琵琶湖/横光利一=琵琶湖は滋賀県の何分の1?琵琶湖はいずれ京都に?

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

琵琶湖-横光利一-イメージ

今回は『琵琶湖/横光利一』です。

文字数4000字ほどの随筆、紀行文。
狐人的読書時間は約12分。

小学校の頃の夏の思い出。あなたは何を想いますか?
見事な情景描写と滋賀県大津市の気風を感じることができます。

琵琶湖は滋賀県の何分の1? 琵琶湖はいずれ京都に?
琵琶湖雑学あります。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

横光利一さんが主に小学校5年生から卒業までを過ごした滋賀県大津市。著者が一番好きな季節であった夏について、美しく懐かしい思い出をつづった随筆、紀行文。

狐人的読書感想

琵琶湖-横光利一-狐人的読書感想-イメージ

「人は誰でも夏の思い出が一番多いのではないか? とくに小学校時代を過ごした琵琶湖の夏の景色は忘れがたいものだ」というようなことを横光利一さんは言っています(たしかに子供時代の夏休みの思い出というのは、大人になってからも特別な色を持ったもののように思いましたが、実際には一般的にどの季節の思い出が鮮明に残っているものなのでしょうね? 人によってかなり差があるのか、それとも普遍化できることなのか――ちょっと興味を持ちました)。

幼少時代の横光利一さんは、お父さんの転勤で引っ越しを繰り返していました。小学校時代の琵琶湖の夏の思い出となると、主に5年生から卒業までを過ごした滋賀県大津市の西尋常小学校(現.長等小学校)時代のことを指しているのでしょう。

しかしながら、横光利一さんの小学校時代の大半は三重県阿山郡東柘植村にあるといっても過言ではなく、本人自身も友人宛に「故郷といえば拓殖しかない」という旨の手紙を書き送っています(その頃のことをモチーフとした作品に『洋灯』があります)。

とはいえ、この随筆では『琵琶湖』を故郷の風景として賛美しており、過ごした期間は少なくとも、原風景として心に深く残るものであったことが伝わってきます(二十歳前後の夏によく帰省していたともあるのでその影響もあるのでしょうが)。

「あそこに見える家に、私おりますの」と婦人が言い、「あれはわしの女房の里や」と老人が言います。電車に乗って旅をしている途中、たまたま近くに乗り合わせた人々の、些細な一言です。たった一言ですが、望郷の想いといものが深く込められているのがわかり、人にとっての故郷というものが、たしかに特別な思い出であることを思わされました。

「唐崎の松は花よりおぼろにて」という松尾芭蕉さんの句がありますが、これは実際、唐崎の松を知らない者にこの句の美しさはわからないといいます。一つの見識として理解できるように感じました(見たことのないものをイメージさせる文章もある、という意味での一つの見識)。

「一般的には物足りなさを感じるかもしれないけれど、田舎の夏よりも都会の夏のほうが好き。その理由は、夏の美しさや楽しさは昼よりも夜にあると思うから。田舎は夜が早くすぐに寝なければならない。都会にいると、もう秋がくるのかと過ぎ行く夏が惜しまれる」、そして夏が一番仕事がはかどると、横光利一さんは言っているのですが、なんとなくわからないこともないような気もしますが、暑い夏に仕事がはかどる? ――ここは現代の感覚ではちょっと共感しにくいかなあ、という気も狐人的にはしましたが(どうなのでしょう?)。

「人は一年の終わりになると、それぞれ自分の好きな来年の季節を待つ」というところは単純に共感できましたが、一方で「待つ」という感覚は持ったことがないように思いました。学生さんの夏休みとか、春休みとか、冬休みとか(そういえば秋休みってないですよね)。お花見とか、海とか、食欲の秋とか、ウィンタースポーツとか。年代や趣味によって違うのかもしれませんねえ。逆に休みとか趣味とかがないと、季節を「待つ」という感覚はわかりにくいのかもしれません(一番好きな季節は?)。

舟に灯籠をかかげ、湖の上を対岸の唐崎まで渡つて行く夜の景色は、私の生活を築いてゐる記憶の中では、非常に重要な記憶である。ひどく苦痛なことに悩まされてゐるときに、何か楽しいことはないかと、いろいろ思ひ浮べる想像の中で、何が中心をなして展開していくかと考へると、私にとつては、不思議に夜の湖の上を渡つて行つた少年の日の単純な記憶である。これはどういふ理由かよくは分らないが、油のやうにゆるやかに揺れる暗い波の上に、点々と映じてゐる街の灯の遠ざかる美しさや、冷えた湖を渡る涼風に、瓜や茄子を流しながら、遠く比叡の山腹に光つてゐる灯火をめがけて、幾艘もの灯籠とうろう舟のさざめき渡る夜の祭の楽しさは、暗夜行路ともいふべき人の世の運命を、漠然と感じる象徴の楽しさなのであらう。

ちょっと長い引用ですが、この部分は今回の読書で一番印象に残ったところです。象徴的な記憶というものは、過去の記憶の中で一番整理力の強い場面から感じられるものだ、と横光利一さんは言っていて、僕も納得できる部分でしたが、それだけに上の引用部分の情景描写は印象的でした。楽しさとは反対の情景になりますが、最近読んだ国木田独歩さんの『少年の悲哀』を思い出します。楽しさであれ悲哀であれ、子供時代の記憶というものは、大人になってもその人の核を構成する大切な一要素なのだろうなと思いました。

