雨/織田作之助=シングルマザーとその子におすすめしたい小説。

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

雨-織田作之助-イメージ

今回は『雨/織田作之助』です。

文字数24000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約62分。

愛情不足は自分に自信がない子を育てる。
子は親を理想化し、この理想と現実とのギャップが、
愛情を感じづらくしている。
親はダメな自分を我が子に見せる、
勇気を持つべきかもしれない。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

浄瑠璃じょうるり本写本師の娘、お君は美人だが、主体性の乏しい性格だった。母は十六のときに糖尿病で亡くなり、十八歳で小学校教員である軽部と結婚した。

軽部は出世欲の固まりで、浄瑠璃ぐるいの校長に取り入るため、若いのに浄瑠璃を習っていた。お君はその縁で軽部と知り合い、ある日、写本を届けに行った下宿先で、無理矢理関係させられた。

軽部はお君が妊娠し、自分の評価が下がることを恐れ、結婚を決めた。お君は、私はどないでもよろしおま。翌年、お君が豹一を産むと、軽部はホッと息を吐く。

その年の暮れに軽部が亡くなる。お君は豹一を連れて実家に帰る。

五年後、今度はお君の父が電車に敷かれて亡くなる。父の弟子はお君を汚して去っていく。お君は引っ越し、近所の娘たちに母親譲りの裁縫を教え、仕立物を引き受けて生計を立てるようになる。

私はどないでもよろしおま。豹一が小学生になった頃、二十六歳のお君は高利貸の野瀬安二郎と再婚する。安二郎は四十八歳、これが四度目の再婚で、強欲な男だった。お君をこきつかい、必要最低限の食費しか与えなかった。

豹一は好きな母と嫌いな父の関係を思い、性というものを嫌悪するようになる。憂鬱な少年になり、中学校へ入学したが、安二郎は一切金を出さず、学費はすべてお君がまかなうことになる。

豹一は優秀だった。顔もよく、女にモテた。しかし自分の境遇を卑下し、ゆえにまったく自分に自信が持てなかった。孤独だった。周りはみんな敵に見えた。だからクラスメイト達もまた、豹一を憎んだ。

やがて豹一は京都の高校に進むが、じき退学届を出して大阪の実家へ戻る。新聞記者になるつもりで新聞社に就職するが、そこでは給仕をさせられる。初給料の日、母を喜ばせようと家に帰った豹一は、母が安二郎の身代わりに脱税の容疑で留置されたと聞き、ショックを受けて家を飛び出す。

豹一は母を養えるようになろうと決意するが、もう新聞社へ行く気力はなかった。円タク助手になり、初めて行ったくるわで性への嫌悪をあほらしく思い、なぜか足しげく通うようになり――半年後には肺病を患う。

泣く泣く母に手紙を出すと、意外にも安二郎が豹一を迎えにきた。安二郎の顔には懊悩おうのうの色が深く刻まれており、豹一はしばらく口が利けなかった。

安二郎の話によれば、雇っていた集金人がお君と通じたという。豹一が家出したためにできたお君の心のすき間につけこまれたかたちだった。豹一は悲しみに顔をゆがめるが、安二郎の表情はもっと歪んでいた。当然集金人は追い出したが、以来、安二郎は嫉妬に狂うようになり、お君が浮気をしないか心配で、仕事もろくにできないという。

要するに、安二郎は豹一にお君を監視させようとしているのだ。豹一はざまあみろと思う反面、安二郎に同情する気持ちも芽生えていた。

お君は命をすりへらすようにして豹一の看病をした。豹一は自分をつまらぬ者だと決めていたが、ようやく母の愛を実感でき、深く感謝し、これまでのことを悔いた。

しかし豹一は二月も寝ていなかった。何かに突き動かされるように外へ出た。そうして入ったキャバレーで、友子と出会い、一晩をともにする。

三月ほどして、豹一は友子と再会する。友子は豹一を探していた。妊娠したのだと涙を流した。豹一は友子と結婚した。実家の近くで新婚生活がはじまった。豹一は毎日就職口を探して、デパートの店員に雇われる。その秋、友子は男の子を出産した。

お君はしげしげと豹一のところへやってきた。二十歳で父となった豹一と三十八歳で孫をもったお君はほがらかに笑い合った。

安二郎から、はよ帰ってこいと迎えが来ると、お君は、また来まっさ、さいならと友子に言って、雨の中を帰って行った。一雨一雨冬に近づく秋の雨が、お君のかさの上を軽くたたいた。

