グスコーブドリの伝記/宮沢賢治=多の為に少を犠牲にすべき?逆はどう?

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狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

グスコーブドリの伝記-宮沢賢治-イメージ

今回は『グスコーブドリの伝記/宮沢賢治』です。

文字数26000字ほどの童話。
狐人的読書時間は約69分。

トロッコ問題知ってる? 一人を犠牲にして五人を助けるのは正しいかって話。その逆はどう? ブドリの方法だと、イーハトーヴは救えても、世界的な被害甚大だと思うんだよね……

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

グスコーブドリは、イーハトーヴの森の中で、お父さんとお母さんと妹と四人、楽しく穏やかに暮らしていたが、十歳の年、厳寒による大飢饉がやってきて、お父さんとお母さんが失踪し、妹は目の鋭い男にさらわれて、一人ぼっちで森の外れに倒れてしまう。

ブドリが目を開くと、てぐす飼いの男がいて、ブドリは森を糸の生産所に変える手伝いをすることになる。二年目の春、火山が噴火して森が灰で覆われてしまい、糸の生産ができなくなる。ブドリは野原へ出ることにする。

ブドリは野原で赤ひげの主人と出会い、沼畑でオリザの苗を作る仕事をもらい、住み込みで働くことになる。赤ひげの主人はブドリに本をくれたので、ブドリは仕事のひまにそれを読み、中でもクーボー博士の著作に感銘を受ける。沼畑も年々収穫量が減っていき、やむを得ずブドリは六年間働いた沼畑と主人に別れを告げることにする。

イーハトーヴの町にやってきたブドリは、クーボー博士を訪ねる。クーボー博士はブドリにイーハトーヴ火山局の仕事を紹介する。ブドリはペンネン老技師のもとで二年間、仕事をしながら勉強に励む。

ある日、サンムトリ火山の噴火予兆を検知したブドリとペンネン老技師は、火山の海側にボーリング機械で穴を開け、ガスと溶岩を逃がして、サンムトリ市への被害を最小限に食い止める。ブドリは科学のすばらしさに胸を高鳴らせる。

それから四年、イーハトーヴ火山局は、火山を利用し肥料の雨を降らせることに成功する。これで干ばつの心配はなくなった。ブドリはいよいよ科学の力が人々を幸せにするのだと確信する。

その年の秋は大豊作となるが、ブドリは仕事の途中で立ち寄った村で、村人たちから暴行を受けて入院する。肥料の入れようを間違った農業技師が、それを火山局のせいにしたため起こった事件だった。

その事件を新聞で読んだ妹のネリが病院に現れ、兄妹は再会する。目の鋭い男にさらわれたネリは、その後、小さな牧場の主人に拾われ、そこの長男と結婚し、幸せに暮らしていたのだった。

それからの五年のブドリの人生はとても楽しいものだった。赤ひげの主人に何度もお礼を言いに行ったり、ネリにはかわいい男の子が生まれたり、両親が亡くなっていることを知り、墓参りに行くこともできた。

ブドリが二十七の年、恐ろしい寒気がやってくるとわかる。またあのときのような大飢饉に襲われる……。ブドリは物も食べずに幾晩も考え、ついにその解決策を導き出す。その策とは、火山を意図的に噴火させ、発生する二酸化炭素で気候を暖かく変えようというものだった(温室効果による地球温暖化)。

が、それを実行するためには、装置のスイッチを入れるために、誰か一人が火山に残り、命を犠牲にしなくてはならない――ブドリに迷いはなかった。

――その秋の気候は暖かくなり、普通の作柄となり、かつてのグスコーブドリ一家のようになるはずだった、多くの家族が、その冬を温かい食べ物と明るい薪で暮らすことができたのだった。

狐人的読書感想

おもしろかったです! 『グスコーブドリの伝記』ですか……正直あまり聞いたことのない作品でしたが……あ、でも、アニメ映画化されてますね……しかも、ブドリの声、小栗旬さんって……。

では、有名な作品なんですかね……知名度は低いという話もありますが……ともあれ、すばらしい作品であることは間違いありません。

ブドリは冷害による飢饉で両親を失くし、妹とも生き別れ、それでも働いて勉強して、イーハトーヴ火山局の技師になってからは、噴火被害の軽減化、人工降雨、そして最後には自らの命を犠牲にしてイーハトーヴを救います。

その一生懸命な姿は、生きてるな、って気がして、なんとなく日々を過ごしてしまっているいまの僕としては、見習わなくてはいけないな、なんて、ちょっと恥ずかしく思ったりもするのですが、皆さんはどうでしょうね?

