赤とんぼ/新美南吉=古代に巨大だった虫が現在小さい理由は?

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

赤とんぼ-新美南吉-イメージ

今回は『赤とんぼ/新美南吉』です。

文字数3500字ほどの童話。
狐人的読書時間は約10分。

お嬢ちゃんと赤とんぼの心の交流。山田のあやしい言動。
あたたかくてせつなくて、創作意欲をかき立てられるお話。
問.昆虫が巨大化するために必要なものは何?
(巨人化注射ではない)

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

いつも休む一本の垣根かきねの竹の上に、チョイととまった赤とんぼ。初夏の山里の昼は静か、いまこの別荘には誰もいない。

三人の人間がやってきた。一番最初にかけてきたのは、赤いリボン帽子のかわいいお嬢ちゃん。続いてお母さんと書生さん。

お嬢ちゃんが怒るとこわいな――思いつつも我慢できず、赤とんぼはお嬢ちゃんの赤いリボンにとまる。

お嬢ちゃんは赤とんぼをつかまえようとはせず、「まあ、あたしの帽子に! うれしいわ!」と言ってはしゃぐ。

あどけない歌声に誘われて、赤とんぼがやってくると、お嬢ちゃんは庭で湯あみをしている。

お嬢ちゃんは両手を高くさし上げて「あたしの赤とんぼ!」とうれしそう。赤とんぼもうれしかった。

そこに「背中を洗いましょうか」と書生さんがやってくる。お嬢ちゃんは「いや!」。

書生さんは赤とんぼを見つけると、右手をグルグル。赤とんぼは書生さんにつかまってしまう。

「ばか!」と、お嬢ちゃんが助けてくれる。赤とんぼはホッと空へ飛び上がる。良いお嬢ちゃんだな。

赤とんぼは罪のない蜘蛛の血を浴びて、赤とんぼになったんですよ――書生さんがお嬢ちゃんに話をしている。

赤とんぼはそんなことした覚えはないけれど、と首をかしげる。

お嬢ちゃんは「うそよ! あんなかわいい赤とんぼが、そんなひどいことするはずないわ!」と大声で叫ぶ。

赤とんぼは本当にうれしく思って、お嬢ちゃんの肩にとまる。お嬢ちゃんの瞳は黒く澄んでいる。

お嬢ちゃんは東京へ帰ってしまった。

さびしい秋の夕方、赤とんぼは尾花おばな穂先ほさきにとまって、かわいいお嬢ちゃんを思い出している。

狐人的読書感想

田舎の夏の別荘、かわいいあどけないお嬢ちゃんと赤とんぼとの心の交流、別れの秋――あたたかくてせつなくて、とてもいいお話でした。

赤とんぼには心があり、だけども言葉は話せず、それなのにお嬢ちゃんと赤とんぼの心は通じ合っているんですよね。

人は互いに話ができて、意思疎通が可能なはずなのに、なかなか自分の気持ちを相手に伝えられなかったり、あるいは相手の気持ちをわかってあげられなかったり――日々人間関係に悩まされているように感じています。

だから、姿かたちも違って、意志の疎通ができないはずのお嬢ちゃんと赤とんぼが、ちゃんと心を通わせているあたりに深く感動してしまいます。

本当にいいお話です。新美南吉さんはこれを中学3年生の2学期に書いたといいますから、本当にすごい才能だなあ、などと感心してしまいます。

まあ、いつもながらひねくれものの僕が、うがった見方をするならば、赤とんぼに心があるように見えるのは、ただの人間の主観でしかないわけで、この作品そのものが人間のエゴそのものだといえるのかもしれませんが(いえないのかもしれませんが)。

さらに、書生の山田の、お嬢ちゃん(幼女)への執着を感じさせるような、赤とんぼへの嫉妬を感じさせるような、あやしい言動からあやしい想像力をかき立てられてしまうのは、僕だけ?

とかなんとか、なんだか感動の読後感を台無しにしてしまうようなことをいってしまいました(ごめんなさい)。

とはいえ、生物同士はこうありたいという、一つの理想が描かれているのは間違いない気がします。

あたたかくてせつなくて、とてもいいお話です(説得力……)。

ところで、赤とんぼって、正式名は「あきあかね」っていうんですよね。秋茜――狐人的にはこちらの呼び名も趣があっていいと思うのですが、そういえば正式名よりも俗称のほうが知られているものって、けっこうあるような気がします。

とんぼの目は複眼ですが、これは不可視光を見ることができ、三原色(人間が識別できる赤・緑・青)以上の色が識別できるというのはおもしろいな、と思ったことがあります。

複眼の昆虫は、人間が見るよりも色鮮やかな世界を見ているといいますが、いったいどんなふうに見えているのかなあ、みたいな。

とんぼはヘリコプターのようなホバリングもできるし、複眼と併せて昆虫の能力って、驚くべきものがありますよね(『テラフォーマーズ』のM.O.手術のベースに、たしかオニヤンマがありましたっけ)。

昆虫が巨大化したら最強なんじゃないか、というようなことはよく思うのですが、3億年前にはメガネウラという65センチもあるとんぼがいたそうで、鷹ほどもあるとんぼが飛び回っていた世界って、見てみたいような見てみたくないような……。

ふと、「なんで現在の昆虫は大きくならないのだろう?」と疑問に思って調べてみました。

有力説の一つとして、「現在の地球の酸素濃度が関係しているのでは?」というものを知りました。

昆虫には肺がないので、脊椎動物よりも酸素の吸収効率が悪く、ゆえに現在の大気の酸素濃度21%ほどでは巨大化するのは難しいのだとか。

メガネウラのいた3億年前の地球の酸素濃度は32%くらいだったといいますから、約10%でそこまで違ってくるのかと驚きました。

このような昆虫の生態や能力を含め、新美南吉さんの『赤とんぼ』は創作意欲をかき立てられて、非常におもしろい作品でした。

読書感想まとめ

あたたかくてせつなくて、創作意欲をかき立てられます。

狐人的読書メモ

アレンジできそう。

・『赤とんぼ/新美南吉』の概要

1928年(昭和3年)『柊陵』(十周年記念号、愛知県立半田中学校学友会会誌)にて初出。南吉が中学3年生2学期に書いた作品。

以上、『赤とんぼ/新美南吉』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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