狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『坂道/新美南吉』です。
文字5000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約15分。
ある状況がある。二人の人物がいる。一人は生きて、一人は命を落とす。その命の分水嶺となったのは、ほんのささいな思いつきだった。人間は常に高圧電流が通う檻の中にいる。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
春休みが終わり、故郷に帰省していた草野金太郎は、これから東京の専門学校に戻るのだが、準備が整うと二時間ほど空き時間ができる。
じっと落ち着いていればいいのに、なぜだかわくわくしている――こういうことはときどきあって、人間はこんなとき幸せなのか不幸せなのか、金太郎にはわからない。
金太郎は自転車で町に出ることにした。その自転車は、十何年も前に父が中古で買ってきた。ブレーキのない競技用自転車だった。金太郎は用事もなく自転車で町を走り、下りの坂道を下り始める。
と、うっかりペダルから足が離れた。
坂道は長く、このままでは速度調節ができず、大ケガをしてしまう……が、いま転んでしまえば小さなケガで済むに違いない――金太郎の判断は早く、坂道を下り始めてすぐに転んだ。
右手の平に擦り傷がついたが、幸いそれ以外にケガはなく、金太郎はその後無事家に帰り、駅に行って汽車に乗った。
発車後、金太郎は二人の男が話しているのを聞いた。
ある老人がブレーキの利かない自転車に乗り、坂道を猛スピードで下りていき、そのまま正面の家のガラス窓に突っ込んで命を落とした。
明らかにあの坂のことだった。
転ぼうと思ったのはたまたまの思いつきだったが、それが金太郎の命を救ったのだ。命の分水嶺とは、このようなことをいうに違いない。
金太郎は、中学の物理の時間に「人間は四角い針金の檻に入れられて、檻に高圧電流が流されていても平然としていられる」といった話を聞いたのを思い出した。
人間は常に高圧電流が通う檻の中にいるのだ。
狐人的読書感想
主人公の名前、金太郎ですね。金太郎といえば、童話キャラクターの金太郎が有名ですが、意外とその物語を説明できる人は少ないんだそうです。
(僕も詳しくは知りませんでした)
金太郎は山姥と雷神の子供で、力が強く熊と相撲をとっても勝ってしまうほど、そこで都の偉い人がスカウトにきて、鬼退治に行くお話なんだとか。
(ざっくり)
まあ、例のごとく、いろんなバリエーションがあるみたいですが。
そんな(?)金太郎が主人公の、新美南吉さんの『坂道』ですが、僕にはとてもおもしろかったです。
あらすじでは省きましたが、金太郎は何気ない日常の中にも、女の子との出会いを求めているような描写があって、「若者だなぁ」って感じがします。
最近は出会い系アプリとかマッチングアプリというものが流行ってるらしく、ささいな日常の中に出会いを求めてるって感じじゃなくなってきているんですかね?
(「出会い系」とか聞くと、やっぱり危ないイメージですが……)
スマホアプリがささいな日常になっている、という言い方もできるかもしれませんね。
(ゲーム感覚で使っているんだそうです)
『坂道』のお話は(当然ながら)童話の話も出会い系の話も関係なくて、同じ状況に置かれた二人の人物が、一人は生きていて一人は命を落としてしまう――そこに何を感じたか、というお話です。
(たぶん)
ブレーキのついていない自転車はノーブレーキピストとかいわれたりするんですね。それに乗って坂道を下るって、いまでは明らかに道路交通法違反って気がしますが、まあ、昔は規制とかなかったんですかね?
金太郎は「自転車の勢いがつき過ぎる前に転んでしまえ!」って、何気なく思ってそうしますが、その後同じ状況に陥ったおじいさんは正面の家につっこんで命を落としてしまうという……想像してみるとたしかに怖い話です。
ささいな思いつきや行動が、じつは命を左右していたのかもしれないってこと、普段なかなか考えないですが、意外とあったりするのかもしれません。
最後の物理の先生の話が心に残りました。
まさに人間は、常に高圧電流が通う檻の中にいるようなもの。知らずにいつ電流の流れる鉄格子にさわってしまうか、わかりません。
人間は、何も知らずに生きていたり、何も知らずに亡くなってしまったり、金太郎とか出会い系アプリとか、僕も何も知らずになんとか生きているんだなぁとか、むりやりこじつけて思った、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
人間は常に高圧電流が通う檻の中にいる。
狐人的読書メモ
・人間は暇な方が幸せなのか、暇がないほど忙しい方が幸せなのか――一つの命題である、という気はする。
・童話『金太郎』のモデルは実在の人物らしい。源頼光に仕えた「頼光四天王」が一人、坂田金時。漫画『銀魂』の銀さん(坂田銀時)の名前のモデルにもなっているそう。『金太郎』に興味を持ったってだけの話。
・『坂道/新美南吉』の概要
1940年(昭和15年)5月『哈爾賓日日新聞』にて初出。普段考えないことを考えさせられた話。
以上、『坂道/新美南吉』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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