狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『三枚の蛇の葉/グリム童話』です。
文字数3000字ほどのグリム童話。
狐人的読書時間は約9分。
もしも自分が先に亡くなれば、
一緒に生き埋めにされてもよい、という人でなければ結婚しない、
って、思ったことある?
自分亡き後、別のひとと幸せになって、って、願える?
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
父子は貧しかった。青年は父の負担を減らすために家を出た。兵士となった青年は戦争で活躍した。王様は青年を気に入り将に取り立てた。
さて、王様には風変わりな姫がいた。もし自分が先に亡くなれば、一緒に生き埋めにされてもよい、という人でなければ結婚しないという。その代わり、もし夫が先に亡くなれば、自分が一緒に墓に入るとも。
青年は姫を深く愛していたので、王様の許可を得て結婚式が行われた。しばらくして姫が病気で亡くなった。青年は姫の棺と一緒に、王家の墓に入った。
そこに蛇が現れる。青年は「私が生きているかぎり妻には触らせないぞ!」。剣で蛇を三つに切り裂いた。するともう一匹の蛇が現れて、口にくわえた三枚の葉を、切り裂かれた蛇の傷口に置いた。蛇は復活し、二匹は一緒にいなくなり、後には三枚の蛇の葉が残されていた。
青年は姫の口と両目に三枚の蛇の葉を置いた。姫は復活した。青年は大声で外の衛兵を呼んだ。青年は、三枚の蛇の葉を従者に渡し、常に持ち歩くよう言いつけた。
青年と姫の幸せな生活が戻ってきたかに見えた。が、あれ以来、姫の心には変化が生じていた。
あるとき、青年と姫は航海に出た。姫は船長と密通した。青年が眠っているうちに、二人は彼を海に投げ込んだ。
一部始終を見ていた従者は、船から小さなボート出した。なんとか青年をボートに引き上げると、三枚の蛇の葉を両目と口に置いた。青年は復活した。
姫は王様の前に進み出て「夫は航海中に病気で亡くなりました」と話した。王様は「私が彼をよみがえらせよう」。青年は隠し部屋から飛び出した。青年と従者のボートは先回りして、王様にことのすべてを打ち明けていたのだ。
「夫はお前と一緒にこの世を去る覚悟をして、お前を生き返らせてくれた。なのにお前は、夫を裏切り、亡き者にしようとした。その報いは受けねばなるまい」
姫は共犯者とともに穴の開いた船に乗せられ、海へと送り出された。船はまもなく海の波間に沈んだ。
狐人的読書感想
おもしろい展開がいくつもあるのが特徴的だったように思います。冒頭からして、貧しい青年が一兵卒として戦場に赴き、不利な状況で味方を鼓舞し、先陣を切って勝利を収めるという、熱い展開です。
童話なので、できごとがすべて淡々と綴られているだけなのですが、もっとドラマティックに描いたら、それだけでよりおもしろくなりそうな物語で――狐人的に勉強になりました(とはいえ、ありふれたテンプレ的なものかもしれませんが)。
自分が先に亡くなったなら、一緒に生き埋めにされてもよい、という人でなければ夫にしない、という姫。
どんだけ独占欲が強いんだよ、というか、ヤンデレ属性がありそうなんですよね……童話ではデレませんが、いいキャラクターになりそうです。
そんな姫が先に亡くなり、震え上がりながらも一緒にお墓に入った青年の献身は、やはりなかなかできることじゃないよなあ、というふうに感じました。
ここには実際、思わされるところがあるんですよね。
夫婦でも恋人同士でも、どちらかが先に逝く、ということは避けられないことのように思います。
自分が亡きあと、相手に別のひとと幸せになってほしいと願うのか、いつまでも自分のことを忘れずにいてほしいと願うのか――どちらの気持ちも持ち合わせてしまうのが人間、という気がして、それでいいんだ、というように思えるのですが、どうでしょうね?
飢えは最も苦しい亡くなり方だ、ともいわれることがあるので、もしも相手の道連れになるのだとしても、生き埋めだけは勘弁してほしいと思ってしまいますが、どうでしょうね?
しかし生き埋めになって生きていたおかげで、青年は蛇の三枚の葉を手に入れることができました。
亡くなったものをよみがえらせることができる三枚の蛇の葉は、なんとなくドラクエの世界樹の葉を彷彿とさせます(グリム童話とドラクエは連想できる事柄が多いような気がします)。
その三枚の蛇の葉を使って妻がよみがえり、ハッピーエンドかと思いきや、妻の裏切り……グリム童話らしいというか、このドロドロ展開はふつうにおもしろかったです。
しかして、妻の裏切りは、本当に本来の妻のせいだったのかな? というところには疑問を持ちました。
妻の心が変わってしまったのは、三枚の蛇の葉によってよみがえったことに起因しているみたいなんですよね……蛇といえばやはり、旧約聖書の創世記で、イヴに知恵の木の実を食べるようそそのかした蛇を連想してしまいます。
最近ニュースになった「浮気を許す夫」ではありませんが、本来の青年は、妻の一度の裏切りならば許してあげたのではなかろうか、という印象を持つんですよね。
実際は、妻と共犯者が処刑されるのを黙って見ていたようで……これはひょっとして、三枚の蛇の葉で復活した影響なのではないでしょうか?
青年が今後、どのような暴君として国に君臨し、どのような最期を迎えることになるのか……ちょっとダークサイドなその後の展開を想像してみて、やはりとても楽しめた読書でした。
読書感想まとめ
自分が先に亡くなるとしたら、あなたは恋人にどうしてほしいと願いますか?
狐人的読書メモ
読書感想では姫は三枚の蛇の葉の影響により人が変わってしまったのだと捉えたのだが、自分に都合がいいことばかり言ってしまうのは、それが普通の人間なのかもしれないとも思えた。
・『三枚の蛇の葉/グリム童話』の概要
KHM 16。あるいはテンプレ的かもしれないが、いくつかの物語の展開が、とてもおもしろく感じた作品。創作のよいベースになりそうな気がした。
以上、『三枚の蛇の葉/グリム童話』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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