狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『電信柱と黒雲/夢野久作』です。
文字200字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約1分。
電信柱は「黒い雲が嫌いだ!」と言った。黒い雲は白い雪を降らせた。電信柱は黙ってしまった。人を見かけで判断しない。人物評価は多角的視点から。黒が悪な理由、雲が黒く見える理由。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
(今回は全文です)
『電信柱と黒雲/夢野久作』
電信柱が寒い風にあたってピーピーと泣いておりました。
黒い雲が来て、
「何を泣いているのだえ」
「寒いからさ。お前のような雲が来るから寒いのだ。こちらへ来ないでくれ」
「おれが悪いのじゃない。風がわるいのだ。おれは風につれられて来るのだから」
「おれは黒いものが大嫌いだ。この間も鴉がとまって、アホーアホーとおれを笑った」
「それじゃこれはどうだ」
と言ううちに白い雪をチラチラと降らしました。
電柱はだまってしまいました。
狐人的読書感想
「黒い雲が来るから寒いのだ」という電信柱の言い分は、なんとなくそうなんだろうなぁ、ってスルーしてしまいましたが、しかしその後に続く『風が悪いのだ』という黒い雲の言い分は、ちょっとハッとするくらいその通りだという気がして、含蓄があるという気がします。
人は目に見えているものを批判・非難しがちですが、じつは目に見えないもののほうがその物事の根本的原因だったりして……「巨悪は裏に隠れている」みたいな、「笑顔の裏に隠された悪を警戒せよ」みたいな?
『おれは黒いものが大嫌いだ』と電信柱が言っているように「政界の黒幕」とか「ブラックリスト」とか、黒という色にはとかく「悪」というイメージがついて回りますよね。
これは黒い「夜」や「闇」から生まれたイメージだそうで、電気がなかった時代「夜」や「闇」が恐ろしいものだった、というのは頷ける理由です。白は反対に夜や闇を払う「光」の色からの連想ということで、こちらもわかりやすく感じます。
わかりやすく感じるとはいえ、「黒=悪」「白=正義」と必ずしもならないのは、現実の複雑なところかもしれませんね。
偏見で人やものを判断してはいけないのだとわかってはいるのですが、電信柱のように『おれは黒いものが大嫌いだ』と、決めつけてしまうところが自分にもあるように思い、反省したいところです。
黒い雲は「雪を降らせて」電信柱を黙らせるわけなのですが、ここはちょっとわかりにくいような気がしました。
悪いと思っていた黒い雲が白い雪を降らせたことで、では黒い雲は悪くないということになり、何も言えなくなってしまったということ?
でも、悪人の生むものが必ずしも悪だとは限らないわけで、悪人の子供が悪人だとも限らないわけで……よくわからなくなってしまったから電信柱は黙ってしまった、っていう解釈でいいんでしょうかね?
とりあえず、人を見かけで判断せずに、その行動を自分の目で見て、話をして、人柄を判断したいと思いましたが、「笑顔の裏に隠された悪を警戒せよ」とも言いましたし、人物評価というのはなかなかむずかしいです。
少なくとも、責任を持って人を評価して、その評価が間違っていても後悔しないようにしたいなと思った、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
黒が悪な理由、雲が黒く見える理由。
狐人的読書メモ
・ちなみに雲に色はない。雲は太陽の光を乱反射しているため、通常時は白く見える。雨が降るときなど雲が厚くなっていると、雲自体が太陽光を遮るため、人の目には黒く見える。そんな黒い雲も、遠くから見ればやはり白く見えるので、人物評価についても多角的に見ることが重要であるかもしれず、それが本作の教訓なんだろうか。そんなに深い話でもないような気はするが。
・『電信柱と黒雲/夢野久作』の概要
1924年(大正13年)2月7日、『九州日報』にて初出。九州日報シリーズ。初出時の署名は「香倶土三鳥」。意外と深い話……なのかもしれない。
以上、『電信柱と黒雲/夢野久作』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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