恐ろしき錯誤/江戸川乱歩=復讐は自分の身だけを滅ぼしてしまった話。

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狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

恐ろしき錯誤-江戸川乱歩-イメージ

今回は『恐ろしき錯誤/江戸川乱歩』です。

文字数24000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約76分。

火事の中に飛び込んだ愛妻は帰らぬ人となった。
なぜこんなことに? 男の復讐劇の幕が開く!

真相は? 真犯人は? 恐ろしき錯誤はどこに? 

江戸川乱歩の弱メンタル話もおもしろい。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

北川の家が火事になり、愛妻の妙子が亡くなった。一度は家の外に逃れたはずの妙子がなぜ? 火事のときに避難を手伝ってくれた、学生時代からの友人であり、近所に住む越野が言った。

火事のとき、妙子に近づき何ごとかを囁いた男がいる。火事場の混乱で断言しかねるが、その男はやはり我々の学生時代からの友人で、野本か、井上か、松村か、その誰かであることは間違いない。

それを聞いた北川は愛妻の亡くなった理由を悟った。男は妙子にこう囁いたはずだ。子供がまだ家にいますよ。

彼らは学生時代、勉学と恋のライバル同士だった。恋のヒロインはもちろん妙子で、この恋の勝負は野本が圧倒的優勢かと思われた。しかし家の力を使った北川が、結局妙子と結婚した。

一番あやしいのは野本だ。だが証拠のない犯罪だった。仮に囁いた事実が判明しても、自分はそう信じて言ったまで、子供がすでに連れ出されているなど知らなかった、ましてその後の妙子の行動など予想できない――など、いくらでも言い逃れはできる。

北川は苦心の末、ある復讐を考え出した。それは妙子が昔から大切にしていたペンダントの複製を用意して、野本、井上、松村らの写真をそれぞれ中に貼り、彼らのもとを訪ねて言うのだ。妙子が真に愛していたのは君だったのだ、その妙子を君は……。

井上、松村からは特段の反応は得られなかった。北川が自身の推理を披露しても、君は奥さんを亡くして疲れているんだよ、と気遣われるほどで、ペンダントを出すまでもなかった。

しかし野本は違った。苦しげな様子で北川の話に聞き入り、いよいよペンダントを出したときには中身も見ずに気絶した。北川は勝利を確信して家に帰った。

翌日も勝利の快感に酔いしれていた北川は、ふと机の引き出しを開けていやな予感がした。自分はたしかに、野本の写真入りのペンダントを、野本の家に持っていっただろうか?

恐ろしき錯誤をしてはいないだろうか?

そのとき、女中が一通の手紙を持って北川の書斎に入ってきた。北川はその手紙を読んで発狂した。

『昨日はとんだ醜態をさらして失礼した。仕事でろくに眠っておらず、君の話もうろ覚えだが、奥さんのことについてだったと思う。君の気持ちはわかるが、あまり思いつめてはいけない。転地療養でもして、体を大事にしてくれ。忘れ物を同封しておく。松村君が犯人だとは、僕にはどうしても思えないよ』

狐人的読書感想

恐ろしき錯誤-江戸川乱歩-狐人的読書感想-イメージ

北川が野本に渡すペンダントを間違えたのは明らかな錯誤ですが、この小説にはいったいいくつの錯誤があったのでしょうね。

北川の推理が錯誤だったのか、越野の証言が錯誤だったのか、妙子の行動が錯誤だったのか……、まだ考えられるように思います。

すべてが真実で、北川の「恐ろしき錯誤」をいいことに、野本が知らん顔をしている可能性だってありますよね。

恐ろしき錯誤、恐ろしき北川、そして真に恐ろしきは誰なのか?

一見すると「錯誤」というものがメインテーマのようにも思えますが、じつは「恐ろしき」というところも相当に重要なテーマとなっていて、さすがは江戸川乱歩さん、秀逸な小説だと僕は感じたのですが、どうやらそうとばかりもいえないようです。

『恐ろしき錯誤』は江戸川乱歩さんの第三作とのことです。前二作『二銭銅貨』と『一枚の切符』が好評だったので、『恐ろしき錯誤』を勇んで投稿した江戸川乱歩さんでしたが、原稿を受け取った編集長の評価は芳しくなく、それですっかり自信をなくしてしまい、しばらく小説を書かなくなってしまったそうです。

これを聞いた僕などは、気持ちわかるなあ、といったエピソードですが、けっこう弱メンタルだったみたいですね、江戸川乱歩さんは。

文豪の方の人間味ある話を聞くと、不思議な好感を抱いてしまうのもまた、読書するひとつのおもしろさのように感じます。

『恐ろしき錯誤』を読んで、「善意を偽装した悪意」によって不可能犯罪をするという、やはり江戸川乱歩さんの『赤い部屋』を思い起こしたのですが、もともと『恐ろしき錯誤』はこの『赤い部屋』の前半部分の一部として書かれていたものを、一つの独立した短編小説として書き上げたのだとか。たしかに趣がそっくりです。

