魚服記/太宰治=凄い小説、タブー的な話に人は惹かれてしまう話。

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狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

魚服記-太宰治-イメージ

今回は『魚服記/太宰治』です。

文字5500字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約19分。

十五歳の少女。山で父と二人暮らし。ある夜、その事件が起きる。疼痛。身体のしびれ。父の酒臭い息。タブーをおかす父? 思春期少女の願望? 夢オチ? 解釈は自由。けど、そうとしか……

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

青森県のぼんじゅ山脈、馬禿山まはげやま、シダの採集に来ていた都会の学生が、絶壁から滝壺に転落して命を落とす。四、五人の目撃者の中で、十五歳の女の子、スワが一番はっきりとそれを見た。

スワは馬禿山の炭焼小屋に、父親と二人で暮らしていた。スワが十三歳のとき、父親は滝壺のわきに茶店をこしらえた。夏になるとスワは茶店にラムネ、塩せんべい、水無飴みずなしあめなどを並べて店番をした。

十三歳の頃は(滝の形はどうしていつも同じなのだろう)といぶかしがっていたスワも、この頃は少し思慮深くなってきた。滝の形は決して同じではなくて、白くもくもくしている滝壺のしぶきは雲と同じなのだ。

昔、父親がスワに語ってくれた話がある。

三郎と八郎というきこりの兄弟がいた。ある日、弟の八郎は川からとってきた魚を兄の帰りが待ちきれずに全部食べてしまう。のどがかわいて川の水を飲んでいるうち、八郎はおそろしい大蛇になった。兄は堤の上から「八郎やあ」と泣き泣き呼び、大蛇は川の中から涙をこぼして「三郎やあ」と呼ぶしかなかった。

茶店から炭焼小屋へ帰る途中、スワは父親のうしろから声をかけた。

「おめえ、なにしに生きでるば」
「判らねじゃ」
「くたばった方あ、いいんだに」

父親は平手をあげたが、結局スワをぶたなかった。スワも一人前の女になったのだと考えた。

ぼんが過ぎると茶店をたたんで、スワの一番嫌な季節が始まる。父親はスワになめこをとらせて、炭と一緒に売りに行く。いい値で売れると決まって酒臭い息をして帰ってきた。たまにスワにもおみやげを買ってきてくれた。

ある夜、父親を待ちわびたスワは炉ばたで寝てしまった。うとうとしていると、誰かが入口から覗いている……山人か……白いもの……初雪だ! と夢心地ながらうきうきした。

疼痛とうつう。からだがしびれるほど重かった。ついであのくさい呼吸を聞いた。

「阿呆」

スワは短く叫んで外へ走った。

「おど!」

とひくく言って滝壺に飛び込んだ。

大蛇になったと思ったスワは、うれしいな、もう小屋へ帰れないのだ、とひとりごとを言った。が、スワがなったのは大蛇ではなく小さなふなであって、その体はやがて滝壺の中心に、くるくる木の葉のように吸い込まれていった。

狐人的読書感想

凄い小説だと思いました。

思春期の少女の内面がとてもよく描かれていますよね。

「なにしに生きでるば(何をするために生きているのか)」とか子供に聞かれて、すぐに明確な答えを返せる人ってなかなかいないんじゃないかなって思います(僕もまたしかり)。

「くたばった方あ、いいんだに」とはいかにも反抗期の子供が親に向かて言いそうなことです。きっと無意味にイライラして本心とは別に言っちゃうんだろうなぁ、とか、言われた方はとても悲しいだろうなぁ、とか想像しますが、こういう経験があるから、親は耐えられるのかもしれないと考えると、それだけでも親は偉大だなって漠然と思ったりします。

一番衝撃的で印象的なのは、やはりラストですよね。

一読では意味がわからない気がしますし、また必ずしもその解釈だけが正しいわけでもないみたいですが、「父親にされてしまって、処女を失くした少女が、そのことを儚んで自ら命を絶ってしまった」という結末です。

思春期って、裸を見られるだけでも嫌な気がするのに、それ以上のことをされてしまったら、衝動的に自ら命を絶ちたくなる気持ちは、とてもリアルに感じました。

しかしこういったタブー的な話には、何か人の心をひきつけるものがあるような気がしています。

近親間での結婚が避けられていたりするのは、生まれてくる子供に有害な潜性遺伝子が発現しやすく、障害が現れたり疾病に弱くなったりするため、本能的に避けられているのだそうです。

その割に、妹萌えのアニメやラノベが流行ったりします。

兄妹のいない人の「こんな妹がいたらいいのになぁ」という願望を空想によって叶えている。

基本的に男性は年下好きで女性は年上好きというニーズを満たしている。

などの説があったりしますね。

たしかに、長年一緒に生活してきた兄妹に恋愛感情が生まれるなんて話は、実際にはあまり聞いたことがありませんので、やはりフィクションだからこそ成立する話なんでしょうね。

そんなタブー的なお話にひきつけられてしまったという、今回の狐人的読書感想でした。

読書感想まとめ

凄い小説、タブー的な話に人は惹かれてしまう話。

狐人的読書メモ

・そういわれるとそうとしか読めなくなってしまうが、あのラストは全部スワの「夢オチ」ということも考えられるのだろうか……いろいろな解釈ができる点はおもしろい。

・『魚服記/太宰治』の概要

1933年(昭和8年)『海豹』にて初出。太宰治の「作家生活の出発」となる作品。『魚服記に就て』に「魚服記はもともと中国の古い書物に収められている短い物語のタイトル、上田秋成が雨月物語(巻の二)に翻案した『夢應の鯉魚』が題材になっている」とある。

以上、『魚服記/太宰治』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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