狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『生きている腸/海野十三』です。
文字数12000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約30分。
不気味でグロテスクなSFホラーです。荒唐無稽なようでいて未来の医療を先取りしているような内容でもあります。腸に「チコちゃん」というネーミングセンスも光ります。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
医学生の吹矢はいつも人間の腸のことばかり考えていた。ある日、刑務病院の外科長である熊本博士を脅して、人間の生きている腸を手に入れる。腸はガラス管の中で特殊な溶液に漬けられて蠕動していた。
吹矢は何日もかけて少しずつ溶液を薄め、液をなくし、やがて腸は大気中で生きられるようになった。唇のような皮膚でおおわれ部屋を自由に散歩する生ける腸を吹矢は「チコ」と名づけて飼育するようになった。
ある日、吹矢は食料調達とチコのためのストーブを買うため、百数十日ぶりに外出した。熊本博士を訪ね、近々驚くべき研究論文を発表するつもりだと語り、ふと思い立って以前よく電話を取り次いでくれた病院の若い女交換手がどうしているかと尋ねた。彼女はずいぶん前に盲腸で亡くなっていた。
それから半年後、吹矢の部屋で白骨化した遺体が発見された。彼が帰ってきて嬉しくなったチコが首に巻きついてあやめてしまったのだった。チコは盲腸で亡くなった女交換手の腸だった。吹矢が成した実験も、その成果であるチコがどこへ消えたのかも、もはや知る者はいない。
狐人的読書感想
生きている腸との奇妙な同棲生活って、字面だけでグロいというか不気味ですよね。人間はいろんな生き物をペットにしたがりますが、生きている腸をペットにしたい、というのはあきらかに異質な感じしますね。まったく気持ちがわかりませんが、ふと、ナマコとか飼ってる人なら少しくらいは共感できたりするんだろうか……なんて想像してしまいました(なわけないか)。
腸といえばそれは人間の一器官であって生き物とは定義できない気がするのですが、しかし細胞の一つひとつが生き物であるってことも言えるのかなあとかも思います。iPS細胞でしたっけ、いろいろな体組織に変化させることができる細胞って。あれで腸をつくってガラス管に入れてみたら、本作のような「生きている腸」が再現できるのかなあとか想像してしまいます。
本作は荒唐無稽なSFホラーだと思ったのですが、そんなふうに考えてみると意外と現代なら実現できそうな感じがして、未来を先取りした小説のようにも感じられて、海野十三さんの想像力ってなんかすごいような気がしてくるんですけれども、どうでしょうね?
これもSFっぽい話ですが、一つひとつの細胞が記憶を保持している、なんて話も聞いたことがあるんですよね。臓器移植をした人の食べ物の嗜好が、前の臓器の持ち主みたく変わってしまった、みたいな。
そうなると、チコが飼い主である吹矢に愛情を抱き、その愛情表現のために彼を殺めてしまったというのも、なんとなく納得させられてしまうお話なんですよね。
まあ一方からしたら愛情表現のコミュニケーションだったとしても、一方では命にかかわる行為になってしまい、そこに異生物どうしでは成立し得ないコミュニケーションの皮肉みたいなものが描かれているのかもしれませんが……。(猛獣と人間の関係みたいな)
しかし、なんで腸の名前が「チコちゃん」だったんでしょうね? 吹矢と女性電話交換手(……ひょっとして智子ちゃん?)との関係性も気になりますし、消えたチコちゃんがその後どうなったのかも気になるところです。
(そこらへん、もっと掘り下げてリメイクしたら、もっとおもしろいものが書けるかもしれない、という創作メモ)
生きている腸がなかなか興味深いと思った、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
蠕動するチコちゃんとの奇妙な同棲生活?
狐人的読書メモ
・創作のモチーフとしてもおもしろいかもしれない。
・『生きている腸/海野十三』の概要
初出不明。『十八時の音楽浴』(早川文庫、早川書房)収録。荒唐無稽なSFホラーのようでいて、意外と未来の医療を先取りした、想像力豊かな小説なのかもしれない。
以上、『生きている腸/海野十三』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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