「奥の院の夏の土の色の美しさと静けさは、あまり人々の知らないことだと思う」というのは三井寺の境内のことを言っているのですが、お寺や神社の境内というのは、まさに田舎の夏の象徴的な風景ではないでしょうか? 実際に「奥の院の夏の土の色の美しさと静けさ」を感じてみたことはないのですが、そんなイメージはあります。アニメとかの影響でしょうか?(具体的なタイトルはぱっと思い浮かびませんが)

「琵琶湖の色は年々歳々死んで行くように見えるが、あれはたしかに死につつあるに相違ない」とは横光利一さんが青年時代に読んだ田山花袋さんの紀行文の一節だそうですが、現代の環境問題を思わされるところがあります。高度成長期には琵琶湖の水質汚染が進んだとも聞きますし(いまではいろいろな環境保全の条例が施行されているようですが)。地球温暖化が琵琶湖の生態系に影響を及ぼすことも考えられるでしょうし。琵琶湖北方の福井県には敦賀原発や美浜原発などの原子力発電所も多数あるので、もしも原発事故が起きたらその汚染は……、というあたりも、東日本大震災を経た現在の日本では想像に難くないところではないでしょうか?

とはいえ、普段なかなか環境保全を意識する機会も少ないように思われ、そういった意味でも『琵琶湖』の読書には一つの価値を見出せるように感じます。時代の流れとともに、古き良き日本の風景が失われていくという点においては、如何ともし難いところは無きにしも非ずですが。

最後は滋賀県大津地方の人たちの人柄について著者が独自の分析をしているのですが、ここは単純におもしろい見方だと思いました。あまりいいようには書かれていないので、大津出身の方や現在住まわれている方はあまりおもしろくないかもしれませんが。

以下に書き留めておきます。

大津の街は琵琶湖に近いほど静かで人通りも少なく、湖から遠ざかるほど賑やかになっている。これを見るに湖の空気というものが、そこに住んでいる人々の心から活気を奪っているのであろう(前述のとおり、湖は年々沼のように生色をなくしていっているように著者は感じている)。湿気を孕んだ湖の空気は心身を胆汁質にしてしまう。怒りを感じず、隠忍自重の気風がある。絶えず飽和した気圧の中で生活する住民の心理は、乾燥した空気の中にいる住民よりも忍耐強くなる。胆汁質とは、他者を利用する、腹黒だとか陰険だとかいわれるもの。ぶくぶく膨れている人が多い。大津地方の人は、物事にあまり感動を表さない、むしろ他人には冷胆なところがある(そう思うのは私だけではないだろう)。

(……胆汁質て。大津の方、気分を害されたらごめんなさい。しかし横光利一さんはなんでこんなことを書いたのでしょうねえ……、まあ、本人が感じた間違いない実感なのかもしれませんが……、大津で何か嫌なことでもあったのでしょうか? とてもいい情景描写との落差が……)

読書感想まとめ

滋賀県大津市の懐かしく美しい情景と著者が分析するそこに住まう人々の気質が興味深いです。

狐人的読書メモ

琵琶湖-横光利一-狐人的読書メモ-イメージ

ちなみに琵琶湖にはいろいろな雑学があっておもしろい。まず古代湖(世界で3番目に古い湖。一般的に湖の寿命は数千年~数万年といわれているが、琵琶湖の歴史は400万年)。大きさは断トツの日本一(世界の淡水湖の中では129位)。滋賀県の6分の1(16%)が琵琶湖(滋賀県民いじりの鉄板ネタらしい。ディスってると思われないのかな? 仲良くなるためのネタにしてOK?)。唯一湖面に人の住む沖島がある。京都vs.滋賀の琵琶湖を巡る争い(「疏水感謝金払わんぞ」と「琵琶湖の水止めるぞ」戦争)。じつは「淀川水系一級『河川』」(ただし日本には「湖法」がないという管理上の名目である)。琵琶湖は北へ移動している(ゆえに50~100万年後には日本海と繋がってしまうという説がある)。前述の理由で琵琶湖は昔は三重県にあった、いずれは京都に? 滋賀県民は運転免許を取ったらまず琵琶湖を一周する(周囲長241km、車で一周約180km、およそ5時間。……ホントに?)。

・『琵琶湖/横光利一』の概要

初出不明。『心にふるさとがある3 心に遊び 湖をめぐる』[作品社、1998年(平成10年)]収録。美しく懐かしいふるさとの思い出。

・近江八景と琵琶湖八景

近江八景:
石山秋月(いしやま の しゅうげつ)―石山寺―、
勢多(瀬田)夕照(せた の せきしょう)―瀬田の唐橋―、
粟津晴嵐(あわづ の せいらん)―粟津原―、
矢橋帰帆(やばせ の きはん)―矢橋―、
三井晩鐘(みい の ばんしょう)―三井寺―(園城寺)、
唐崎夜雨(からさき の やう)―唐崎神社―、
堅田落雁(かたた の らくがん)―浮御堂―、
比良暮雪(ひら の ぼせつ)―比良山系―。

琵琶湖八景:
暁霧―海津大崎の岩礁―(高島市)、
涼風―雄松崎の白汀―(大津市)、
煙雨―比叡の樹林―(大津市)、
夕陽―瀬田・石山の清流―(大津市)、
新雪―賤ヶ岳の大観―(木之本町)、
深緑―竹生島の沈影―(長浜市)、
月明―彦根の古城―(彦根市)、
春色―安土・八幡の水郷―(近江八幡市・安土町)。

以上、『琵琶湖/横光利一』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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