『恐ろしき錯誤』、『赤い部屋』のように、「自分は直接手を汚さず、少しばかりの知恵と偶然によって行われる犯罪」を、「プロバビリティーの犯罪」とかいうのだと、今回初めて知りました。おもしろいミステリーの手法ですね。

さて、そろそろ内容の感想に入りたいと思います。

主人公の北川は、最後発狂してしまいますが、物語の最初からちょっと様子がおかしく、愛する妻を失えば、それも無理からぬことだろうな、と、やはりかわいそうな悲劇性を感じさせます。

ただ、北川が最後に「恐ろしき錯誤」を犯したことで、この物語はどこか喜劇性を含んだものにもなっているように感じます。愛する妻を失えば、それも無理からぬこととはいえ、そんな大切なこと間違えるか北川、そんなイージーミスするか北川、みたいな。ひとの不幸を喜んではいけないとは思いつつも。

北川は妙子が火事で亡くなったことに、はじめから疑念を抱いていましたが、「なんとなくいやなことばかり考えてしまう」みたいな気持ちにはとても共感を覚えました。

全然違った話になってしまうかもしれませんが、「なんとなくいやなことばかり思い出してしまう」ということが僕にはあります。

前にあったいやなこと、あるいは恥ずかしかったできことを思い出しては、本当に気分が沈み込んでしまうのですよね。

常々不思議に思っているのですが、いいことは全然思い出せないのに、悪いことばかり思い出すのはなぜなんでしょうね?

あるいは僕だけのことなのかもしれませんが、どこか一般的にもいえることのように思っていて、興味をもっているところです。

ちょっと調べてみましたが、「うつ病」などの場合もあれば、ただの性格的な傾向の場合もあるみたいで、どちらなのかはよくわかりませんでした。

まあ、生活に支障をきたしていないところを鑑みるに、「うつ病」ではない! とは思うのですが(しかし生活に支障をきたしていないと思っているのは僕だけかもしれず、自信を持ってはいえないところではありますが)、こういうことこそ気軽に誰かと話してみると、意外に共感したり安心できたりすることなのかなあ、という気もします。

やはり全然違った話になってしまいましたが(汗)

人間だから間違えることはあります。だけど取り返しのつかない間違いがあります。取り返しがつかない、などというと、遠くのものごとのようにも思えるのですが、意外と身近にあるようにも思えます。

たとえば、ちょっとした誤解から友達とケンカしてしまい、そのまま仲直りできず、結局友人関係が終わってしまったとき、それは「恐ろしき錯誤」だとはいえないでしょうか?

友達でなくとも、仕事場の上司や部下、同僚との関係にもこれはいえるような、というか、大人の世界のほうがもっといえることのような気がしています。

自分の間違いを知ったとき、それをすなおに認めて謝罪することは、大人になるにつれて難しくなるように想像するのですが、どうでしょうね?

まずは錯誤をしないために、どんなにつらいことがあっても、思い込みだけで行動しないよう心がけたいと思いましたが、北川のように最愛の人を失ったとき、それがはたして可能なのか、というところは口でいうほど簡単なことではないかもしれません。

しかしながら、錯誤があったとき、自分の過ちをすなおに認め、それを謝罪する気持ちを持つことは、自分の心がけ次第で可能だという気がします(許されない錯誤があるとはいえ)。

「復讐は自分の身を滅ぼすだけ」という考え方がありますが、北川は「復讐は自分の身だけを滅ぼしただけ」となってしまい、そこはやはり悲しく思い、「復讐をしてはいけない」ということを改めて思わされたところでした。

――とはいえ、僕は「復讐劇」が好き、というのが今回のオチ。

読書感想まとめ

恐ろしき錯誤-江戸川乱歩-読書感想まとめ  -イメージ

復讐は自分の身だけを滅ぼしてしまった話。

狐人的読書メモ

リドルストーリー。真相は藪の中。こんなときにはどうしても残された謎を推理してみたくなる。北川の言っていることは錯誤だったのか? あるいは真犯人は野本、井上、松村とは別にいるのか? ……越野? てか、今回の読書感想はかなり的を外していることを反省。

・『恐ろしき錯誤/江戸川乱歩』の概要。

1923年(大正12年)11月、『新青年』(博文館)にて初出。この作品には、江戸川乱歩の人間味を感じられるおもしろいエピソードがある。『What ho! What ho! this fellow is dancing mad! He hath been bitten by the tarantula.』というフレーズが作中冒頭に出てくるが、『おや、おや! こいつ気が狂ったみたいに踊っている。タラント蜘蛛に咬まれたんだな。』という意味になる。イギリスの俳優・劇作家 Arthur Murphyの喜劇、『All in the Wrong』の一節で、エドガー・アラン・ポーの『黄金虫』にも出ているという。

以上、『恐ろしき錯誤/江戸川乱歩』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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