の牧師の畑からかぶを抜いてくるように言いつけた。妻は畑でかぶを抜き始めた。それを見た通りすがりの男は「悪魔が出た」とカン違いし、すぐに牧師に知らせに行った。牧師は足が悪かったので男に負ぶってもらい様子を確認しに行った。そのとき妻は「う~ん」と伸びをして、二人は「わあ、悪魔だ!」と叫んで逃げ出した。あまりの恐ろしさに牧師は足が悪いのも忘れて早く走ることができた。

狐人的読書感想

だめな妻ですね、カーテルリースヒェン。いえ、ここまでくるとサイコな妻ですね、カーテルリースヒェン。ただただ恐かったです。

どうやら『ものわかりのいいハンス』(KHM32)や『知恵者エルゼ』(KHM34)と同系統の物語のように感じます。とくに『知恵者エルゼ』とは物語の筋的にも共通する部分が多いです。

当時のヨーロッパの貴族階級では、血統を重んじる風習のために近親婚が繰り返されていたため、遺伝的弊害による知的障害を持った子供が頻繁に生まれており、そんな社会情勢が反映されているという読み方もあったりします。

夫のフリーダーもなんとか我慢して妻を理解しようとしている姿勢は感じられますが、これはイライラさせられたでしょうね。

最終的に妻を見捨てるような行動をとってしまったきもちも、わからなくはありません(とはいえ、妻を見捨ててはいけませんが)。

とにかく妻の言動には整合性がありません。妻としてはつじつまが合っているつもりなんでしょうが、最終的には整合性がとれない言動になってしまっていて、そこに不気味な恐さ(サイコ)が感じられるのです。

正直、この物語から何を学び取ればよいのかは、迷うところです。

二つ以上のことをしようとして、一方を忘れてしまうというのは、ふつうにあるような気がしたので、そこは気をつけたいなと思いましたが。

あと、知的障害のある方に接したとき、きっと妻カーテルリースヒェンに接する夫フリーダーのようにイライラしてしまう気がしたので、まずは相手の人の立場を考えて冷静に対応しなければいけないなとか。

う~ん、子どもに読み聞かせしたら、ただの愚か者の話として笑えるんですかねえ……、僕はとても笑えそうにありませんが、しかしシュールなおかしみはあるのかもしれません。

かなり評価に迷う、今回の狐人的読書感想でした。

読書感想まとめ

……サイコ童話?

狐人的読書メモ

・教訓を見出すだけが童話の楽しみ方じゃない、とはわかりつつも。

・グリム童話奥深し。

・『フリーダーとカーテルリースヒェン/グリム童話』の概要

KHM59。原題『Der Frieder und das Katherlieschen』。グリムの注にツヴェールン地方の話とある。どのような背景がある童話なのか、その角度から読み解いたほうがあるいはおもしろいのかもしれないとも思った。

以上、『フリーダーとカーテルリースヒェン/グリム童話』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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