小説読書感想『悪魔 芥川龍之介』ペルソナァ! エクソシスト! とらぶる?

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。
(「『狐人』の由来」と「初めまして」のご挨拶はこちら⇒狐人日記 その1 「皆もすなるブログといふものを…」&「『狐人』の由来」

今回の小説読書感想は『悪魔 芥川龍之介』です。

ふむ。芥川龍之介さんの『悪魔』ですね。

「悪魔」と聞くと、何を思い浮かべますかねえ……僕としては、アトラスさんのゲーム、「真・女神転生シリーズ」を思い浮かべてしまうわけなのですが――、悪魔召喚プログラム!

近頃ではやはり「ペルソナシリーズ」の人気のほうが高いのでしょうか。『ペルソナ3』、『ペルソナ4』、『ペルソナ5』はアニメ化とかもしてますものね。もはや「ペルソナシリーズ」で独立している感がありますが、第一作が『女神異聞録ペルソナ』となっているので、「真・女神転生グループ」の作品とはみなしてもよさそうです。

「PS4」も「PS3」も持ってない! ゆえに『ペルソナ5』プレイできない……時期的にクリスマスプレゼントを期待してしまったわけなのですが、高価すぎてサンタクロースさんにお願いできない! お年玉もそんなに期待できない……そんなわけで、はたして僕が『ペルソナ5』をプレイする日はくるのでしょうか……(とか言ってるうちに、ザ・ゴールデン的な、PS Vita版が出ますかねえ)。

くっ、『ハンター×ハンター』に登場したコルトピの「神の左手悪魔の右手(ギャラリーフェイク)」が使えたら(悪魔つながりということで)!

とかなんとか言ってると、どんどんプレイしてみたくなってしまうので、話しを芥川龍之介さんの『悪魔』に戻しましょう。

芥川龍之介さんとキリスト教といえば、切っても切れない関係にあると言っても決して過言ではありません。「キリシタンもの」と呼ばれる作品群があるくらいです。

この芥川龍之介さんの「キリシタンもの」を発表年順にまとめてみると、以下のようになります(どの小説が「キリシタンもの」なのか、については研究者の方によって意見の相違があるみたいなので、参考までに)。

・1916年(大正05年)11月:『煙草と悪魔』
・1917年(大正06年)01月:『尾形了斉覚え書き』
・1917年(大正06年)06月:『さまよへる猶太人』
・1918年(大正07年)07月:『悪魔』
・1918年(大正07年)09月:『奉教人の死』
・1918年(大正07年)11月:『邪宗門』
・1918年(大正07年)11月:『るしへる』
・1919年(大正08年)03月:『きりしとほろ上人伝』
・1919年(大正09年)09月:『じゅりあの・吉助』
・1920年(大正09年)05月:『黒衣聖母』
・1920年(大正09年)07月:『南京の基督』
・1922年(大正11年)01月:『神神の微笑』
・1922年(大正11年)04月:『報恩記』
・1922年(大正11年)05月:『長崎小品』
・1922年(大正11年)09月:『おぎん』
・1923年(大正12年)04月:『おしの』
・1924年(大正13年)01月:『糸女覚え書』
・1927年(昭和02年)04月:『誘惑』
・1927年(昭和02年)08月:『西方の人』
・1927年(昭和02年)09月:『続・西方の人』

ふむ。いっぱいありますね。はたして全部読むことができるでしょうか。

ともあれ今回は『悪魔』です。

『煙草と悪魔』、『悪魔』、『るしへる』(=ルシファー、ルシフェル)と、タイトルだけを取って見ても、明らかに「悪魔」が題材になっているのというのが、一目瞭然の小説がありますよね。芥川龍之介さんにとって、「悪魔」という存在は、一つ重要な命題だったのかもしれません。

今回取り上げた『悪魔』にも、当然「悪魔」が登場するわけなのですが。

無料の電子書籍kindle版で4ページ、文字数でも2000字ほどの超短編小説なので、よろしければ読んでみてください。

芥川龍之介さんの『悪魔』は、古写本の伝説を紹介するといった形で、苦悩する「悪魔」が描かれた小説です。苦悩する「悪魔」って、なんだか「悪魔」っぽくないような気もしますが。「芥川龍之介」、「古写本の伝説」なんてキーワードが並ぶと、伝奇小説や歴史小説を期待してしまう向きもあるかもしれませんが、はてさて。一緒に見ていきましょう。

織田信長さんが隆盛を極めていた時代、舞台は京都の南蛮寺です(いよいよ歴史小説っぽい入りですが)。ここに、「伴天連ばてれんうるがん」さん、という人がいました。「伴天連ばてれん」は宣教師のことで、「うるがん」というのは当時日本で呼ばれていたあだ名のようなものみたいです。正式なお名前は「グネッキ・ソルディ・オルガンティノ」さんといいます。うん、呼びにくいですね。親愛の情を込めて「うるがんさん」とお呼びしましょう。

芥川龍之介さんの『悪魔』のなかでは、このうるがんさん、「悪魔」の姿がありありと見えて、しかも捕らえることができたといいます。事実はさておき、当時の人々はそう信じていたようです。まさにエクソシストですね(エクソシストで思い出しましたが、最近の「悪魔」を題材にした漫画に『青の祓魔師(あおのエクソシスト)』がありますね)。

