しらみとのみ/グリム童話=災害時に知っておきたい3つの心理?

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

しらみとのみ-グリム童話-イメージ

今回は『しらみとのみ/グリム童話』です。

文字数1000字ほどのグリム童話。
狐人的読書時間は約3分。

仲よし夫婦を襲った突然の不幸がノミをパニックに!それは周りに伝播して、恐ろしい結末を…。小さな出来事が様々な要因を引き起こし、予期せぬ大きな現象となるバタフライ効果?

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

シラミとノミが一緒に暮らし、卵の殻でビールを作っていた。するとシラミが中に落ちてやけどしてしまう。

これを見たノミは悲鳴を上げる。部屋の小さな戸が訊く。

「ノミさん、わあわあ言って、どうしたの?」
「シラミがやけどしたの!」

それで小さな戸はきしみ出す。小さなほうきが訊く。

「ほうきさん、ギイギイきしんで、どうしたの?」
「シラミさんがやけどして、ノミさんが泣いてるから!」

それで小さなほうきはやみくもに掃き出す。小さな荷馬車が通りかかって訊く。

「ほうきさん、どうして掃いてるの?」
「シラミさんがやけどして、ノミさんが泣いて、戸さんがきしんでるから!」

それで小さな荷馬車は走り出す。そばにいた燃えがらが訊く。

「荷馬車さん、どうして走ってるの?」
「シラミさんがやけどして、ノミさんが泣いて、戸さんがきしんで、ほうきさんが掃いてるから!」

それで燃えがらは燃え出す。近くの小さな木が訊く。

「燃えがらさん、どうして燃えてるの?」
「シラミさんがやけどして、ノミさんが泣いて、戸さんがきしんで、ほうきさんが掃いて、荷馬車さんが走ってるから!」

それで小さな木が揺れ出す。水がめを持った女の子が訊く。

「木さん、どうして揺れてるの?」
「シラミさんがやけどして、ノミさんが泣いて、戸さんがきしんで、ほうきさんが掃いて、荷馬車さんが走って、燃えがら山さんが燃えているから!」

それで女の子は水がめを割る。小さな泉が訊く。

「お嬢さん、どうして水がめを割るの?」
「シラミさんがやけどして、ノミさんが泣いて、戸さんがきしんで、ほうきさんが掃いて、荷馬車さんが走って、燃えがらさんが燃えて、木さんが揺れてるから!」

それで泉は流れた。女の子も、小さな木も、燃えがらも、ほうきも、小さな戸も、シラミも、ノミも、みんな流され、溺れてしまった。

狐人的読書感想

グリム童話安定の不条理オチ?

一見わけがわからない感じがしますが、よくよく考えてみると、どんな物語からも一定の意味を(勝手に)見出すことができたりします。

今回は「緊急事態に遭遇した人々が大惨事を引き起こしてしまう」というようなことを思います。

人間、常に冷静でいるのは難しく感じますが、緊急事態に直面して、他の人がパニックになっているのを見て、自分もオロオロしてしまった経験のある人は、意外に少なくないのではないでしょうか?

あるいは冷静でいて、「自分には関係ない」と思い込んでしまうのは、実はもっと危険な場合があって、この楽観視のために災害から逃げ遅れてしまうことがあり、この心理を「正常性バイアス」とかいったりします。

他にも、人間は集団になると、一人のときにはしないような行動や思考をしてしまうことがあり、これは集団心理といわれるものです。

今回のグリム童話でも、周りに合わせようとする行動が、顕著に見受けられますよね。これは「同調バイアス」です。

さらに、その行動のもとになった感情は、「他人を助けたい」という気持ちだったのではないか、というふうに読み取ることもでき、「他愛行動」だったのでは、と捉えることもできます。

正常性バイアス・同調バイアス・他愛行動――災害時はこれらの心理が重なり合って、被害がより大きくなってしまった事例が数多くあります。

『しらみとのみ』は「人間心理の相乗効果が被害を拡大してしまう」ことを描いた作品なのかな、というふうに考えてみたのですが、いつものごとく深読みのし過ぎですかねえ……。

グリム童話にはキリスト教的な考え方が描かれていることもあるので、人間はみな等しく罪を負っているという、原罪が描かれているように読めなくもないんですかねえ……。

はたまた、べつのおもしろい解釈もあるかもしれませんね。

(よかったら、コメントで教えてくれるとうれしいです)

不条理オチを考えてみておもしろいグリム童話でした。

読書感想まとめ

災害時に知っておきたい3つの心理?

狐人的読書メモ

・バタフライ効果(小さな出来事がいろいろな要因を引き起こしていき、だんだんと大きな現象になっていく)の暗示とも読める。小さな戸、小さなほうきなど、わざわざ「小さな」とつけているところも、バタフライ効果の暗示を強調しているように思える。(牽強付会?)

・『しらみとのみ/グリム童話』の概要

KHM 30。原題は『Läuschen und Flöhchen』。一見すると不条理で理解不能な物語だが、災害時の心理や興味深い現象を暗示しているように読み解けるのは、すなおにおもしろいと思った。

以上、『しらみとのみ/グリム童話』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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