怪談女の輪/泉鏡花=睡眠麻痺!マイナスプラシーボ!全然怖くないんだからね!

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

怪談女の輪-泉鏡花-イメージ

今回は『怪談女の輪/泉鏡花』です。

文字数7000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約17分。

風邪で寝てたの……そしたら枕元へ足音がして……それは綺麗な足だけ女……それで逃げ出した先で……20人の怪談女がガールズトークしてて……え? 夢? 睡眠麻痺? マイナスプラシーボ? いやいや……

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

十七歳だった秋の初め、私は塾に寄宿していた。私の部屋は四畳敷きの縦に長い一室で、両側がふすまで仕切られていて、一方の襖を開けて私の部屋へ入り、もう一方の襖から玄関へと抜けられる。

部屋の側面の一方には、明り取りの障子がはまっていて、その外は気味悪い噂がある池で、なんでもこの家の奥さんが、髪を結ぶひもをそこに捨てると、二十一日で、蟷螂かまきりの腹につく寄生虫、足卷あしまきになるのだとか。

塾の建物はこの池をぐるりと一周するような形で、十七の部屋がある大きな家だが、建てられてから何百年も経っていた。塾生と家族が使っているのは三室か四室に過ぎず、玄関を入ってすぐの十五、六畳の板敷間が教室として使われていた。

ある夜、私が自分の机で滝沢馬琴の『美少年録びしょうねんろく』を(塾では小説が厳禁されていたので)こっそり読んでいると、明り取りの障子の外からぱらぱらと音がした。あられのような音は次第に激しくなり、しかし池を見ても雨や霰が降る気配はなく、原因がわからない。

家にいた、赤子を抱えた奥さんと、塾生の一人が私のところへ集まってくるが、三人で団子になって固まっているしかない。やがて教師が帰ってきて、やはり外でその音を聞いたらしい。教師と奥さんが別室へ去ると、音はもうそれっきり聞こえなくなっていた。

そのとき居合わせた塾生がその話広めてしまい、軍人志願の猛者たちがその正体を突き止めようと躍起になったが、結局解明できず、四、五日で騒ぎは沈静化する。

数日後の夕方、まさに逢う魔が時。風邪気味で寝込んでいた私は、ふいに枕元へ……ばたばたという足音を聞く。いま家には誰もいないはずだ。しかし気配は間違いなく近づいてくる。

私が頭を起こして見ても、そこには誰の姿もない。

しばらくすると、今度はしとしとと、たとえば身体のない、きびすばかりが畳を踏んでくるかのような、軽い摺り足の気配がする。私は恐ろしさに息も絶え絶え身を起こし、襖を押し開け、向こうの広間へ。

部屋の真ん中で息を吐き、振り返って見ると、私の部屋の敷居を、薄紅の絹に絡まった、蒼白い、女の足ばかりが歩いてくる。

慌てて私が広間を突っ切ると、そこは壁だった。押すと開きそうだ。しかし開かない。すぐ手元へ引くとさっと開いた。

その先の床の間には何もなかった。

ただ一室に、ぐるりと輪になって、二十人あまりの女がいた。私はめまいがして一人も顔を見なかった。いや、顔がある者とは思えなかった。胸ばかり、腰ばかり、立膝ばかり――それらの女がいっせいに私を見る気配、そして、「わあ」という物凄い声音。

後ろからきた女の足が私を横切り、引きずり込まれる!

――はっと前に倒れると、熱のある身体は元の寝床に、ドッと倒れていた。

その後も私の風邪はなかなか治らず、何も言わずにその家を去ると、すぐ快復した。

なんでも昔、その地方は治安が悪く、その家に連れ込まれた女性が生きて帰ったためしはなかったらしい。

教師も赤子の夜泣きに耐えられず、じきよそへ引っ越したそうだ。

その後、何度か住人が変わり、今度のは長い期間住んでいるというが……。

狐人的読書感想

恐っ! まさか、ほんとにあった怖い話じゃないですよね? 泉鏡花さんが17歳だったときの体験談、みたいな?

音は聞こえるのにその発生源はわからず、人の気配はするのにその姿は見えず、「私」の枕元にしとしとと足音と気配が近づいてくるというのは、金縛りを想像すると共感しやすいように思えました。

金縛りになったことってありますか?

たとえば、夜中にふと目を覚ますと、薄暗く部屋の天井が見えて、頭は妙にはっきりしているのに、身体がなぜか動かせない――だんだんと怖くなってくると、部屋のドアを開けて、誰かが近づいてきて、頭の先からじっと自分を見つめている気配が感じられるのですが、その人物はどうしても視界に入ってこない……みたいな。

金縛りといえば心霊現象の代表格でしたが、いまでは医学的に「睡眠麻痺」といわれる状態であることがわかっていますよね。

なんでも4割くらいの人は金縛りになった経験があるそうで、その半数以上は思春期に体験することが多いといいます。

金縛り(睡眠麻痺)の仕組みを簡単にいうと、浅い眠りであるレム睡眠中に、身体は休んでいるのに意識だけが覚醒してしまう、といった感じです。体を動かせない恐怖が、さらに想像力を刺激して、幻覚や幻聴を引き起こします。

原因は、睡眠不足や生活リズムの乱れ、ストレスなどですが、運動して身体だけが急激に疲れていると、金縛りになる、という話も聞いたことがあります。

まあ、要するに、長々と何が言いたいのかといえば、きっとこの物語も空耳や金縛り体験だったんだよ、ははは……、という、怖さを紛らわせる話がしたかったのですが、どうですかね?

作中の家は、いまでいうところの事故物件だったんでしょうね。現在では事故物件が調べられるホームページなどもあるので、引っ越しの際は念のために検索しておきたいところですね。

事故物件で起こるポルターガイストなどの現象は、「共鳴」という物理現象で説明できるといいます。

事故物件に住むことで起こるさまざまな体調不良は、マイナスプラシーボ効果だといいます。周辺住民の悪感情やひそひそ話など、無意識にそれら負の気配を感じ取ってしまい、マイナスの思い込みで体調を崩してしまうのだそうです。藁人形の呪いなんかもこの原理で説明がつきます。

さてどうでしょう。

『怪談女の輪』の読書が怖かったので、怖くなくなる読書感想を書いてみたつもりですが、はたして……。

読書感想まとめ

『怪談女の輪』なんて、全然怖くないんだからね!

狐人的読書メモ

・20人の怪談女たちも、きっとパジャマパーティーで、ガールズトークに花を咲かせてたんだろう――なんて思えば、少しは恐怖が和らぐ……だろうか?

・『怪談女の輪/泉鏡花』の概要

初出不明。『鏡花全集 巻二十七』(岩波書店)収録。実際にあった著者の体験談を思わされる小説(事実かは不明)。医学や科学が進歩した現代においても、説明のつかない心霊現象は存在している。いずれすべてが解明される日が訪れるのだろうか……興味を抱く。

以上、『怪談女の輪/泉鏡花』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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