あるとき、信長さんがとある姫君を好きになって、自分の思い通りにしようとしたところ、姫君もその両親もこれを快く思いません。そこでうるがんさんが一肌脱ごうというわけです。「悪魔」の言葉を借りて、信長さんの暴挙を諫めようとします。

こうして、うるがんさんが、信長さんに語るところによれば。ある日、うるがんさんは、姫君の輿の上に乗っている「悪魔」を見つけます。美しい顔の「悪魔」です(なんだか、『To LOVEる -とらぶる-』に登場する女の子――ララ・サタリン・デビルーク――を思い浮かべてしまうのですが……厳密には「悪魔」ではなくて「宇宙人」なのですかねえ)。

この「悪魔」を、うるがんさんは十字架の力でもって、難なく捕らえてしまいます。拘束してしまいます――こう言い換えると、『To LOVEる -とらぶる-』の連想との相乗効果で……言わずもがな(前回ブログ記事:『小説読書感想『セメント樽の中の手紙 葉山嘉樹』ホラー? 恋愛? プロレタリア?』で漫画話をまったくできなかった反省を活かそうとし過ぎ?)。

うるがんさんが、この拘束(……)した「悪魔」を南蛮寺に連行して、「なぜ姫君の輿の上に乗っていたのか」と厳しく――、厳しく! 尋問(…………)すると、悪魔は次のように語ります。

自分はあの姫君を堕落させるために来たのだけれど、姫君の魂があまりにも清らかなので、汚したくないと思ってしまった。だけど、清らかだからこそ、汚してみたい衝動にも駆られる。汚したい、汚したくない……。そうして迷っているうちに、こうして捕まってしまったのだ――と。

うるがんよ。悪魔と共に我々を憐んでくれ。我々にもまた、それと同じやうな悲しさがある。

という結び(オチ)。

要するに、うるがんさんは、「悪魔」でさえも清らかな乙女を汚すことに躊躇を覚えるのだから、この「悪魔」と同じ悲しさをもつ人間もまた、清らかなるものを乱暴に汚してはならないのだと、信長さんを諫めたということになるのでしょうか。

すなわち、うるがんさんの恋愛指南?

しかしながら、逆に、清らかだからこそ、汚してみたい衝動に駆られた「悪魔」の気持ちが、人間にもあるということになりますよね? 美しいものを汚したいというか、綺麗なものを壊したいというか、そういった願望にも通じているのではないでしょうか。

たとえば、白いキャンバスや壁を見ると、無性に何かを書きたく(落書きしたく)なったりとか、まだ誰の足跡も刻まれていない真っ白な雪原に、第一歩を踏んでみたいとか。

こういった衝動は、征服欲とでも言い表せばいいのですかねえ。美しいものを、自分のところまで、もしくは自分より下に、落としてやりたい、「悪魔」的に言うところのまさに堕落させてやりたい、みたいな。

僕は、上の例のような場合には、できるだけそのままにしておきたい質なのですが……、ここら辺は人によってちがうのでしょうか。友達とかと話してみて、検証したいところです。

あるいはアイドル崇拝的なことにも通じるものがあるのでしょうか。アイドルは、付き合う対象じゃなくて、見ているだけで満足、みたいな話も聞きますし。相手が綺麗すぎると、キスとかできない、そういう対象として見られない、みたいな。

かと思えば、フランスの哲学者ジョルジュ・バタイユさんなんかは、その著書『エロティシズム』のなかで、以下のようなことを言っていたりします。

人間性は、侵犯され、冒涜され、汚されるのだ。美が大きければ大きいほど、汚す行為も深いものになってゆく。

すなわち、これは人が美というものを追い求める理由について説いていて、簡単に言ってしまえば、人間は美を汚すことで喜びを感じられるから、ということになります。

やはり、清らかなので汚したくない、清らかだからこそ汚してみたい、といった二面性が、「悪魔」と同じように「人間」にもあるよ、といったお話なのでしょう。

ただの恋愛指南かと思いきや、哲学的な内容も含まれている――、さすがうるがんさん! てか芥川龍之介さん! といった感じでしょうか(違う?)。

この二面性については男女差も結構ありそうですよね。複数の男女間で話し合ってみてもおもしろそうです(合コンのネタにはかたすぎますかねえ――、いや、知的アピールができる、かも?)。

今回の小説読書感想のまとめ。

芥川龍之介さんの『悪魔』は、人間の「心理」を、「悪魔」という存在に投影して、見事に描き出した小説だと思いました。

今回の裏・小説読書感想。

ひょっとして、芥川龍之介さんの『悪魔』は、人間の「性癖」を、「悪魔」という存在に投影して、見事に描き出した小説だった?

以上、『悪魔 芥川龍之介』の小説読書感想でした。

僕もプレイしたい! ペルソナシリーズ最新作『ペルソナ5』

だけど持ってない! PS4……

今回のブログ記事にて取り上げた漫画

・『HUNTER×HUNTER』


・『青の祓魔師』

・『To LOVEる -とらぶる-』

カッコいい芥川龍之介さんが大活躍する『文豪ストレイドッグス』


最後までお付き合いいただきありがとうございました。

それでは今日はこの辺で。

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