狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『青い絨毯/坂口安吾』です。
坂口安吾さんの『青い絨毯』は文字数10000字ほどのエッセイ。
狐人的読書時間は約31分。
芥川龍之介さんの書斎で友人と同人誌を作る坂口安吾さん。
青春。
なんか『バクマン』を連想した。
徹夜のこと。速筆のこと。孤独のこと。雪舟のこと。
坂口安吾さんの随筆・エッセイが面白い今日この頃。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
若かりし頃の坂口安吾さんは、友達の葛巻義敏さんと同人誌を作っていたそうです。この葛巻さんが、かの芥川龍之介さんの甥御さんだったそうで、作業場として芥川さんの書斎を使っていたのだとか。なんか恵まれた環境だなあというかすげーというか。しかし坂口さんはこの書斎が嫌いでした。「死の家」とか呼んだりしてます。
坂口さんと葛巻さんは、同人誌の編集作業に追われ、よく徹夜をしたそうです。葛巻さんはたった一夜で百何十枚という小説を書いたらしく、すごい速筆で羨ましいかぎりです。坂口さんもそれにつられて分厚い海外書を一夜で翻訳したそうですが、わからないところを飛ばして、それで難解な内容が明快になって、それを褒められて困ったといいます。坂口さん曰く、徹夜は若い頃のほうがしんどかったといいますが、一般的には逆な気がします。どうなんでしょうね?
葛巻さんはとにかく良い同人誌を作りたかったそうですが、坂口さんはとにかくできたものを売って、作家としての評価を得たかったようです。ときに口論しながらも、ひとつのものを共同で作る楽しさ、青春を感じます。坂口さんは売れたいけど、売れたのを芥川さんの書斎という恵まれた環境があったからだ、とは思われたくなかったそうです。書斎を嫌った一因だったようですね。
坂口さんは京都に住んでいたこともあったそうです。その理由が、友達と離れて孤独を追求するためといいますから、ずいぶん変わってます。それで病気になって、家主を訪ねてくる借金取りを待ち焦がれるほど人恋しくなり、久々に再会した友達と飲んだら病気が治ってしまうあたり、寂しがりな一面もあったのでしょうか? それともこれこそが真の孤独の実感だったのでしょうか?
ところは東京へ戻り、ある日の暮れ方、坂口さんが駿河台下の道を一人歩いていると、レインコートの青年に呼び止められました。十分か十五分、手近な喫茶店で話をすると、あなたには美しい女友達がたくさんあって羨ましい、といった様子の青年。そんなわけないのだけれど、案外世の中こんなものか、と坂口さんは思います。みんな他人が幸福だと思っているだけ。
狐人的読書感想
――みたいな感じの坂口安吾さんのエッセイでした。
坂口安吾さんにとっての芥川龍之介さんの書斎(その家に敷かれていた青い絨毯)に象徴されるような、暗い印象を受けなくもないのですが、いまにして思えば苦しかったけど楽しかったなあ――みたいな感じもします。
「暗い青春」を描きたかったものなのか、それとも「いい思い出」を描きたかったのか、……狐人的には判断に迷う作品でした。
とはいえ、まだそんなに読んでいるわけではないのですが、坂口安吾さんの随筆・エッセイはちょっとおもしろく感じます。読むのが苦にならないというか。普段あまり読まないのですが、随筆・エッセイって結構おもしろいものなんですかね? それとも坂口安吾さんのだからそう感じるのでしょうか?
――とか思う今日この頃なのです。
徹夜のこと
『青い絨毯』には狐人的に興味深い記述がいくつかありました。
まずは徹夜について。
坂口安吾さんは徹夜について、『青い絨毯』の中で「いったい徹夜というものは壮年健康な時ほど疲労が劇しいようである」と語っています。
これってどうなんでしょうね?
「若い頃は徹夜全然平気だったけど年を取るにつれてしんどくなってきた」というのが一般的なイメージのように思ったのですが。
しかしながら、ネット上のとあるアンケート調査によれば、「徹夜がしんどくなってきた年齢」の第1位はなんと「22歳」。続けて25歳、23歳……と、上位を20代前半が占めていて――坂口安吾さんの弁はあながち間違ってはいないのかもしれません。
「遊びの徹夜」と「仕事の徹夜」の違いとかもあるのでしょうか?
