狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『ありときのこ/宮沢賢治』です。
文字数2000字ほどの童話。
狐人的読書時間は約4分。
歩哨はそれを見て震撼した。北緯二十五度、東経六。そこへ一夜にして現れた巨大建造物。その正体は……? 働かないものは悪なのか? しかし働かないものが長く社会を存続させる矛盾。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
朝、苔一面に霧が降る中、蟻の歩哨が立っている。すると向こうから一匹の蟻の兵隊が走ってくる。歩哨が呼び止めると、兵隊は伝令だと言う。歩哨はスナイドル式銃剣を突きつけたまま、兵隊の身なりを上から下まで調べ「よし、通れ」と通す。
霧の粒が小さくなり、草木が水を吸い上げる音があっちこっちに聞こえだすと、うとうとしている歩哨のところに二匹の蟻の子供らがやってきて「あれは何?」と聞く。歩哨はそれを見て震撼する。子供たちの手柄をほめて、それぞれ中佐と陸地測量部までつかいに出す。「北緯二十五度、東経六。目的のわからない工事ができました」
やがて子供たちが戻ってくる。一匹は「あれはきのこというものだって。なんでもないって。中佐は笑ってたよ」。もう一匹は「すぐになくなるって。あんなもの地図に入れてたら、陸地測量部など百あっても足りないって」。歩哨はきまり悪そうにする。
そうこうするうちにも新しいきのこが生えてくる。二匹の子供の蟻らはそれを指さして笑い合う。霧の向こうから朝日が昇り、シダもスギゴケもぱっと青くなると、蟻の歩哨はまたスナイドル式銃剣を南のほうへ構えるのだった。
狐人的読書感想
すごくいいなと思いました。
初出時のタイトルが『朝についての童話的構図』となっていますが、そのまま朝の風景を童話的に描写した作品のようです。
『向こうからぷるぷるぷるぷる一ぴきの蟻の兵隊が走って来ます。』
――ぷるぷる走ってくるって、なんかかわいいですね。
『霧の粒はだんだん小さく小さくなって、いまはもう、うすい乳いろのけむりに変わり、草や木の水を吸いあげる音は、あっちにもこっちにも忙しく聞こえだしました。』
――「草や木の水を吸いあげる音」を人間が意識することはあまりないように思います。
そのあたりの想像力はすごいなあ、という気がします。
物語としてもユーモラスで面白かったです。
非常に良質なきのこ文学だと思った(今回の感想ではきのこについてまったくふれてませんが……)、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
2:6:2の法則って知ってる?
狐人的読書メモ
・蟻はなかなか興味深い生き物。自重の何倍もの物をくわえて運ぶことができるし。「働きアリの法則(2:6:2の法則)」というものがある。
・「働きアリの法則」の法則は、100匹のアリのうち、20匹はよく働き、60匹は普通に働き、残りの20匹はまったく働かないという集団構成の特徴を表す。
・これは人間社会にも当てはまるといわれている。
・すべてのアリが一生懸命働くよりも、働かないアリがいたほうが、集団としては長く存続できるのだという。
・ちなみに、働くアリよりも働かないアリのほうが長生きするという。
・『ありときのこ/宮沢賢治』の概要
1933年(昭和8年)『天才人』にて初出。初出時のタイトルは「朝に就ての童話的構図」。宮沢賢治生前発表の最後の童話。朝の一風景が童話的に描写(スケッチ)されている。緻密な自然観察力。
以上、『ありときのこ/宮沢賢治』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
(▼こちらもぜひぜひお願いします!▼)
【140字の小説クイズ!元ネタのタイトルな~んだ?】
※オリジナル小説は、【狐人小説】へ。
※日々のつれづれは、【狐人日記】へ。
※ネット小説雑学等、【狐人雑学】へ。
※おすすめの小説の、【読書感想】へ。
※4択クイズ回答は、【4択回答】へ。
コメント