この物語のテーマとして、「自己犠牲の精神」や「一人を犠牲にして五人を生かすべきか?」(トロッコ問題・功利主義)ということが、挙げられるかと思います。

「一人を犠牲にして五人を生かすべきか?」、道徳的にはいくら多数を生かすためであっても、一人を犠牲にすることは許されるべきではないのだと言えますが、しかしそうしなければ全員が亡くなってしまうのですから、一人の犠牲は許されているのが現実だと感じます。

ブドリは進んで犠牲になることを選びましたが、いったいどんな気持ちだったのかなあ、と想像してみます。

幼い頃、冷害による大飢饉で家族を失い、そしてまたあの大飢饉の原因となった冷害が訪れようとしている……自分や妹、両親と同じつらい思いをする人たちが、これからたくさん出るのだと思えば、自ら犠牲になって人々を救おうというブドリの気持ちは、痛いくらいにわかります。

わかりますが、自分がもしもブドリと同じ立場だったとしたら、その選択ができただろうか、と考えてみるに、その自信はないんですよね。

それに、ペンネン技師、クーボー博士、赤ひげの主人、妹のネリ――ブドリと親しい人たちは、きっとブドリに生きていてほしかったはずだと感じます。

もしも自分に子供がいて、ブドリのように自ら犠牲になろうとしたら、きっとそれを止めると思うんですよね。親って、どんなことがあっても、自分の子供には生き残ってほしいと願うものだと想像するのですが……それともみんなのために犠牲になってほしいと考えるものなんでしょうか……そのときの状況や立場によっても変わってくるような気がして、やっぱり一概には言えないむずかしい問題ですよね。

アニメ映画版では妹のネリは亡くなっているそうで、そうなるとブドリは正真正銘、天涯孤独ということになってしまい、残されて悲しむ人が少ないと思えばこそ、そんな決断ができたのだと考えれば、これはなかなか興味深い設定変更だと言える気がしました。

(アニメ映画の方もちょっと見てみたくなりました)

さらに深いと思ったのは、イーハトーヴを冷害から救うため、ブドリが考え出した火山を意図的に噴火させて、温室効果を引き起こそうという策についてなんですよね。クーボー博士はその効果について、以下のように分析しています。

『それは僕も計算した。あれがいま爆発すれば、ガスはすぐ大循環の上層の風にまじって地球ぜんたいを包むだろう。そして下層の空気や地表からの熱の放散を防ぎ、地球全体を平均で五度ぐらい暖かくするだろうと思う。』

地球全体の気温が五度ぐらい上昇したら、全世界的に水不足・干ばつ・森林火災……よく言われる海面上昇で沈む国や陸地があったり、それらに伴って農作物の生産量が減少して……イーハトーヴの被害以上の大規模被害が予想されるんですよね。

ブドリもクーボー博士も、当時の知識ではそこまで想定できなかったのかもしれませんが、しかしひょっとしたら、想定した上で、イーハトーヴを救う道を選んだのかもしれませんよね。

そこにもまさに、トロッコ問題・功利主義を見ることができるわけで、大切な一人を犠牲にして多数を救うことが許されるのであれば、また逆に、多数を犠牲にして大切な一人を救うことも許されてしかるべきだ、という思考ができるわけです。

それだって、当事者や家族、周囲の人々の置かれている状況や立場によって、変わってくるのだとは思うのですが……。

いまふと感じたのですが、小説や童話って本来、こういった説明しにくかったりむずかしかったりするテーマを、物語として描いたものなのかもしれませんねぇ……(当たり前のことを言ってるだけかもしれませんねぇ……)。

おもしろかったけど、なかなかにむずかしいと感じた、今回の狐人的読書感想でした。

読書感想まとめ

多の為に少を犠牲にすべき? 逆はどう?

狐人的読書メモ

・人工降雨のシーンでは『ワンピース』のダンスパウダーを思い出した。どこかでむりやり雨を降らせるということは、どこかで雨を降らせないということ。自分たちさえよければそれでいいのか? 国と国の関係、人と人の関係。やはり普遍的な永遠のテーマだというふうに感じた。

・『グスコーブドリの伝記/宮沢賢治』の概要

1932年(昭和7年)『児童文学』にて初出。1933年(昭和8年)『現代童話名作集 下巻』(文教書院)に収録。本作のプロトタイプとして『ペンネンネンネンネン・ネネムの伝記』がある。1994年と2012年の二度にわたりアニメ映画化されている。賢治の代表的童話、数少ない生前発表作。

以上、『グスコーブドリの伝記/宮沢賢治』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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