狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『先生の眼玉に/夢野久作』です。
文字数600字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約2分。
先生の眼玉に…指? 海水は傷口にしみるのに、目にしみないのはなんで? 逆に海水で目が痛くなったことある人いる? じつはそれ、塩分濃度とは直接的な関係がなくて……って話をしてます。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
(今回は全文です)
『先生の眼玉に/夢野久作』
子供が大ぜい遊んでいるところに雪がふって来ました。
「ヤアイヤアイ 雪がふって来た
雪降れ ウント降れ
塩になれ 砂糖になれ」とみんながよろこびました。
「砂糖になったらどうするか」
と大きな声がきこえましたので、ビックリしてその方を見ますと、白い鬚を生やして、白い着物を着て、白い帽子を冠って、長いすきとおった氷柱のような杖を持ったお爺さんが立っておりました。
子供達はおどろいてそのお爺さんの顔を見ていますと、お爺さんはニコニコ笑いながらも一度、
「砂糖になったら何にするのか」
と子供たちに聞きました。
「お餅につけてたべる」
と三吉が答えました。
「お婆さんに嘗めさせる」
と忠太郎が言いました。
「お庭の蜜蜂にやる」
と玉子さんが言いました。
お爺さんはさもさも嬉しそうに、
「感心感心。お前たちはみんないい児だ。それじゃ塩になったらどうするかな」
と尋ねました。
「先生の眼玉にすり込んでやる」
と最前からだまっていた悪太郎が答えました。
お爺さんは急に怖い顔になって、
「よしよし。のぞみ通りにしてやるからまっておれ」
と云ううちに消え失せました。
それと一所に、何も見えなくなる程真白に雪がふり出しました。
三吉と玉子と忠太郎の処に降る雪はみんな砂糖でしたが、悪太郎の処には塩ばかりバラバラと降って、それが眼に入って痛くて堪らなくなりました。
悪太郎は泣きながらおうちへ帰ってしまいました。
狐人的読書感想
『先生の眼玉に』って「先生の眼玉に何を……(何が……)?」って、気になるタイトルですよね。
正解は「先生の眼玉に『塩』を」でした。
「傷口に塩を塗る」という表現があるくらいですから、「眼玉に塩をすり込む」のも痛そうだなぁ、なんて想像したのですが、でも涙は塩の味がするし、海で目を開けても目は痛くならないし(個人差があるらしいです)、案外大丈夫なのかなって、ふと思いました。
調べてみると、目を保護する涙にも塩分が含まれているので、やっぱり海の中で目を開けても、海水の塩分が原因で目が痛くなることはないのだそうです。
(厳密に言うと塩分濃度ではなくて、溶液の酸性・アルカリ性の程度を示すpHがかかわっていて、涙と海水のpHに極端な差があると、目が痛くなることもあるのだとか。それ以外は海水中に含まれる微生物や微細なゴミが入って目が痛くなります)
なので、目に塩が入っても痛くならないから大丈夫! とか思ったのですが、普通に塩の粒が目に入ったことで痛いですね、目に小さなゴミが入ったのと同様に。
ところで、「先生の眼玉に塩をすり込んでやる」って言った子供の名前は悪太郎といいますが、悪太郎って……絶対ひとにイジられるだろって名前ですよね。
親もちゃんと考えて名前つけてあげなよって思いましたが、そもそも役所で受理されないんですよね、「社会通念上明らかに不適当な名前」ってことで。
(他にも常用・人名漢字以外の漢字、ローマ字、親兄弟とまったく同じ漢字の名前は受理されないそうです)
調べてみると、「悪太郎」は「いたずらっ子(男子)」を言い表す慣用句、あだ名みたいなものらしいので、本作でも本名として出ているわけではないのかもしれません。
しかし悪太郎、「先生の眼玉に塩をすり込んでやる」って、ただのいたずらのつもりだったんですかね?
ひょっとしたら、先生から何か不当な扱いを受けていて、それが原因でそんなことを言い出したのだとしたら、白いお爺さんももうちょっと話を聞いてあげてから、おしおきを考えてもよかったんじゃなかろうか……なんて思ってしまうのは、僕だけ?
まあ、どんな理由があったとしても、他人を傷つける行為や発言をしてはいけないのだということに、変わりないですかねぇ。
一言でいえば「勧善懲悪」の教訓話でしたが、いろいろな雑学に広げられて意外とおもしろかった、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
先生の眼玉に……何だと思う?
狐人的読書メモ
・塩を傷口に塗ると痛いのは、こちらも直接的には塩分濃度ではなくて浸透圧が関係しているらしい。浸透圧による体液の移動が、刺激となって痛みにつながっているとか。ちなみに塩に殺菌作用があるというのはよく知られている話だが、砂糖にも同様の効果が認められるという話もある。砂糖なら浸透圧による痛みも生じず、塩よりも有効な薬だと言えそうだ。
・『先生の眼玉に/夢野久作』の概要
1924年(大正13年)『九州日報』にて初出。九州日報シリーズ。初出時の署名は「香倶土三鳥」。勧善懲悪の教訓話。
以上、『先生の眼玉に/夢野久作』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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