歯車/芥川龍之介=気分転換できる何かがあればいいんだけどね。

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

歯車-芥川竜之介-イメージ

今回は『歯車/芥川龍之介』です。

文字27000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約75分。

いやなことがある。イライラする。人や物にあたる。自己嫌悪する。また憂鬱になる――負のスパイラル。暗い気持ちになったとき、気分転換できる何かがあればいいんだけど、そういうのある?

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

僕は知人の結婚式へ向かう途中、レインコートの幽霊の話を聞く。するといたるところでレインコートを見かけるようになる。結婚式が終わり、ホテルの部屋に戻り、うまく書けない小説に悪戦苦闘していると、電話が鳴る。僕の姉の娘からだった。姉の夫がその日の午後、列車にはねられ亡くなった。

ホテルの部屋で目を覚まし、ベッドをおりようとするとスリッパが片方しかない。それは僕にとって、いつも恐怖や不安を与える現象だ。ホテルにいても街に出ても憂鬱でイライラすることばかり。日暮れ、精神病院からの帰り、立ち寄った本屋で子供向けのギリシャ神話の本を見つけて、打ちのめされる。背中に絶えず復讐の神を感じる。

鬱々とする夜。どうにか小説を書き上げていく。見るもの、出会う人、話す内容――すべてがうっとうしい。

家に帰る。しばしの安息。が、何も去ったわけではない。まだ半透明の歯車は見えるし、その数は増えていき、だんだん急に回り出す。二階に仰向けになり、目をつぶったまま、激しい頭痛をこらえる。誰かが慌ただしく二階へのぼってくる。妻だった。どうした、と僕は聞く。あなたが……、と妻は言う。

それは僕の一生の中で最も恐ろしい経験だった。僕はもうこの先書き続ける力を持っていない。生きているのはただ苦痛。誰か僕が眠っているうちにそっと――。

狐人的読書感想

うむ。病んでいる小説ですね。暗い気持ちや鬱々とした気持ち、不安なんかがすごくよく伝わってきます。

レインコートをはじめとして、不吉や不安を感じる象徴的な物事が連続して現れてきて、強迫観念っぽいんですよね。

統合失調症とかの症状も読み取れるみたいです。

タイトルの『歯車』も閃輝暗点じゃないかといわれていて、片頭痛の前兆として回転する輪っかのようなものが見えたりする病気なんだとか。

歯車以外にも、ずっと誰かに見られているような感覚であったり、あるいは知人が自分のドッペルゲンガーを見たという話を聞いたり。

さすがにそういった病的な経験はなくて、実際精神を病んでみなければ見えない錯覚や苦しみがあるのだと感じますが、何か悪いことが連続で起こっている気になったりするのは、ちょっとわかるように思えます。

いやなことがあって、憂鬱な気分になって、周りが全部腹立たしく思えて、人や物にあたって、自己嫌悪に陥ったり、それでまた鬱々して、また人や物にあたって――こういう負のスパイラルってたしかにあるんですよね。

そこから抜け出せないかもしれないと思うと、本当に絶望的な気分になります。そういうことって誰にでもあるような気がします。

そういうときには何か気分転換できるもの、趣味とか家族・友達・恋人とかおいしい食べ物だったり好きな音楽だったり――あればいいなと思うのですが、そういうものって自分にはないような気がします。

芥川龍之介さんにもなかったのかな。

(みなさんにはありますか?)

憂鬱なとき気分転換できる何かがほしいと思った、今回の狐人的読書感想でした。

読書感想まとめ

気分転換できる何かがあればいいんだけどね。

狐人的読書メモ

・悪いことばかりじゃない。良いことだってあるから。生き続けることができるのだと思う一方。悪いことも良いこともないから。生き続けるしかないのかもしれない。なんて思ったりもする。

・『歯車/芥川龍之介』の概要

1927年(昭和2年)『大調和』にて初出(第一章のみ)。残りは遺稿として発見された。『河童』『或阿呆の一生』『侏儒の言葉』と並ぶ晩年の代表作。著者の晩年の苦悩が描かれている。著者の最高傑作との評価も多い。

以上、『歯車/芥川龍之介』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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