狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『つぐみのひげの王さま/グリム童話』です。
文字3700字ほどのグリム童話。
狐人的読書時間は約10分。
空前絶後の美人。ゆえに娘は傲慢だった。人を平気で笑い者にした。しかし娘は人の心の痛みを知る。私はあなたの妻になる価値がありません。人は変われる、やりなおせる。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
ある王様に、はかり知れないほど美しい娘がいた。しかし娘は気位が高く傲慢だった。求婚者があると意地悪く笑い者にして追い返した。「まあ、つぐみのくちばしみたいなあごね」。つぐみのひげの王様もそのうちの一人だった。
父王はそんな娘に激怒し「つぎ城にやってきた物乞いを娘の夫にする」と宣言した。数日後、娘は物乞いと結婚させられ、城を追い出された。物乞いと娘は森、草原、大きな町を通り過ぎた。
そのたびに娘は「あれは誰のものなの?」と聞いた。物乞いは「つぐみのひげの王様のものさ」と答えた。娘はつぐみのひげの王様と結婚しなかったことを何度も後悔した。
物乞いと娘は小さな小屋で生活を始めた。娘は火を起こすこともかごを作ることも糸を紡ぐこともうまくできなかった。物乞いが瀬戸物を売る商売を始めると、娘はそれを市場で売った。
人々は娘の美しさに惹かれ、瀬戸物はとてもよく売れた。が、それも長くうまくはいかなかった。娘の選んだ売り場が悪く、通りすがりの騎兵の馬が瀬戸物をこなごなに踏み砕いていったのだ。
物乞いの夫は何もできない妻に呆れて、ある城の台所女中として娘を送り込んだ。娘は城で一番汚い仕事をして、残飯をもらって物乞いの夫と二人、暮らし続けた。
ある日、城で第一王子の結婚式が行われることになった。娘は悲しい心で運命を思い、かつての自分の傲慢さを呪いながら、華やかなパーティーを広間の入り口から遠く眺めていた。
娘はいつものように残飯の入った壺を腰につけ、物乞いの夫が待つ家に帰ろうとした。そのとき突然、第一王子が娘の前にやってきた。王子は娘の手をつかんで踊り始めた。
娘はパニックになった。その王子が、かつて自分がさんざん笑い者にしたつぐみのひげの王様だとわかったからだ。娘は身をよじって逃げようとした。残飯の壺が落ちて中身が床に広がり、会場にあざけりの笑いが起こった。
なお走り出そうとする娘に王様はやさしく言った。
「こわがらないで。君の物乞いの夫は私だよ。全部、君に心を入れ替えもらうための演技だったんだ。私は君を愛している」
娘は激しく泣いた。
「私は大きな間違いをしました。あなたの妻になる価値がありません」
つぐみのひげの王様はゆっくり首を振った。
「大丈夫。悪い日々は過ぎた。さあ、私たちの結婚式を祝おう」
こうして本当の喜びが始まった。
狐人的読書感想
「はかり知れないほどの美しさ」をもつというのは、いったいどんな気分なんでしょうね?
みんながちやほやしてくれて、なんでも言うことを聞いてくれて、この世に自分の思い通りにならないことなんてない――傲慢になってしまうのも無理からぬことだという気がします。
人の心の痛みを知らなければ、本当に人にやさしくすることはできず、それを教えてくれる人は自分を愛してくれる人であって、そんな人が周りにいてくれるというのはとても幸せなことなのかもしれません。
つぐみのひげの王様はさんざん笑い者にされてもなお、娘に恋する気持ちを捨てることはできず、自ら物乞いとなり貧しい生活を送ってまで娘の心を入れ替えようとします。
娘もはじめは自分が貧しくなったことでつぐみのひげの王様の富の大きさを実感し、惜しいことをした、逃した魚はでかかったと、利害のみで自分の行いを後悔しますが、自分がなんの仕事もうまくできず、人に笑われる心の痛みを知って、真に自分の傲慢だったことを悔いるようになります。
人は変われる。
悔い改めてやりなおすことができる。
そんなことを教えてくれるような、ちょっと感動してしまったグリム童話でした。
ところで本作の主人公は、美しさゆえになんの苦労も知らない美人として描かれていますが、美人には美人ゆえの苦労があるってたまに聞きますよね。
女友達ができにくいとか、男に媚びてると思われがちだとか、嫉妬されたりじつはモテないとか――いろいろあるみたいでわからなくはないのですが、でもやっぱり持つ者の贅沢な悩みというか、持たざる者としてはあまり共感はできないんですよね。
「じゃあつぎは、美人とブス、どっちに生まれたい?」
って質問したら、やっぱり美人の人もまた美人に生まれたいと思うだろうし、本作の主人公も美人だから瀬戸物がよく売れて、ひょっとして王様が故意に邪魔しなければ、それで大成功を収めるアナザーストーリーもあったんじゃなかろうか……なんて想像したりします。
やっぱり美人は得だよな、と思った今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
人は変われる、やりなおせる。
狐人的読書メモ
・とはいえつぐみのひげの王様は、娘の人生を自分勝手にコントロールしているともとれる。
・それはやっていいことなのか悪いことなのか判断に迷う。
・ただ多かれ少なかれ、人は好きな人の人生に干渉することを望み、それが正しいのか正しくないのかは、干渉された人間にしか決める権利はないという気がする。
・本作の場合、娘が納得しているのだから、きっとそれでよかったのだといえそうな気がする。
・『つぐみのひげの王さま/グリム童話』の概要
KHM52。原題:『König Drosselbart』。いい話だと思った。もっと有名でもいいような気がしたのだけれど、この話って有名?
以上、『つぐみのひげの王さま/グリム童話』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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