狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『ざんげの塔/夢野久作』です。
文字数2300字ほどのエッセイ。
狐人的読書時間は約8分。
西片じゃなくて夢野の仕返しの結末や……からかい上手のお父さんの話! 5人は1人のために……連帯責任の話! マジあぶねー……美人妻の家に住居侵入してしまう話! 久作夢野のすべらない話?
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
夢野久作のちょっとしたざんげ話。
その1
私のおやじは息子をからかって楽しむ悪い癖がある。いままで何度か金時計やプラチナ時計をもらっていたが、まだ一度も本物を手にしたことがない。
ある日、私が時計の修理になじみの時計屋を訪れると、店主がおやじの大切にしているプラチナ時計を出してくる。どうやら、おやじが修理に出していたものを、私が取りにきたと勘違いしたらしい。
これまでの仕返しのつもりで、私はその時計を自分のものにしてしまう。するとすぐ、私の住まいに電報が届く。警察の取り調べを受け、お前のしわざだと判明した、すぐに返送しなさい、という内容だった。私は慌てておやじの時計を返送する。貴重品扱いの送料は目が回るほど高かった。
二週間くらいして、おやじから私に今度は本物の金時計が送られてくる。その後聞いたところ、警察の取り調べはおやじの嘘だった。また一杯食わされた。金時計を叩き返してやろうかと思ったが、考え直してやめた。
その2
明治四十一年、私が志願兵をしていた頃、私の私物入れに餅が隠してあるのが発見される。そして、その餅を包んでいた風呂敷に「班付伍長勤務上等兵」と書いてあったため、大問題になってしまう。
私と班の上等兵候補者四名は、毎晩厳重な取り調べを受ける。四晩目に私は泣いて白状する。
餅は私が入れたものだったが、新聞紙に包んでいたはずで、風呂敷については本当にわからなかったのだ。
結局この件はうやむやのまま終わる。
誰かが白状したら……と意地になって、四人の苦痛を問題にしていなかった私の卑怯さを思い出すと、その都度大声で叫びたいような気持になる。
その3
新聞記者をしていた頃、仕事で夜遅くなってしまい、編集長の自宅の掛金を外して勝手に中へ入り、応接間に布団を敷いて寝てしまった。
翌朝、編集長の奥さんの悲鳴が響いた。
編集長の奥さんは美人という評判だった。あのときもし編集長が留守だったら……と思うと、いまでも冷汗が出る。
狐人的読書感想
「女を見て美しいと思うものは、罪を犯した者だ」という基督の眼から見れば、たいていの人間は犯罪者……だと思う。
――という一文から始まる夢野久作さんのエッセイですが、たしかに些細な罪をも犯さない人間なんていませんよね。
(そういう意味じゃないかもですが)
夢野久作さんのちょっとしたざんげ話、誰でも共感できるような罪の告白がユーモラスに書かれていて、とても楽しく読むことができました。
一つ目は「息子をからかうのが楽しみな父親」の話でした。
いつもお父さんにからかわれてしまう息子が仕返しをしようとするも、やっぱりお父さんのほうが一枚上手だった、みたいな、こういう関係ってなんかいいよなあ、って感じです。
そういえば、『からかい上手の高木さん』がアニメ化されて、けっこう好評だったように思うのですが、からかいからかわれる関係って、そこに愛さえあればどんな人間関係でもよいものなのかもしれませんね。
「からかい上手」がいまキテる?
二つ目は「連帯責任を思わされる」話でした。
班で一人が問題を起こし、もう一人それに関与しているかもしれず、班の疑わしき者はみんな厳しい取り調べを四晩にもわたり受けるはめに……。
無実の者にとっては連帯責任を取っているかたちになりますよね。
連帯責任といえば、いたずらをして叱られるときの学校の仲よしグループだったり、兄弟だったりをイメージするのですが、最近ではアイドルグループTOKIOの山口さんの事件で、メンバー全員が連帯責任を負うかたちになったのが印象に残っています。
連帯責任って、集団の結束力を高めるなどいい面もあるのでしょうが、本当に必要なのかなあ、って思うときもあるんですよね。
ともあれ、自分が何か悪いことをしてそれを隠し、無実のひとにまで迷惑をかけてしまうような場合があれば、早めに白状したいと思いました。
三つ目は「単純に笑えた」話です。
とはいえ、これ、普通に住居侵入罪なので、三つの中ではもっとも罪が重いので、笑い事ではないのかもしれませんが。
先輩後輩、友達、兄弟姉妹――どんなに親しい間柄であっても、ひとの家に勝手に上がり込んではいけないんだなあ、とか、単純に思いました。徹夜仕事でそこまで頭が働かなかったとはいえ、相手にパートナーがいて一緒に住んでいる場合はなおさらですよね。
笑い話で済んでよかったです(笑)
以上、三つともユーモアが感じられておもしろいお話でしたが、ちょっとした失敗談をおもしろおかしく語れるのって、誰にでもできるのかなって、ふと疑問に思います。
僕はそういうことがなかなかできないような気がして、これも一つの才能のように捉えてしまうんですよね。テレビで見るお笑い芸人さんたちのすべらない話とか、すごいなあ、っていつも感心させられてしまいます。
そんな感じの今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
久作夢野のすべらない話?
狐人的読書メモ
・読書感想冒頭の引用部分、キリストの発言とされている言葉は、マタイによる福音書5章28によるものと思われる。
・『ざんげの塔/夢野久作』の概要
1927年(昭和2年)6月、『探偵趣味(3巻6号)』にて初出。ちょっとしたざんげ話。失敗談をおもしろおかしく話せるのは才能か。久作夢野のすべらない話。
以上、『ざんげの塔/夢野久作』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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