狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『英雄の器/芥川龍之介』です。
文字1800字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約6分。
史上最強武将、項羽。英雄とは天と戦うもの。天命を知っても尚戦うもの。だから項羽は英雄じゃない。だから項羽は英雄。逃げて戦うか、逃げないで戦うか。英雄とは諦めないもの。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
垓下の戦いにて項羽を討った日の晩、劉邦の陣営では酒宴が催されていた。その場にいた漢の大将呂馬通は「項羽は英雄の器じゃない」と断言した。
その理由は、
・項羽は、漢軍に追い詰められたとき、「項羽を亡すものは天だ。人力の不足ではない。……」と言った。自分の失敗を天のせいにしているところが卑怯である。
・項羽は、烏江で追い詰められたとき、逃げるチャンスがあったにもかかわらず、逃げなかった。この場合、逃げてでも捲土重来するのが、英雄の器ではないか。
項羽は一切を天命でごまかそうとした。英雄とは、天と戦うもの。天命を知っても尚、戦うもの。だから項羽は英雄ではない。
それを鷹揚に聞いていた劉邦は最後に一言こう言った。
「だから、英雄の器だったのさ」
狐人的読書感想
「項羽と劉邦」のお話みたいですね。名前くらいは知っているのですが、正直、『三国志』とかとの違いがあまりよくわかっていません。
時代の違いなんでしょうかね?
・殷
(紀元前17~11世紀、『封神演義』)
・周
(紀元前1046年頃~紀元前256年頃)
・春秋戦国時代~秦の中華統一
(紀元前770年~紀元前221年、『キングダム』)
・楚漢戦争~漢王朝の誕生
(紀元前206年~紀元前202年、『項羽と劉邦』)
……184年~、黄巾の乱~三国時代の幕開け(『三国志』)
という順番のようですね。
内容は、呂馬通さんと劉邦さんが「項羽さんは英雄かどうか」について話している感じですが、どちらの言っていることもわかるような気がします。
自分の敗北を運や天のせいにするのはたしかに卑怯なようにも思えますし、しかし「勝負は時の運」ということわざもあるように、「勝負には天運というものが大きくかかわってくる」というのも事実であるような気がします。
呂馬通さんが言う「逃げられるなら逃げて捲土重来すべき」というのも頷けますが、しかし逃げたからといって必ずしも捲土重来できるかはわからないわけであって、それでも生きて戦い続けるのが天と戦うということにつながるんですかね?
そこに至るまでに失ってきた仲間や部下たちの命を思えば、自分だけが逃げるわけにはいかないという気持ちも(項羽さんにその気持ちがあったかどうかはわかりませんが)、わかるように思います。
「逃げて捲土重来する」のが英雄か、「逃げずに戦って滅びる」のが英雄か(現実論か理想論か?)。やはり意見が分かれるところなのではないでしょうか。
ともあれ、劉邦さんは敵であった項羽さんを好きだった、あるいはライバルとして尊敬していたのかな、って感じは、この物語から伝わってくる気がします。
結局人の評価って、物事の解釈の違いやものの見方の違いによって、個人個人で全然変わってくるものなのでしょうね。
とはいえ、勝者や多数派の評価がその人物に対する世の中の評価になってしまう、ということは言えるのだと思います。
他人の評価を気にしてもしょうがないとも言えますし、他人の評価ばかり気にしてしまってもしょうがないとも言えるような、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
項羽は英雄か否か、諦めないのが英雄か。
狐人的読書メモ
・あるいは項羽が諦めていたのか、諦めていなかったのかが重要な論点になるのかも。逃げるにしても逃げないにしても、勝利を信じて諦めずに戦ったのだとすれば、それは英雄の姿だと言える気がする。
・負けるとわかっていても、諦めずに戦うのはとても難しい。
・それは、なんとなくいじめとかスポーツとか、幅広く言える教訓のようにも思える。
・「四面楚歌」という言葉は「垓下の戦い」から言われるようになったそう。
・項羽は呂布よりも強い史上最強の武将と聞いて驚いた。生涯で70戦以上戦って、その勝率は9割9分というから凄い。
・『英雄の器/芥川龍之介』の概要
1918年(大正7年)『人文』(樗牛会)にて初出。1920年(大正9年)短編集『影燈籠』(春陽堂)に収録。「黄梁夢」「女体」「尾生の信」とともに収録された「小品四種」の「二」が本作。他もぜひチェックしたい。
以上、『英雄の器/芥川龍之介』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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