狐人的読書感想

美しい母。男の子にとって、母親が美人だということはうれしいことであり、また悲しいことでもあるのかもしれません。

シングルマザー。生きるために忙しく働かなければならない母親から、子供が愛情を感じるのは難しいことなのかもしれません。

再婚。母親の再婚は、自分よりも別の男を選んだような気になってしまい、自分は愛されていないのだと感じるのかもしれません。

愛情を感じられずに育った子供は、自分に自信が持てなくなり、自尊心や虚栄心を満たすことで、自信をつけようと試みますが、なかなかうまくいきません。

子供にとって親の愛情に勝るものはなく、それは人生に大きく影響してくるものであり、とても大切なものなのに――子供が親の愛情を実感することの難しさを思います。

母であるお君は、一貫して主体性に欠けるところがある女性ですが、しかし決して子供を愛していないわけではないんですよね。

むしろ深く愛しています。

一生懸命働くのも子供のためだし、再婚も子供を上の学校に進ませてあげたいという親心からくるものでした(あらすじではこの件省いています。さらに結局、豹一の進学援助の約束は、強欲な再婚相手によって破られてしまうわけでもあります)。

結局のところ子供って、時間的なもの(一緒にいる時間)や物理的なもの(ふれあいやごはんやおもちゃ)でないと、親の愛情を充分に感じることができないのではなかろうか、という気がするんですよね。

もちろん、ある程度の年齢になれば、それなりに思考力が身について、「お母さんはあなたのためにお仕事がんばってるのよ」とか、「お母さんはあなたのために再婚するのよ」とか言われれば、頭では納得できるようになるかもしれませんが、やっぱり心では納得できなかったりするんでしょうね。

そこを理解して、しっかり成長するのがいい子なのかもしれませんが、それができる子どもはいないとまではいえないにしても、かなりレアだという気がします。

豹一の場合、成績はとても優秀でしたが、どうしても自分に自信が持てず、さらには性というものを嫌悪するようになり、歪んだ性格(というか、人間として大切な何かが欠けたままの性格)が形成されていったように思います。

子供のときって、親は完璧で、自分の理想的なものでなくてはならないのだという、思い込みがあるような気がします。

子供は親のいうことを聞かなければならず、絶対的な存在であるがゆえに、そう思うわけなのですが、完璧な人間なんていないのだ、ということは、もっともっと早いうちに知りたかったなあ、という感じがするんですよね(ただの自分の勉強不足、理解力不足なのかもしれませんが)。

自分の親が、自分の理想とする親と違っていると、どうしてもそれを不満に思ってしまったりするのですが、子供だからといって親に自分勝手な理想を押しつけてはいけないし、それは、親だからといって子供に自分勝手な理想を押しつけてはいけないのと同じことだと考えました。

みんな、このことにいつ頃気づくんだろう、というのは素朴な疑問としてあります。僕はかなり遅かったように思うんですよね。いいわけになってしまいますが、親はやっぱり絶対的なものだという意識が強かったためでしょうね。

あるいは、親の立場からしてみても、このことは率先して教えるべきことなのかもしれません。

親としてはどうしても、子供にはいい父親、いい母親でありたいという意識が働いてしまい、なかなか自分の悪いところを見せようという気にはなれないかもしれませんが。

豹一は大人になって、自分が苦労して、はじめて母親の愛というものを本当に実感できたのだと思います。

その苦労こそが人生であって、決して悪いことだとは思わないのですが、しかしその苦労が親の愛情を感じられなかったことに起因しているのだとしたら、その苦労はどうにかして避けられるべきことだったように思ってしまい、だったら避けるべき努力はするべきでしょ、というふうに考えてしまうんですよね。

もちろん、それですべてうまくいけば、誰も人生に悩んだりはしないわけではありますが。

親は自分のカッコ悪いところを子供に見せて、自分は完璧な人間じゃないんだ、ということをしっかりと教えるべきだと思ったし、子供もまたそれを受け入れ理解して、ちゃんと親の愛情を感じられるような努力をしなければならないのだと思いました。

それが口で言うほど簡単なことじゃない、ということも思いましたが。

読書感想まとめ

幼少時代の親の愛情不足は、自信の持てない子供を育ててしまいます。子供は親の愛情を感じられる努力をすべきかもしれません。また、親は子供が愛情を感じられる教育を施すべきかもしれません。そのために、親は自分の悪い部分、本当の自分を我が子であってもさらけ出す勇気が必要だと思いました。

狐人的読書メモ

「終わりよければすべてよし」とはいうが、「はじめから終わりまでよければすべてよし」ということに越したことはないだろう。それが難しいことだとは言っても、その努力を怠るべきではないのだろう。

・『雨/織田作之助』の概要

1938年(昭和13年)11月『海風』にて初出。人生が描かれている。シングルマザー、あるいはシングルマザーの子供には共感できる内容かもしれない。最後ハッピーエンド(?)でよかったと思える小説。

以上、『雨/織田作之助』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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