ともあれ「勉強の徹夜」だけはしないほうがいいと聞きます。なんでも記憶というものは睡眠によって整理され定着するそうで、一夜漬けによる記憶はすぐに忘れてしまうのだとか(……ひけらかすほどの知識でもなかったか)。
仕事の徹夜は単純作業にかぎれば作業量が増えるので、一見よさそうに思うのですが、集中力を欠いてミス連発して結局やり直し……、とかなってしまうと、余計に時間がかかって効率的ではなさそうですね。
対して、深夜は妙に気分が高揚して(オールナイトハイ?)夜の遊びは楽しいばかり――遊びの徹夜にはデメリットがないように思えますがどうでしょう? ……まあ、そのまま朝を迎えて、建物から出て浴びる朝日の気怠さとか、休日を寝て潰してしまった喪失感とかあるんですかね?
徹夜は時と場合で賢く使い分けましょう!
――みたいな話にしたかったのですが……、徹夜はできるだけしないほうが無難かもしれません。
速筆のこと
つぎは葛巻さんの速筆について。
「たった一夜で百何十枚という小説を書く」というのは、羨ましいというかすごいというか。しかもパソコンがなかった時代、手書きでというのは凄まじいですね。
『〈物語〉シリーズ』でおなじみな、速筆で有名な小説家・西尾維新さんは「投稿時代1日最高200枚書いたことがある」といった速筆伝説をお持ちですが……、他に『とある魔術の禁書目録』の鎌池和馬さんとかも速筆で有名なようです。速くしかもおもしろいものが書けるというのはものすごい才能だと思わされてしまいます。
徹夜で、同じ部屋で、一心不乱に創作に打ち込む坂口安吾さんと葛巻義敏さんの姿を想像すると、なんとなく『バクマン』を思い浮かべてしまうのですが、青春っぽくて楽しそうですね。
このイメージが、僕に作品の暗さを感じさせない要因なのかもしれませんが、どうでしょうね。
一方で創作は孤独な作業という印象が拭えませんが。漫画家さんなどはアシスタントさんと机を並べて作業するイメージがしやすいですが、小説家さんだとやはり孤独な作業の印象が強いです。最近はSNSやインターネットを介してコミュニケーションできるので、同じ部屋で作業というのはもう古いのかもしれませんが、それってなんかいいなあとか感じました。
孤独のこと
ところで孤独といえば、
一切友人を離れ、本当に孤独というものを底の底まで突きつめてやれ
――というのはどういう心境だったのでしょうね。
前述したように創作とは孤独な作業のように思うので、いまさら改めて孤独を感じる必要があったのかなあ……、という気がしましたが。
やはりいつも一緒に同人誌を作っていると、独りという気持ちがしなかったのでしょうか?
なんだかそれはそれで恵まれているようにも思うのですが、それじゃダメだ! ――みたいな感じ? なんか深いようにも思うのですが、ちょっとわからないところでした。
反対に病気で人恋しくなっちゃうあたりはわかる気がします。
「弱っているときがチャンス!」とか言ってしまうと、肉食系女子が恋愛を有利に進めるための常套手段、という気がしてしまいますが、どうでしょうね。
まあやりすぎて失敗みたいな話もあるようですが。
とはいえ、弱っているときのちょっとした言葉や心遣い、というのは結構有効なような気がしますが――というようなことを思わされたというお話でした。
雪舟のこと
最後に「昔、涙で鼠を書いた絵描きの子僧がいた」という記述が気になりました。調べてみると、これは水墨画で著名な雪舟さんについての伝説をいっているようですね。
幼い雪舟さんがお寺に入ったばかりの頃、絵ばかり描いてお経を読もうとしなかった。するとお寺のお坊さんが、お仕置で雪舟さんを柱に縛りつけた。だけど雪舟さんは床に落ちた涙を墨に、足の親指を筆にして鼠の絵を描いた。その見事さにお坊さんが感心して、以後雪舟さんが絵を描くことを許した。
――といったお話でした。
かなり有名な話のようですが、恥ずかしながら知りませんでした。
読書感想まとめ
坂口安吾さんの随筆・エッセイがおもしろいと思う今日この頃。
狐人的読書メモ
随筆・エッセイそのものがおもしろいのか……、もっと読んでみようか……。
・『青い絨毯/坂口安吾』の概要
1955年(昭和30年)『中央公論』(4月号)にて初出。坂口安吾の青春時代が綴られたエッセイ。
以上、『青い絨毯/坂口安吾』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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