駈込み訴え/太宰治=ふとお礼を言いたくなった。

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狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

駈込み訴え-太宰治-イメージ

今回は『駈込み訴え/太宰治』です。

文字数14000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約31分。

ユダがキリストを裏切った理由。その人のためにいつもがんばってるのに、その人からお礼も言われなきゃ、たしかにつらいよね。いつもご飯を作ってくれて、いつも働いてくれて、ありがとう。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

私は他の弟子の誰よりもあの人を愛していた。私はあの人のためにお金をやりくりし、衣食住を整えているのに、あの人からお礼を言われたこともない。

他の弟子たちはあの人について歩けば、何かいいこともあるかと、そればかりを考えている。一心にあの人と共にあることを願っているのは私だけだ。

それなのに、あの人は私を軽蔑している。マリアが高価な香油をあの人の足に塗ったとき、私はそれを非難した。あの人は女の味方をした。あの人は、あの女に、特別な感情を抱いていたに違いない。

私にはいつも優しい言葉の一つもないのに……。

私はあの人を銀貨三十枚で売った。私の裏切りをあの人はちゃんとわかっていた。それでも私はあの人を売った。愛しているから裏切った。いや、はじめから、愛してなどいなかったのだ。ただお金が欲しかっただけだ。

私はユダ、イスカリオテのユダ――。

狐人的読書感想

銀貨三十枚でキリストを売ったとされるイスカリオテのユダ。そんなユダの心情が、一人称の独白体で綴られていて、大変興味深い作品でした。

作中、ユダはいろいろと言ってはいるのですが、全体をまとめてみると「ユダは嫉妬からくる憎しみのためにキリストを売った」というのが、この小説におけるユダの裏切りの解釈のようですね。

ユダがキリストを憎むようになる経緯のひとつに「会計係としてお金をやりくりし、みんなの衣食住を整えているのに、そのことについてキリストからお礼を言われたことがない」といったことがあるのが印象に残りました。

なんとなく、一般家庭を思わされるんですよねえ、これ。

たとえば、毎日自分のためにご飯を作ってくれるお母さんに、いつもお礼を言っているでしょうか? 自分を育てるために毎日働いてくれているお父さんに、いつも感謝の気持ちを伝えているでしょうか?

親が子供を育てるのは当たり前だ、という気がして、もちろんそれを感謝していないわけではないのですが、それを普段から言葉にして伝えることは、非常に少ないように思います。

親が子にそそぐ愛は、よく「無償の愛」などと言われたりしますが、しかし「無償の愛」などというものがはたして存在するのだろうか、というところはいつも疑問に思っていて、たとえ親であっても、子が感謝の気持ちを持っていなければ、育てることをやめてしまうことだってあるんじゃないかな、なんて考えてしまうことがあります。

見返りを求める愛は本当の愛じゃない、なんてことを聞いたりもしますが、見返りを求めない愛なんて、あるんですかね?

恋人や友人、誰だって、その人に自分を一番愛してほしいから、その人のために何かをするのであって、「愛されなくてもいい、それでも自分は愛す」なんてことは、世の中なかなかないように思うのですが、どうでしょうね?

もし、実際のユダがこの小説のユダのように思っていたのだとしたら、その愛はたしかに独りよがりで身勝手なものだったかもしれませんが、非常に人間らしい人だったのだと思いました。

キリストは聖人だから、人間であるユダの気持ちがわからなかったんですかね? お礼くらいは、たまには言ってあげてもよかったんじゃないかな、なんて、ちょっとユダの味方をしてあげたくなってしまいました(とはいえ、裏切りは悪いことには違いないのですが……)。

普段、当たり前に自分のために何かをしてくれている人たちに、ふとお礼が言いたくなるような、そんな今回の読書でした。

読書感想まとめ

親や恋人や友達にお礼を言おう。

狐人的読書メモ

・この小説をBLやヤンデレとして読めるという見方をネットで見つけて、たしかにそうも読めるかなあ、と思って、おもしろく感じた。

・『この世に暮して行くからには、どうしても誰かに、ぺこぺこ頭を下げなければいけないのだし、そうして歩一歩、苦労して人を抑えてゆくより他に仕様がないのだ。』――共感を覚えた一文。

・『駈込み訴え/太宰治』の概要

1940年(昭和15年)『中央公論』にて初出。ユダの一人称告白体。ユダがあの有名な裏切りに至った葛藤と苦悩。淀みなく口述筆記された作品であるらしく、改めて太宰治という作家の才能を感じさせられる。裏切者の代名詞とされるユダは、漫画作品(『ゴルゴ13』、『聖☆おにいさん』)などにもモチーフとして取り上げられていて、狐人的にも非常に興味深い人物である。

以上、『駈込み訴え/太宰治』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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