アグニの神/芥川龍之介=人は神の力を利用してクエストをクリアする。

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

アグニの神-芥川龍之介-イメージ

今回は『アグニの神/芥川龍之介』です。

文字数8500字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約23分。

エレン、お前に神を降ろす………エレンに宿る神の力とは!? ……ところでアグニってけっこういろんなゲームで出てくるよね。結局、神様って人間がその力を利用するために生み出したもの?

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

上海シャンハイのある家の二階で、インド人の婆さんが占い師をしていた。婆さんの占いとは、アグニの神を憑代よりしろに降ろし、お告げを聞くというもの。憑代にされていたのは、悲しそうな目をした女の子だった。

ようやくここを突き止めた――遠藤は香港ホンコンの日本領事のところで書生をしており、誘拐された主人の娘、妙子たえこを救いにやってきたのだ。インド人の婆さんと対峙する遠藤。妙子は次の間にいるに違いない。

婆さんは魔術を使ってピストルを持った遠藤を撃退する。逃げ出した遠藤は婆さんの家の前で佇むしかない。すると二階の窓から妙子の手紙が落ちてくる。

その内容は、アグニの神が乗り移っている間、妙子は眠ってしまうのだが、今夜は眠気に耐えて、乗り移られたふりをして、自分を父のもとへ帰すよう言ってみる、というものだった。

遠藤は戸の鍵穴から一部始終を覗いていた。やがて妙子は荒々しい男の声で、自分を父親のもとへ帰すように、そうしなければお前の命はない、と婆さんに話し始める。

婆さんは妙子が眠ったふりをして自分をだましているのだと思う。ナイフを握って突きつける。遠藤がなんとか戸を壊して部屋の中へ入ると、ナイフの刺さった婆さんが床に倒れていた。

遠藤は眠っている妙子を起こし、計略がうまくいったことを伝える。が、妙子は、計略が失敗して、自分は眠ってしまったのだ、と遠藤に言う。遠藤には運命の力の不思議なことがわかった。

アグニの神が妙子を救ってくれたのだ。

狐人的読書感想

アグニはインド神話に登場する火の神様です。最近では、ゲームのキャラクターモチーフなどとして、けっこう有名な神様だという気がします。

善や知恵の象徴とされ、蓮華から生まれたとする説があることから、インド人の婆さんは妙子を「恵蓮えれん」と呼んでいたのかもしれませんね。

(エレンといえばあっちのエレンを思い浮かべてしまいますが……)

火といえば、明るく、暖かく、獣を寄せつけず、料理ができて――火は文明の象徴、人類は火を持つことで初めて文明を持つ余裕が持てた、とも考えられていますよね。

火がいつからどのように使われていたのかを知るのは、考古学的考証がなかなかむずかしいらしいのですが、だいたい170万年前~20万年前の間に、落雷や山火事などで発生した火を住居や洞窟に持ち帰り、火種として保存し使っていたのだとかいわれています。

火、火の神、火の魔術――いまやファンタジー系の小説やゲーム、創作には欠かせないモチーフだという気がしますが、さて。

『アグニの神』は創作童話ということで、非常に単純なストーリー展開、アクション要素などもあり、子供も楽しめる作品となっています。

しかし作品のテーマについては考えさせられるところがあります。単純に読むならば「勧善懲悪」の物語となるのでしょうが。

婆さんはお金儲けのために神様を利用し、妙子は自分が助かりたいがために神様を利用しようとしていますよね。

神様からしたらどちらも自分を利用しようとしているだけであって、ただただ迷惑なだけの話で、どっちも悪いよ、といった感じなのかもしれません。

お婆さんには命を奪うことで罰を与え、妙子には計略を失敗させることで罰を与えたのだとしたら、たしかに善悪のバランスはとれているようにも思えるのですが……。

結局神様って、人間が利用するために生み出されたものなのかなあ、みたいな、ゲームでも強い神様の力を利用してクエストをクリアしたりしますしね、みたいな。

そんな感じの今回の狐人的読書感想でした。

読書感想まとめ

人は神の力を利用してクエストをクリアする。

狐人的読書メモ

・誘拐された恐怖から、妙子が自らに暗示をかけて、アグニの神を無意識下で演じていた、という見方もできるだろうか。

・強力な自己暗示により生み出された人格の存在を規定するのは、解離性同一性障害の場合と同様に難しく思う。

・結局、神の正体とはなんなのか……ということを、この物語は言っているようにも思えた。

・『アグニの神/芥川龍之介』の概要

1921年(大正10年)『赤い鳥』にて初出。タイトルにもあるとおり、ヒンドゥー教の火の神アグニが重要なモチーフとして登場する。芥川龍之介が『赤い鳥』に掲載した最後の作品。「蜘蛛の糸」「魔術」「杜子春」の3篇にそれぞれ題材があるのに対し、本作は純粋な創作童話である。人と神との境界とは。

以上、『アグニの神/芥川龍之介』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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