狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『人の顔/夢野久作』です。
文字数6000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約15分。
孤児の幼女がある家庭の養女になる。母親もはじめは養女を可愛がっていた。しかし彼女はやがて幼女に睡眠薬を飲ませるようになる。その理由は彼女があるものを見てしまったからなのだが……
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
孤児院で育ったチエ子は五つの年の春、ある船の機関長の家庭に養子にもらわれた。奇妙な子で、空の雲や壁の汚れを一心に見つめる癖があった。しかし夫婦はそんなこと気にせずチエ子を可愛がっていた。
秋になり、外国航路についている父親からまっ赤な鳥の羽の外套が届き、母親とチエ子はそれを着て映画を見に出かけた。その帰り道のこと、チエ子はふいに立ち止まり、星空を指さしていろいろな人の顔が見えると言い出した。
お父様の顔、そしてお母様が仲よくしている保険会社のおじ様の顔……。
母親は急に取り乱し、チエ子を置き去りにして駆け出してしまった。チエ子は泣く泣く母親のあとを追って家に帰り着いた。以来母親はチエ子のことを可愛がらなくなった。夕方になるとそわそわし出し、チエ子に睡眠薬を飲ませて一人で寝かせるようになった。
その翌年の二月、チエ子の父親が長い航海から帰ってきた。母親とチエ子にあの外套を着て映画を見に行こうと言い出した。母親は頭が痛いと言うので、父親はチエ子と二人で映画に出かけた。
帰り道でチエ子はふいに立ち止まった。やはり星空を指さして見つめながら言った。おじ様の顔がお母様の顔とキスしてる……。父親はそのおじ様は誰なのかとチエ子に聞いた。チエ子は、おじ様はずっと前から毎晩うちにいらっしゃって、お母様と一緒に寝ているのだと父親に答えた。
チエ子が空から目を父親に移すと、父親は仁王立ちでチエ子を睨みつけていた。チエ子は泣き出しそうな顔をして、前はお父様の顔があったのよと言い訳するように言うしかなかった。
狐人的読書感想
見えないはずのものが見える子供のホラーなのかと思いきや、悪気のない子供が父親に母親の浮気をばらしてしまうという、ある意味ホラーな展開でおもしろかったですね。
その後の家庭の修羅場を思うと、笑い話にはできそうにありませんが……。
その後チエ子に害が及ばなかったことを祈りたいところですが、疫病神的な扱いをされてしまいそうな流れですね……。子供に罪はないはずなので、孤児院に逆戻りという可能性はあまり考えたくありませんが、まあこの母親と一緒では幸せにはなれないかもしれませんし……悩ましいところです。
父親が浮気した母親を許し、母親は自分の行いを悔い改めて、チエ子を前のように可愛がってくれる未来を想像したいところですが、なかなかその想像がむずかしく感じてしまうのは、ひょっとして僕だけ?
冒頭では、チエ子が妖しい魅力を具えているようにも見受けられる描写があったので、あるいはチエ子が確信犯的に母親の浮気を父親に暴露する展開でもおもしろそうですが、しかし無邪気な子供が悪気なく暴いてしまったとしたほうがリアルな怖さがある気がします。
子供がどこか一点を見つめていて、何か見えないものが見えているんじゃないかと思われるような話は、けっこうありますよね。
それは霊感なのかもしれませんし、イマジナリーフレンドみたいなものなのかもしれませんし、なかなか興味深く思ったりします。
チエ子が壁の汚れや夜空の星に人の顔を見てしまうのは「シミュラクラ現象」ですね。人の脳には、三つの点が集まっているのを見ると、それを人の顔だと判断してしまう働きがあるそうです(心霊写真の多くはこれなんだとか)。
ともあれリアルに怖い話だった、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
リアルなホラーである意味普通に怖い。
狐人的読書メモ
・なぜ人の顔が一人ひとり違うのか? という疑問はけっこう興味深い。顔の美醜は本来的な生存競争には関係ないはずなのだが、現在の人間社会においてはこれがけっこう生存の有利不利につながっていると思えるのですよね。
・『人の顔/夢野久作』の概要
1928年(昭和3年)3月、『新青年』にて初出。リアルなホラーでおもしろい……というか恐い。
以上、『人の顔/夢野久作』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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