狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『書けない探偵小説/夢野久作』です。
文字数2000字ほどのエッセイ。
狐人的読書時間は約7分。
6つの物語の創作メモ。
みんな大人のおとぎ話みたいに……
俺は一体、何を書きたがっているのだろう?
ともあれ、読んでみたくなるあらすじばかり。
あなたのお気に入りは?
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
――夢野久作の創作メモ。
1
太陽の下を流線スター(高級車)が横切る。その中に、サングラスをかけた美人の横顔が、網膜に焼きついたまま遠ざかる。あとからガソリンの臭いと屍臭。いまのは、化粧をしたなきがらだったのか……?
2
美人を空き家の天井に吊るしておく。借り手がないため、いつまでも発見されないでいる。たまらなくなった犯人が、素人探偵を装って、自ら発見、警察に報告、犯行の経路を暴く。何月何日の何時何分頃、何ホテルの第何号室に投宿する何某という男が犯人だ、と警察に予告、自分自身がその名前で、その時刻、その部屋に泊まる。踏み込んだ警官と争ったのち、万歳三唱して自ら命を絶つ。
3
ある極悪犯人が、ある名探偵の存在を恐れ、亡き者にしようと画策する。いままで恐怖を知らなかった名探偵が、極悪犯人を恐れ、秘術を使って逃げ惑う。犯人もまた秘術を使って追う。大きな客船の上で、犯人が探偵を押さえつけ、一緒に海へ……。いろいろ調べた結果、犯人は探偵の昔の恋人であった。
4
トロツキーがパリ郊外の小さな池で釣りをしている。亡き親友のレニンがその池に投げ込んだというロマノフ家の王冠を探るためだ。トロツキーは王冠を釣り上げる。すると、背後の夕闇に、のっそり近寄る者の姿が。トロツキーが驚いて振り返ると――亡き親友のレニンだった。トロツキーは王冠を残して、一目散に逃げ出した。すべてはレニンの仕組んだトリックだった。
5
ある海岸の崖の上に、百万長者の未亡人と、その娘が住んでいた。娘はいつも何者かに命を狙われていたが、その度に青年名探偵が現れて救ってくれる。やがて娘と名探偵は恋仲に。それ以後も、娘は命を狙われ続け、名探偵は娘を助け続ける。しかしある日、娘が崖のふちを散歩している最中、突然強い力で突き落とされる。落ちる途中で娘が見たのは、青年探偵と母親が、そろって浮かべる冷酷なニコニコ顔だった。
6
せむし(背骨が曲がった奇形の人)の隠亡(埋葬の世話をする人)がいる。火葬場で、棺桶の中の目ぼしいものを奪ったりして、巨万の富を得る。そのうち美しい令嬢が棺の中で生き返っているのを発見し、自分の妻にしてしまう。隠亡をやめて遠くの国で、美しい妻と一生を楽しく暮らす。その思い出話、一千一夜式。
――探偵小説というよりも、みんな大人のおとぎ話みたいな心理描写ばっかり。俺は一体、何を書きたがっているのだろう。
狐人的読書感想
これは何になるんですかね……エッセイでいいのでしょうか? 創作メモをそのまま作品として発表してしまうというのは、大胆な発想というか……〆切に、切羽詰まっていたんでしょうか、当時の夢野久作さんは……。
俺は一体、何を書きたがっているのだろう――文豪でも、そんなことを考えるときがあったのかなあ、などと想像してみると、ちょっと共感を覚えてしまいますが、どうでしょうね?(書きたいものが多すぎて……となると、意味合いが変わってくるのかもしれませんが)
ともあれ、6つの創作メモ、どれも興味深いものではありました。探偵小説とはいえそうにないものもたしかにありますが、締めでいっているように「大人のおとぎ話」といった、夢野久作さん独特のテイストが感じられて、完成品を読んでみたかったなあ、と思わされるものがあります。
僕は、5つ目と6つ目の話に惹かれました。
5つ目の話は、百万長者の未亡人の母とその娘(二人とも美人)、青年名探偵が登場します。なぜかいつも誰かに命を狙われている娘、それを助ける青年名探偵……都合よく事件に遭遇するあたりが名探偵っぽいですね。
オチからして、犯行は母と青年名探偵の共謀ということになるのですが、ストーリー的に、はじめから共謀していたわけではなさそうです。
たぶん、最初から娘の命を狙っていたのは母親、名探偵は母親に籠絡されてしまい、最後の犯行に及んだのだと想像できるのですが、その動機と経緯、母娘と青年名探偵のドロドロの三角関係は、想像してみるだけでもけっこうおもしろそうなんですよね。
6つ目の話は、せむしの隠亡の過去を、一千一夜式、短編連作で振り返る感じでしょうか?
棺桶に納棺された貴重品を盗んだり、棺の中で蘇生した人間の秘密を聞き出し、それからそのまま焼いてしまい、遺族を脅迫して金を奪ったりして巨万の富を得る、といったストーリーラインはおぞましく、それだけにひとの興味をそそります。
埋葬にはそれぞれの人の人生が表れるような気もするので、人間ドラマも描けそう。のちにせむしの妻となる美しい令嬢は、失恋して自ら命を絶っていますが、その話にも惹かれるところがあります。
美しい妻は蘇生後、生前の記憶は失っているのかもしれませんねえ……せむしと美しい妻と、遠国で幸せになりますが、幸せは人の心を豊かにするもの、もしもせむしが過去の罪を後悔し、妻は失われた過去の記憶に葛藤する――などという場面を想像すると、思い出話のみならず、現在の物語も書いてみておもしろそうに思えてきます。
あなたは、どの物語がお気に入りですか?
よかったら教えてください。
読書感想まとめ
6つの物語の創作メモ。
あなたはどの物語がお気に入り?
狐人的読書メモ
プロットとか創作メモの作り方がいまだによくわかっていない。思いついたときに思いついたことをメモしておきたいとは考えるのだけれど、よく忘れてしまう。忘れるということは大したアイデアじゃなかった、という見方もあるが、はたして……。
・『書けない探偵小説/夢野久作』の概要
1934年(昭和9年)『新青年』にて初出。こんな探偵小説書いてみたい。しかし探偵小説というよりは大人のおとぎ話。ともあれ魅力的な物語の雛形ではある。
以上、『書けない探偵小説/夢野久作』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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