狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『寝ぼけ/夢野久作』です。
文字1000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約2分。
人は寝ぼけてやってしまうことがある。たとえば。休日に学校に行ってしまったとか。寝言を言ってしまったとか。お弁当にお菓子を入れてしまったとか。悪夢を見て小説を書いてしまったとか。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
(今回は全文です)
『寝ぼけ/夢野久作』
太郎さんはしじゅう寝ぼけてしくじるので、口惜しくてたまりません。明日は運動会だから、決して寝ぼけずにちゃんと自分で支度をして、みんなを驚かしてやろうとかたく決心をして寝ました。
あくる朝大へん早く起きたものがありますから、太郎さんは飛び起きますと、お母さんが坐って、
「太郎さん、今日は雨がふって運動会がお休みになったのだよ。さっき先生がお寄りになったから本当です。ゆっくりお休みなさい」
と言われました。太郎さんは昨日先生が「雨が降ったら運動会はおやめ」と言われた事を思い出して、安心して眠りました。
しばらくすると又太郎さんはお母さんからゆすぶり起こされました。
「太郎さん、太郎さん、大変よ。お天気になったよ。運動会があるよ」
太郎さんは、寝ぼけてはならぬと、寝床の中で考えはじめました。どっちが本当だろうと考えてみましたが、どうしてもわかりません。
「さあさあ、太郎、起きろ起きろ」
と今度はお父さんの声がしました。
「お弁当は出来ていますよ」
と姉さんの声もきこえて来ました。仕方なしに太郎さんは起き上って、御飯を食べて袴をはいて新しい靴下と白足袋をはいて、それからもし運動会がなかった時の用心に昨日次の日の時間割に合わして本を詰めて置いた鞄を荷いで、学校に行きました。
来てみると運動場には誰もいず、一パイに水たまりが出来ています。教室に行ってみると、ここもガランとして鼠一匹おりません。
変だなと思っておうちへ帰ってみると、家中の人は皆、太郎さんの顔を見て一時に笑い出しました。
太郎さんは憤って、
「何故僕を笑うの。僕は寝ぼけていやしない。運動会がお休みの時の用心に鞄をちゃんと持って行ったんだ。そしたら学校に誰もいないんだ。教場にもいないから変でしょうがないんだ」
と泣き出しそうな顔をしました。
みんな死ぬ位笑いながら言いました。
「太郎さんはまだ寝ぼけているの。今日は日曜じゃないの。運動会がなければ学校はお休みですよ。お母さんが運動会があると言ったのがわるかったのね」
太郎さんは恥かしさと口惜しさにとうとう泣き出しました。お父さんはその背中を撫でて慰めて下さいました。
「感心感心。日曜までも勉強をする児はお前より他にない。泣くな泣くな」
狐人的読書感想
太郎さんの寝ぼけの体験談でしたが、寝ぼけてやってしまった行動って、誰でも一つや二つは経験がありそうな感じがします。
調べてみたら、
「お母さんが朝お弁当に『たけのこの里』を入れる夢を見たんだけど、夢じゃなくて本当に入れたかもしれないと心配していて、子供に確認したら本当に入ってた」
というお話を見つけて笑ってしまいました。
本作の太郎さんの場合もそうでしたが、寝ぼけのエピソードには人がどこかほのぼのできる雰囲気があって、物語としていい気がします。
ただ、病気の前兆や覚醒障害としての「寝ぼけ」の話もあって、それはちょっと怖い感じがするんですよね。
睡眠中に異常行動をとってしまう障害らしく、「睡眠時随伴症」(パラソムニア)とかいうんだそうです。
有名なところでは「夢遊病」だとか、「歯ぎしり」や「寝言」なども覚醒障害としての寝ぼけにあたるらしく、驚きました。
まあ、日常生活に支障が出ないようであれば、とくに対処も必要ないとのことなので、それほど怖がるものでもないようではありますが。
夢遊病も寝言も、どうやら「寝ぼけ」は夢に連動して起こっているようなんですよね……。
「夢を見ない」という人もいますが、基本的に人は毎日夢を見ていて、その夢を覚えているか覚えていないかの違いが、「夢を見ている、見ていない」の違いとして表れているんだそうです。
では、なぜ夢を覚えていないのかといえば、一つには「目覚めるタイミングによる」のだといわれています。
睡眠には「レム睡眠」(浅い睡眠)と「ノンレム睡眠」(深い睡眠)があるというのはよく知られている話ですが、多く夢を見るのはレム睡眠中であり、このときに目を覚ますと夢を覚えている可能性が高いのだとか。
夢が創作のヒントになるってこともけっこうあるみたいなんですよね。
ブラム・ストーカーはカニを食べ過ぎたときに悪夢を見て、その悪夢を元に『ドラキュラ』を書いたなんて話があります。
睡眠にはサイクルがあるので、レム睡眠のときに起きられるように目覚まし時計を調整すれば、たくさんの夢を覚えていられて(見ることができて)創作の役に立つのかも……。
ほのぼのエピソードの多い「寝ぼけ」からの、創作のヒントになるかもしれない「夢」に興味を持った、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
よい創作に必要な寝ぼけと夢について。
狐人的読書メモ
・目覚めのよい睡眠時間は90分の倍数なのだとか。
・『寝ぼけ/夢野久作』の概要
1922年(大正11年)11月28日、『九州日報』にて初出。九州日報シリーズ。ほのぼの寝ぼけエピソードは創作のヒントになりえる(気がする)。
以上、『寝ぼけ/夢野久作』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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