狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『涙のアリバイ―手先表情映画―/夢野久作』です。
文字4500字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約13分。
人と話をするとき、手、どうしてる? テーブルの上に置いてると、相手に心を許しているサイン。髪にさわると、話に興味が薄れてきてる。手は口ほどに物を言う手先表情映画ってどう?
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
夜の九時十五分、槻田が書斎の机に向かうと、女中がコーヒーと帝劇の案内状を持って入ってくる。女中はすぐに退室し、槻田は案内状の「出席」の下に署名して、その流れのまま、衣服の各所に仕込んでいた宝石をインク壺の中に沈める。
女中が今度は探偵の名刺を持って現れる。探偵を部屋に通す槻田。探偵は今日の晩餐会で盗まれたものを取り戻しにきたのだ。探偵に追求される中、槻田は身の潔白を表明し、しかしいざとなれば……ポケットのピストルを握り締める。
槻田と探偵が出て行ったあとの書斎。槻田の妻が入ってきて、机の上の帝劇の案内状に目を止める。自分の署名を書き加え、「欠席」の文字を消そうとしてペン先のインクが切れる。つけ足そうとして、インク壺に何か落ち込んでいるのに気づく。ハッと引き出しからピンセットを取り出し、インクの中にさし入れると……中から宝石が出てくる。妻は泣きながら、宝石をハンカチにくるみ、懐に入れて書斎を立ち去る。
誰もいなくなった槻田の書斎を探偵が探る。机の上の案内状に、さっきはなかった妻の署名、インクに濡れたピンセット――。
ピアノのある部屋で。探偵は槻田の妻を追及している。妻は宝石の包みを差し出す。探偵は槻田と妻の共謀を疑ったが、妻の嘆き悲しむ態度から、彼女が夫をかばったのだと確信する。探偵が女のわななく白い手を握り、「御安心なさい」と慰撫すると、その上に涙が滴りかかるのだった。
(という話を、字幕なし、説明なし、人物の表情も映さず、手だけを中心に、その他の物体は手の背景として映す――手先表情映画はどうだろう? という実験的試み)
狐人的読書感想
「目は口ほどに物を言う」(目は、口で説明するのと同じくらい、相手の人に気持ちを伝える)とは言いますが、「手は口ほどに物を言う」ってこともあるんですかね?
「英語が話せなくてもジェスチャーでなんとかなる」みたいな、手の動きで気持ちを伝えることってかなり可能っぽいですよね。
誰かと話しているとき、人は無意識に手を動かしていることがあって、やはりそこからはさまざまな感情が読み取れるんだそうです。
調べてみると、
・手をテーブルの上に置く……手のしぐさが心情を語る、ということを、人は本能的に理解していて、だから相手に見える位置に手を置くのは、「隠し事がない」「相手に心を許している」サイン。
・手をテーブルの下やポケットに隠す……やましいこと、隠し事がある。
・手を広げている……心がオープンな状態。
・こぶしを握っている……怒り、不安、緊張の表れ(トイレを我慢している?)。
・手や指をよく動かす……落ち着かない状態。
・テーブルを指で叩く……いら立ち、怒り、攻撃性。
・口を覆う……やましいこと、隠し事がある。
・手で自分の体(肩、腕、胸、お腹)にさわる……安心感がほしい。不満や退屈を感じている。
・手で髪にさわる……話題への興味が薄れている。退屈、無関心の表れ。女性がやっていると、男性は「自分に好意がある!」とカン違いしている場合があるので、要注意。
・指で唇にふれる……ストレスから逃げたい。
といった感じで、言われてみるとけっこう物語ってますね、手って。
本作は「実験的作品」とのことですが、おもしろい試みだと思いました。手だけを映した映画……ショートフィルムで……シュールな雰囲気を醸し出しつつ……さらに驚きのしかけなんかあれば、一部にウケそうですよね。
(まあ、その驚きのしかけが難しそうですが)
ジャンルはやっぱりミステリーだろうなって気がします。
手が物語る映画、あってもいいように思いますが……あるんですかね?
趣味やなんかで映画を撮る人におすすめしてみたいような、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
映画を撮る人におすすめ?手先表情映画。
狐人的読書メモ
・ストーリーはありきたりだが、手を中心とした独特の雰囲気を楽しめる作品だった。
・『涙のアリバイ/夢野久作』の概要
1928年(昭和3年)11月『猟奇』にて初出。副題は『手先表情映画』。登場人物の手の動きのみで描く手法、実験的作品。
以上、『涙のアリバイ/夢野久作』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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