狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『私信/太宰治』です。
文字数600字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約1分。
将来のことを考えると不安になる。だからまずはそこにあるやるべきことをやる。「明日やればいいや」ってしない。一日一日の努力が将来の成功につながる。と思った太宰治の短い手紙。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
(今回は全文です)
『私信/太宰治』
叔母さん。けさほどは、長いお手紙をいただきました。私の健康状態やら、また、将来の暮しに就いて、いろいろ御心配して下さってありがとうございます。けれども、私はこのごろ、私の将来の生活に就いて、少しも計画しなくなりました。虚無ではありません。あきらめでも、ありません。へたな見透しなどをつけて、右にすべきか左にすべきか、秤にかけて慎重に調べていたんでは、かえって悲惨な躓きをするでしょう。
明日の事を思うな、とあの人も言って居られます。朝めざめて、きょう一日を、充分に生きる事、それだけを私はこのごろ心掛けて居ります。私は、嘘を言わなくなりました。虚栄や打算で無い勉強が、少しずつ出来るようになりました。明日をたのんで、その場をごまかして置くような事も今は、なくなりました。一日一日だけが、とても大切になりました。決して虚無では、ありません。
いまの私にとって、一日一日の努力が、全生涯の努力であります。戦地の人々も、おそらく同じ気持ちだと思います。叔母さんも、これからは買い溜などは、およしなさい。疑って失敗する事ほど醜い生きかたは、ありません。私たちは、信じているのです。一寸の虫にも、五分の赤心がありました。苦笑なさっては、いけません。無邪気に信じている者だけが、のんきであります。私は文学をやめません。私は信じて成功するのです。御安心下さい。
狐人的読書感想
叔母さんに宛てた短い手紙です。前向きな内容になっています。
その日その日を大切に生きる。
言われてみればその通りですが、なかなか普段こういうふうに思うことってないような気がしますね。
その日その日を一生懸命生きている人は、そもそもそんなことを思うゆとりも必要もないという話なのかもしれませんが、日々なんとなく生きている僕にとっては、身につまされるものがあるなと感じます。
将来のことを考えると不安になる、だから目先のことは考えずにいまできることを一生懸命にやる――なんだか不安から目をそらしている印象も持ちますが(ひねくれ?)、今の努力が将来の成功に通じる、というところが大事なんでしょうね。
僕も「明日やればいいや」みたいなことをよく思いますが、今日できるのなら今日やってみることも大切なような気がしました(たとえやる気が起きずとも……)。
思えば小説って、一日二日でできあがるものじゃないんですよね。
一日一日少しずつ書いていって、長い時間がかかって完成する。
一日一日を努力し大切にできるのが、あるいはひとつの小説家の才能というものなのかもしれません。
ということを少しだけ思いました。
まあ、小説家にかぎったことではないのかもしれませんが。
一日一日ちょっとずつでも進んでいきたいと思った、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
一日一日を大切に生きる。
一日一日ちょっとずつ書いていくこと。
狐人的読書メモ
・とはいえ何事も一日二日でできてしまう才能があればいいとも思う。
・『私信/太宰治』の概要
1941年(昭和16年)12月2日『都新聞 第一九四三七号』にて初出。叔母さんに宛てて前向きな気持ちがつづられた手紙。一日一日を大切に。
以上、『私信/太宰治』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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