狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『線路/夢野久作』です。
文字1800字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約6分。
ポケットに手をつっこみ、調子に乗って線路を歩く男。正面から列車がやってくる。黒い肩を怒らせた機関車…なんと傲慢な! 反抗心がムクムクと湧き起こり、列車に挑んだ男の結末やいかに!?
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
カラリと晴れた冬の真昼。男が町へ近道しようと、線路の上を歩いている。やがて真正面から列車がやってくる。男は列車を避けたくない、反抗心が湧き上がる。自分で自分の運命を作り出す機会はいましかない――。
列車は通りすぎ、男は線路の外に立っている。強い大きな屈辱と、悔恨。うなだれて歩き出そうとしたとき、目の前の線路に自分の亡骸が横たわっているのを見る。その亡骸に唾を吐く。幻だ。
男は、一つ命を拾った気になって、一人苦笑する。
「水が飲みたいな」
狐人的読書感想
運命に対する考え方はおおまかに二つあると思います。
・運命は変えられる
・運命は変えられない
運命って変えられるのかなってよく思います。
この物語の主人公の男は、列車にはねられることで、運命を作り出そう(変えよう)としています。
(なんにでも反抗したがる反抗期の子供か!)
すなわち、列車を避けることでこれから先も人生が続いていくのが、本来あるべき運命だと考えて、ここで列車にひかれて人生を終わらせることで、そのあらかじめ決まった運命を変えようというわけです。
これを誘惑だと捉えた男の気持ちは、ちょっとわかるような気がします。
(反抗期の子供っぽい……とはいえ)
人間誰しも、自分の努力、意志力で運命を変えられるものならば、それを証明してみせたいという気持ちは、あるのではないでしょうか?
(……やり方はともあれ)
結局男はこの試みに失敗します。
電車が通り過ぎてからの、男が見る幻や言動からは、一時の気の迷いで命を落としそうになったことへの緊張、それを回避できたことへの安堵の気持ちが見られますが、やはり運命は変えられなかった……といったような、無念さみたいなものも感じてしまうんですよね。
ともあれ、そのやり方だとたくさんの人や家族に迷惑がかかってしまうので(遺族が負う損害賠償がやばいという話は聞きますよね)、失敗に終わってよかったのですが。
しかしよくよく考えてみると、たとえ男が試みに成功しても、そこで列車にはねられるのが運命だったんだ、とか言ってしまえば、男は運命を変えられなかったことになってしまいます。
運命って結局は結果論。
運命なんて考えずに生きるのが一番楽なんじゃないかなぁ――とか思いつつ、運命の出会いとか、運命的なドラマとかを求めてしまう自分がいて……
結局僕は何が言いたかったんだろう?
――と思った、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
自分の運命を作り出し得べき最も簡単な方法は?
狐人的読書メモ
・もう一つ、人間は意志力によって自分の命を絶てるのか、すなわち、生存本能に打ち克つことができるのか――ということも思った。
・自ら命を絶つ人がいなくならない以上は、人の意思は生存本能に打ち克つことができるのだと言えそうだけれど、社会機能として一定数そういう個体が現れるのが普通だという話も聞き、それってなんだか運命っぽい話でもある――という……やっぱり、結局僕は何が言いたかったんだろう?
・『線路/夢野久作』の概要
1927年(昭和2年)『探偵趣味』にて初出。
運命や生存本能を思った。
以上、『線路/夢野久作』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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