狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『カンザシ/新美南吉』です。
文字数800字ほどの童話。
狐人的読書時間は約2分。
女の子が「拾ってください」と頼むのに、魚は欲を出してかんざしを自分のものに。さっそくかんざしをさそうとした魚は「ぎょぎょっ!」ってなる。お金さえあれば無欲でひとにやさしくなれる?
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
(今回は全文です。旧字旧仮名・カタカナを、新字新仮名・漢字、ひらがなにしています)
『カンザシ/新美南吉』
女の子が池のふちから水の中をのぞいておりました。
水の中には一匹の魚が沈んでおりました。
「あっ」
と女の子が叫びました。かんざしが女の子の頭から抜けて、池の中に落ちたからであります。
かんざしは魚のそばに沈んできました。
「魚さん、かんざしをひろってください」
と女の子が魚に頼みました。
「これはなんですか?」
と魚は聞きました。
「それはかんざしといって、頭にさすものです」
と女の子は教えてやりました。
「大事なものですか?」
「ええ、わたしには大事なものです」
そこで魚は欲が出ました。かんざしを自分のものにしたいと思いました。
「わたしはひろってあげません。自分でおひろいなさい」
女の子は困ってしまいました。水は深いのでとても自分ではひろうことはできません。女の子は泣きながら行ってしまいました。
魚は大変得をしたと思いました。
「ひとつ頭にさしてみよう」
と言って、かんざしをさしてみました。そして、そのとき、自分の頭にかんざしはさせないことがはじめてわかりました。
そしてまた、他の人には貴いものであっても、自分にはちっとも貴くないこともあるのだ、ということがわかりました。
つぎの日女の子はまた池のふちにやってきました。
魚はかんざしをくわえて水の上に浮かびました。
「わたしが悪うございました。さあ、かんざしをお返しします」
女の子はどんなによろこんだことでしょう。何度も何度もお礼を言いました。
狐人的読書感想
そこで魚は欲が出ました……なんで欲って出るんでしょうね? 欲さえなければ人生はもっと生きやすいような気が、いつもしています。
どうすれば欲がなくなるのか、考えてみるのですが、僕の場合は一生食うに困らないお金があれば、ほとんど欲というものとは無縁でいられるように思っています。
とくにお金のかかる趣味があるわけでもなく、どこか旅行に行きたいわけでもなく、おいしいものが食べたいわけでもなく――本を読んで、たまに書いて、そうして日を過ごすうちに人生終われれば、それで満足だと感じています。
しかし実際お金を手にし、おいしいものや楽しいものに触れてしまえば、もっともっと……となってしまうのかもしれません。
一生食うに困らないだけ……なんて言えば、一見無欲に聞こえても、実際は生物みんながそれを望んでいるわけです。
そしてそれを実現できているのはほんの一握りの富裕者だけ……そんなふうに考えてみれば、これは無欲どころか生物最大の欲望だ、という気がしてきて……自分の強欲さを思い知らされてしまいます。
お金があって、時間もあって、将来に不安もなくて――だから誰にでもやさしくできる余裕が生まれて……お金持ちになりたいと欲深く願いますが、それがなかなかできないのが人間の生というものなんでしょうね。
とかなんとか。僕はいったい何の話をしているんだ?
本作の魚の場合は、そんな金銭欲とはまた違った欲のように思います。
女の子の言うかんざしが、なんだかよさそうに聞こえたから、とりあえず得ができると思って、意地悪をしてしまったんですよね。
こういうのって、何欲っていうんですかねえ……物を欲しがっているので物欲という気がしますが、それだけでもないような気がしてしまいます。
ともあれ、魚はまんまとかんざしを手に入れますが、当然魚に髪の毛はないので、かんざしはさせません。
『他の人には貴いものであっても、自分にはちっとも貴くないこともある』というのは、どこか教訓めいて聞こえますが、どうでしょうね?
普通の人からしたらガラクタにしか見えないものであっても、コレクターの間では高値で取引されている物とかあったりしますよね。
人は「プレミア」という言葉に弱いというのはよく聞く話ですが、手に入りにくく貴重だから、あるいは他人が欲しがっているから、という理由で物を欲しがるという傾向が、たしかに人に見受けられます。衝動買い、なんてこともありますよね。
物を買うとき、欲しいと思ったとき、その物が本当に自分に必要な物なのかどうかということは、もっと真剣に考えるべきなのかもしれず、そういうことが言いたいのかなあ、といった感じの、なんだか的外れかもしれない、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
欲しがりません、持ってさえいれば!
狐人的読書メモ
・人に親切にして、お礼を言ってもらえることは、きっと誰にとっても貴いことだと思った。
・『カンザシ/新美南吉』の概要
1950年(昭和25年)5月、『がちょうの たんじょうび』(羽田書店)にて初出。欲というものについて考えてみた。
以上、『カンザシ/新美南吉』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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