復讐/夢野久作=彼女は復讐できたのか、できなかったのか…?

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

復讐-夢野久作-イメージ

今回は『復讐/夢野久作』です。

文字数26000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約61分。

話はおもしろいけれど、どういうことなのかわかりません。という類の夢野久作さんの短編小説です。犯人はいたのかいなかったのか、主人公は復讐できたのかできなかったのか、わかりません。

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

昭和二年、二月中旬、ある山麓の村近くの山裾に藤沢病院が建っていた。二十歳の品夫は生まれて間もなく藤沢家で養われることになり、いま薬局の会計の仕事を忙しくこなしていた。前院長である養父はすでに亡く、やはり養子である甥の健策が後を継ぎ、近く品夫は彼と結婚することになっている。

……品夫……
……復讐……

夜の十一時、品夫が仕事を終えた頃、患者控室で健策と黒木が話している会話が、品夫の耳に聞こえてくる。黒木はこの病院に静養に来ている患者で若い医院長と懇意になり、よく無二の話し相手にされていた。品夫は二人の会話を立ち聞きする。健策は婚約者である品夫が復讐に取り憑かれていることを黒木に相談していた。

二十年前、品夫の母は、品夫を産むと産褥熱で亡くなってしまった。品夫の父である実松源次郎はそれからまもなく、趣味の狩猟の最中崖から転落して亡くなった。源次郎は狩人よりもその土地になれていたので、ただの転落事故とは考えにくかった。さらに彼は相当の財産を持っていたとの話だったが、財布や家を探してみてもそれらの金品は見つからなかった。源次郎は甥の当九郎という美青年を可愛がっていたが、当九郎はその事故が起こる少し前に「アメリカに行く」という置き手紙を残し行方不明となっていた。

これらの事実から品夫の父をあやめたのは当九郎だとの噂がある。かたきはきっと村に戻ってくる、そしてその復讐をはたす、それまで結婚は延期したいと品夫は健策に話したのだ。

健策から相談された黒木は自分の考えを語る。この話は一つのようで三つの事件が含まれている。

・実松源次郎の転落事件
・源次郎の貯金紛失事件
・甥、当九郎の行方不明事件

すべてを一つの事件と見なすといかにも甥、当九郎が犯人なようにも思えるが、それはあくまでも噂であり、真実はまったく違うものなのではないか。つまり、当九郎は本当に青雲の志を抱いてアメリカに行ってしまったのであり、貯金は遊行費などとして源次郎が散財したのであり、源次郎は強迫観念のような幻覚を見て崖下に転落してしまったのではないか。健策が養父から聞いたという話の中には、たしかに源次郎の(遺伝性の)精神異常を疑わせるところがあった。

その夜中、品夫は眠っている黒木の胸にメスを振り下ろした。黒木は「……むむッ……チ……畜生ッ。もう……来……た……か……」と言い残してこと切れた。

狐人的読書感想

話はとてもおもしろかったのですが、結局どういうことだったのかまったくわかりませんでした。

黒木の最期の言葉から彼が品夫の父親の命を奪った犯人だったのだとは思うのですが、なんで品夫にはそのことがわかったんでしょうね?

あるいはこの話の主眼はそこにはないんですかね?

品夫の家(実松家)の血筋には精神病の遺伝があり、黒木の推理がじつは本当でそれを認めたくない品夫が錯乱気味に黒木にメスを振り下ろしてしまったのならばわかりやすかったのですが、黒木の最期の言葉によって品夫の復讐が正当に達せられたことが示されているように感じます。

でもそうなるといったいどこで品夫は黒木が復讐の相手だとわかったのかが理解できません。物語の中には描かれていないのだと考えると、この話の主眼はなんだったのかな……となります。

(……ひょっとしてミステリーではなく、ホラーとして読むのが正解なんでしょうか)

品夫にはやはり精神異常があり、黒木の話にショックを受けて錯乱して彼にメスを振り下ろし、そしてたまたま黒木は犯人だったということなんですかね?

夢野久作さんそういうの多い気がしますね。

(いまさらですかね……?)

そこさえ気にしなければ(気にするからこそ?)とても楽しめた、今回の狐人的読書感想でした。

読書感想まとめ

彼女は復讐できたのか、できなかったのか…?

狐人的読書メモ

・そういうのはありなのか、なしなのか……。

・『復讐/夢野久作』の概要

1930年(昭和5年)『新青年』にて初出。推理小説ではなくて幻想怪奇小説(たぶん)。おすすめはひとを選ぶかもしれない。

以上、『復讐/夢野久作』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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