狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『なぞなぞ/グリム童話』です。
文字数2500字ほどのグリム童話。
狐人的読書時間は約8分。
ある人が1人も殺さずに12人殺した、どういうことか?
「子子子子子子子子子子子子」を読め。
朝は四本足、昼は二本足、夕は三本足、この生き物は何か?
恋愛で必要なものな~んだ?
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
長い旅を経て、王子と従者はその国に辿り着いた。
その国には美しいけれど高慢な王女がいた。王女は「私が解けない謎を出した者と結婚する。だたし、私がその謎を解いたら求婚者の首をはねる」という布告を出しており、すでに9人の求婚者が命を落としていた。
しかし王子は、王女のあまりの美しさに目がくらみ、つぎのような謎を出した。
「ある人が1人も殺さずに12人殺した。どういうことか?」
期限は3日間――
旅の途中、王子と従者は大きな森に迷い込んでしまった。そこに小さな家があり、若く美しい娘がいた。
「一晩泊めてもらえないだろうか?」
「もちろん。だた、継母が魔女なので、用心してください」
王子と従者は娘の忠告のおかげで無事に朝を迎えることができた。王子が先に出発し、従者がそのあとを追おうとすると、魔女が飲み物を渡そうとする。しかしその瞬間、コップがはじけ、中の液体が従者の馬にかかる。馬は動かなくなり、従者は走って王子のあとを追い、事情を話す。が、ふと馬具を忘れてきたことに気づき、引き返すと、馬はカラスに食われていた。従者はそのカラスを持って王子のもとに戻る。
その日も二人は森を抜けることができなかった。しかし幸い宿屋を見つけることができ、一泊することに……そこは12人の悪党のアジトだった。二人の命はないものかと思われたが、翌朝、宿屋の主人と12人の悪党は食卓で事切れていた。前夜、従者が渡したカラスを、宿屋の主人がスープにして、一仕事の前に全員でそれを食べたのだ。魔女の毒にやられた馬の肉を食べたカラスに、毒が回っていたのだった。その宿屋では、一人の誠実な娘だけが生き残っていた。娘は王子に宝の山を見せる。王子は首を振って言う。
「あなたのものです。私はいりません」
――王女には王子の出した謎がわからなかった。
そこで侍女に、王子の寝言を聞くため、その寝室へ忍び込むよう命じた。侍女はマントで身を隠し、王子の寝室へ忍び込むが、賢い従者が王子の身代わりとなってベッドに寝ており、マントをはぎ取って侍女を追い返す。
二日目の夜も失敗に終わり、三日目の夜はいよいよ王女自身が、王子の寝室へ忍び込んだ。その日は三日目ともあって安心したのか、寝室のベッドには王子本人が寝ていた。
「ある人が1人も殺さずに12人殺した。これはどういうこと?」
「毒で倒れた馬の肉をカラスが食べた。そのカラスの肉を12人の悪党が食べた。カラスに回った毒で12人の悪党は命を落とした」
王女の質問に、王子の寝言が帰ってきた。王女はそっと帰ろうとしたが、王子の手が王女のマントを掴んで離さない。王女はやむなくマントを王子の手に残し、寝室から去っていった。
謎解きの期限である翌日の朝、王女は12人の裁判官の前で王子の謎を見事に説いた。が、王子は王女の不正を訴え、証拠として王女とその侍女が残していったマントを提出した。間違いなく娘のマントであることを認めた王が、つぎのように判決を言い渡した。
「そのマントを金と銀で刺繍せよ。立派な婚礼衣装となろう」
狐人的読書感想
おもしろかったのですが、なんだか「それでいいの!?」って、ツッコミたくなるお話でした(まあ、グリム童話はそんなのばっかりなので、言うだけ野暮なのかもしれませんが、よろしければお付き合いください)。
まずはタイトルの『なぞなぞ』。
主人公の王子様が出したなぞなぞの内容は「ある人が1人も殺さずに12人殺した。どういうことか?」というものでした。
そして、その答えは「毒で倒れた馬の肉をカラスが食べた。そのカラスの肉を12人の悪党が食べた。カラスに回った毒で12人の悪党は命を落とした」
――って、そんなのわかるわけな~い!
これがなぞなぞといえるのか……、まあ、答えがまったく想像できないかというと、そうとはかぎらない気もしますし、議論の余地があるかもしれません。
王女様がなぞなぞだと認めてしまえばそれでよいのかもしれませんが、高慢な王女様ですからねえ……、「わかるかーい!」とは言い出せなかったかもしれませんね……、そこまで含めて王子様の策謀だったのかな? 興味深いところです。
ところで、日本で最初のなぞなぞは、嵯峨天皇が出したという「『子子子子子子子子子子子子』を読め」というものなのだそうです。これを解いたのは小野篁人だと伝えられていて、その答えは「ねこのここねこ、ししのここじし(猫の子子猫、獅子の子子獅子)」というのは有名なお話ですかね。
ギリシャ神話のスフィンクスのなぞなぞは世界的に有名ですよね。「朝は四本足、昼は二本足、夕は三本足。この生き物は何か?」、答えは「人間、赤ちゃんのときははいはいで四本足、やがて二本足で歩くようになり、老人になると杖をついて歩くから三本足」となります。
スフィンクスは謎が解けなかった者を食っていたといいますから、このお話はグリム童話『なぞなぞ』のストーリーラインと通じるところがありますね。
てか、そもそも王子様が高慢な王女様の、美しさにばかり目をくらまされてしまったあたり、「やっぱり人は見た目が100パーセントか~い!」って、ツッコミを入れたくなってしまいますが、しかしこれこそグリム童話王道のストーリー展開で、思えばいつもツッコんでいるのを思い出します。
高慢で、負けん気が強くて、どんな汚い手を使ってでも勝とうとした王女様と結婚して、はたして王子様は幸せになれるのかな、などと余計な心配をしてしまいますが、しかし王子様もなかなかのしたたか者なんですよね。
案外お似合いのカップルで、王様もそう見たからこその、最後の見事なお裁き! だったのかもしれません。
グリム童話は荒唐無稽な物語に見えて、じつは深く現実のさまざまな教訓を考えさせられる作品が多いです。
今回は恋愛指南、男も女も、どんなに相手が好きであっても、冷静さを失わずに、相手を疑う心を持たねばならない、みたいなことでしょうか。これは広く人間関係に当てはめてもいえそうですよね。なんだかひねくれものの僕の、うがった捉え方かもしれませんが。
そんなこんなで、王子様と王女様には幸せになってもらいたい(?)、今回の読書感想でした。
読書感想まとめ
男女関係においては、どんなに相手のことが好きであっても、冷静さと相手を疑う心を持ち続けていなければならない。これは家族関係、友達関係……あらゆる人間関係に当てはめていうことができる。――かもしれない。
狐人的読書メモ
・主人公への試練として、なぞなぞを取り入れている物語は多々あり、ミステリー小説なんかその最たるものであるなあ、などと、ふと思いつく。創作には「謎」という要素が言わずもがな重要であるなあと、改めて実感する。
・『なぞなぞ/グリム童話』の概要
KHM 22。そんななぞなぞあり? とくに男女関係(恋愛)における現実的な教訓。最後の王の裁きは「高貴なるものは道徳的であらねばならぬ」ことを示している?
以上、『なぞなぞ/グリム童話』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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