狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『黄金の鳥/グリム童話』です。
文字数7000字ほどのグリム童話。
狐人的読書時間は約18分。
兄は期待され、弟は期待されない。でもプレッシャーがないから弟は善く生きられることも。善良さは人を惹きつけ助力を得る。それがカリスマ。リーダーには三男が多いってホント?
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
王様の宮殿に金のリンゴが実る木があった。ある日、そのリンゴがひとつ盗まれていた。王様は三人の王子を見張りに立てた。第一と第二の王子は担当の夜に居眠りをしてしまった。王様に期待されていなかった第三の王子は、寝ずの番の末その正体をつかんだ。リンゴ泥棒は黄金の鳥だった。王子が射た矢は鳥の羽をかすめた。金の羽が一枚落ちてきた。
金の羽はすばらしかった。王様は黄金の鳥がほしくなった。三人の王子を探索の旅に出すことにした。順番に旅立った三人の王子は森でキツネに出会った。キツネは「村に二軒の宿があります。明るく楽しげな宿ではなく、ぼろぼろの悪い宿に泊まりなさい」と助言した。第一と第二の王子はこれを無視した。良い宿の居心地のよさにおぼれ、探索を断念した。
第三の王子はキツネの助言に従った。しかしつぎの「黄金の鳥は木のカゴに入れたままにし、金のカゴに移してはいけません」という助言に背いてしまった。黄金の鳥には金のカゴがふさわしいと思ったのだ。黄金の鳥はけたたましく鳴き、城中の者を目覚めさせた。王子は捕えられてしまった。
黄金の鳥の城の王様は「命が助かりたければ、黄金の馬をつれてこい」と彼に命令した。キツネは「黄金の馬には金の鞍ではなく、木の鞍をのせてください」と助言し、王子をまた尻尾に乗せて運んだ。ところが彼はまたしてもキツネの助言に背いてしまった。黄金の馬に木の鞍はいかにもあわれに思えたのだ。馬のいななきが馬丁を起こし、王子はまた捕まってしまった。
黄金の馬の城の王様は「命が助かりたければ、黄金の城の美しい姫をつれてこい」と彼に命令した。キツネは「姫に両親への別れの挨拶をさせてはいけません」と助言し、王子を尻尾に乗せた。しかし彼は、泣いて頼む姫をかわいそうに思った。そしてまた捕まった。
黄金の城の王様は「命が助かりたければ、窓の外に見える山を8日で取り除け。そうすれば褒美に姫もやろう」と彼に命令した。キツネは王子にあきれながらも、その山を取り除いた。キツネはさらに黄金の鳥、黄金の馬、そして美しい姫をすべて手に入れる助言をした。それは一度それぞれの王様にそれぞれのものを渡すふりをして、風より速い黄金の馬に乗って逃げることだった。王子はすべてを手に入れた。
キツネは「お手伝いのご褒美に私の首をはねてください」と王子に頼んだ。しかし王子にそんなことはできなかった。キツネは別れ際に「吊るし肉を買わないように、井戸の端に座らないように」と最後の助言をした。
王子は帰り道の途中であの村に立ち寄った。すると、兄たちが絞首台にかけられていた。兄たちは宿で財産を使い果たし、悪事に手を染めたのだ。王子は兄たちの自由を買った。助けられた兄たちは弟を巧みに井戸の端に座るよう誘導して突き落とした。そして黄金の鳥と馬、美しい姫を王宮へと連れて帰り、父王へ自分たちの手柄だと報告した。
第三の王子はまたまたキツネに救われた。そして乞食の姿に身を隠して王宮へ戻った。黄金の鳥と馬、美しい姫は、悲しみに暮れて生気を失っていたが、彼が戻ってくると再び生気を取り戻した。兄王子たちの脅しを払いのけ、姫は事の次第を王様に語った。ふたりの兄王子は処刑され、第三の王子は姫と結婚し、王位を継いだ。
その後、彼はあの森でキツネと再会した。キツネはもう一度「私の首をはねてください」と懇願した。彼はついにキツネの願いを聞き入れ、その首をはねた。するとキツネにかかっていた魔法が解けた。キツネは姫の兄だった。魔法で獣に変えられていたのだ。彼らは幸せに暮らした。
狐人的読書感想
キツネが大活躍でしたね。狐人的にとても楽しめました。
狐は不思議な魅力のある動物ですよね。
古今東西、狐は頭が良く、話ができて、神獣や妖怪として扱われてきました。どこの国にも神話や童話に狐が超常的な存在として登場していておもしろいです。人間の集合的無意識みたいなものを実感するところなんですよね。
主人公のピンチに必ずキツネが助けてくれる、一見ご都合主義的ですが、漫画もアニメも映画も、たいていの物語が大なり小なりご都合主義ではあるんですよね。そういった意味では王道ストーリーといえるグリム童話かもしれません。
ロールプレイングゲーム的というか、漫画チックというか。
とにかくこの話の流れは単純におもしろいと感じられます。
さて、そんな本作の教訓は
「正直者は救われる」
といったところでしょうか。
第三の王子はキツネの助言に何度も背くことになりますが、その理由は二人の兄たちのように自分勝手で傲慢なものではありません。もののあわれ(趣深さ、同情)を感じる心からくるものでした。
キツネも「やれやれしょうがないな」と思いつつも、そんな王子に惹かれ、助けずにはいられなかったのでしょうね。
善良に生きている人には魅力があり、その魅力が人を惹きつけ、多くの助力を得られる――ひとつのカリスマを思わされる人格です。
物語の大筋としては「愚兄賢弟タイプ」(愚かな兄が失敗し、賢い弟が成功する)の物語といえるでしょう。
「愚兄賢弟」は、初子が甘やかされがちで努力や向上心に欠け、次男三男がそのぶん自立心に富みしっかりしていることのたとえですが、日本では逆の「賢兄愚弟」のイメージが強い気がしますね――しっかり者の兄、甘えん坊の弟みたいな。
そういえば、国のトップや企業の経営者、スポーツチームの監督などは三男が多いという話がありますね。自立心に富みしっかりしているから、あるいは甘えん坊だからこそプレッシャーに強いから、リーダー的資質があるのだとか。
(実際、リーダー的立ち場には三男が多い――ということは必ずしもいえないないようではありますが)
『黄金の鳥』の物語でも第三王子は全然お父さんである王様に期待されておらず、しかも善良ではあってもしっかり者とは言いがたい性格をしていたように思い、そういった意味では「賢兄愚弟」の物語なのかもしれません(兄たちもずる賢かったですし……)。
いろいろ連想できて楽しく、王道ストーリーのおもしろさが再認識できて勉強になったような、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
善良に生きる、そしたら狐が助けてくれる?
狐人的読書メモ
・このストーリーラインはいろいろな創作のモチーフになりそうな気がして、覚えておきたい物語だと思った。
・『既存秩序の揺らぎ・体制維持のための規範の改善』のメタファーとして、黄金の鳥によるリンゴ泥棒が描かれている――との精神分析的な読み解き方もおもしろいと思った。
・『黄金の鳥/グリム童話』の概要
KHM57。原題:『Der goldene Vogel』。まあまあ有名な話みたい。1987年にアニメ映画化(「東映まんがまつり」)されているらしい(マッドハウスもかかわっているらしい)。
以上、『黄金の鳥/グリム童話』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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