狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『犯罪/横光利一』です。
文字数2000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約7分。
鳥かごから聞こえる彼女の鳴声は楽しそう。
だけど、鳥かごの中の鳥は幸せだろうか。
大空に帰してやろう。
彼女はもう高く飛べなくなっていた。
ペットを飼うことは犯罪(つみ)ですか?
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
私は寂しくなったときには、彼女の啼声を口笛で真似た。
すると鳥かごの中から彼女のふけり声が楽しく聞こえてきた。
私もおもしろくなって、それに応えたり誘ったりするが、面倒くさくなると彼女をほったらかしにした。
彼女はなおも懸命にふけり続けるので、なんだかそれがかわいそうな気がして、また知らず知らず相手になってやった。
いま、私は彼女に呼びかける。
そしてもう彼女がいないことに気づいてたまらなく寂しくなる。
彼女は山でつかまえたメジロだった。
最初は私の与えるエサを食べず、激しく鳴いて狭いカゴの中を飛び回ったが、二ヶ月ほどで慣れた。
二年が経ち、私は彼女にエサをやろうとしたとき、ふいにその羽の極めて小さいのに気づく。
そしてドストエフスキーを思い浮かべる。
彼は悲痛な顔をしていた。
私は彼女を逃がしてやろうと思い、カゴの格子戸を開ける。
が、彼女は高く飛び続けることができなくなっていた。
神に対する犯罪を背負った、と私は思った。
いま逃がすのは逃がさないことよりも悪いことだと知った。
狐人的読書感想
犯罪と書くとなんだか重々しく感じられますが、「つみ」と読むと普遍的な感じがするのが不思議です(犯罪は刑事罰、事件を連想させるから?)。
テーマは「ペットを飼うことは罪か?」という感じになるかと思います。
現代ではペットを飼っている人は多くて、身近なテーマという気がします。
僕自身、これについてはよく考えることがあります。
動物をペットにするということは、その動物が自然界で生き抜く力を奪うことに通じていて、その動物の本来の在り方を歪めてしまい、それが罪なのだと言われてしまえば、たしかにその通りかもしれないな、と感じてしまいます。
しかしよくいわれる理屈として、人間がペットにすることでペット化された動物は生息領域を広げて個体数を増やし――繁栄しているからいいじゃないか、というものがあり、そう言われてみればたしかにその通りかもしれないな、と感じてしまいます。
とはいえこれには、だったらあなたはペットになりたいか、という反論ができますよね。
ペットになりたい、という人は少ないんじゃないかと思います(現在は人間よりもいい暮らしをしているお金持ちのペットもいるので、一概には言い切れないところかもしれませんが、笑)。
自分がされてイヤなことは他者にもすべきではなくて、それは相手が人ばかりでなくて動物にもいえることですよね。
だったら、動物はペットになることをイヤがっているのか、と訊かれてしまうと、それは断言が難しいところですね。
動物に人間ほど豊かな感情があるのか、あったとしてもそれを十全に知るすべはなく、明らかに人間よりも思考力が劣っている以上、人間の論理を押しつけること自体がナンセンスなのかもしれません。
そもそも、現在のペットは生まれたときからペットなのだから、もし人間ほどの知能があったとしても、そのことに疑問を覚えること自体不可能だといえそうです。
僕がこのようなことを考えるときの結論は、結局生命はみな自己本位な存在である、ということなのです。
ペットを飼うことにも通じる、親が子を思う心、恋人が恋人を思う心、友達が友達を思う心――どれもみな大切だと思いますが、他者のことだけを思って生きることは生物には不可能で、それは間違っていることではなくて、自己を優先して生きるのは生物としてごく自然なことのように思っています。
自己犠牲や利他行為は美しく、人間の心には感じられますが、ひねくれものの僕の目には不自然に映ることもあります。
ペットについては、かわいいから、さびしいから、かわいそうだから、いやされたいから――どんな理由でも人間は100%自分のために動物を飼うのだと認めるしかないと考えます。
ペットになった動物が、はたして自分が幸せかどうかなんて、本人(ペット)たちにもわかりません。だったら、人間がうちのペットは幸せだ、と信じて飼い続けられればそれでいいのかな、という気がしています。
この作品の「私」のように、ペットを飼うことに「犯罪」の意識を感じたのであれば、もうペットを飼うべきではないでしょうし、だけどどうしてもさびしかったりいやされたかったりしてペットを飼いたいのならば、それらのことを自覚した上で大切に飼えばそれでいいという気がします。
ペットを飼うことについて自分が納得できるかどうか、だから他人が口出しをすべきことではないのでしょうが、そういったことまで考えてからペットを飼い始める人というのは意外と少ないんじゃないでしょうか。
などと感じた読書でした。
読書感想まとめ
ペットを飼うことは犯罪ですか?
狐人的読書メモ
――ということはよく考えてペットを飼うべき。
・『犯罪/横光利一』の概要
1917年(大正6年)『萬朝報』にて初出。タイトルの『犯罪』は重々しく、読みの「つみ」は普遍的で、テーマは身近なものだと感じた。
以上、『犯罪/横光利一』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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