狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
西尾維新 さんの『押絵と旅する美少年』は「美少年シリーズ」第四作! 今回は「美声のナガヒロ(咲口長広)」回ということでいいでしょうか? ついに噂の婚約者(小一)登場! ――ということで、デレ幼女にたじたじの、あるいは幼女にデレる咲口先輩を期待している読者には、ちょっと物足りない展開かもしれませんが、しかしてしかし、シリーズもまだまだ四作目、この展開はただの伏線に過ぎない? 未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
美少年探偵団六番目の団員となった瞳島眉美。団長・双頭院学、美声を操る生徒会長・咲口長広、料理上手の不良・袋井満、美脚と健脚を誇る足利飆太、寡黙な芸術家・指輪創作――強烈な仲間と過ごす日々にも、ようやく慣れてきた。しかしある日、探偵団の事務所に巨大な羽子板が出現。敵対勢力からの挑戦なのか、はたして……。美少年の弱点が明らかになる美少年シリーズ第四作!
押絵と旅する美少年
0 まえがき
音楽室。眉美は咲口先輩とふたりきりの声楽レッスン――なんで!?
1 座敷童
ある日の放課後、美術室(美少年探偵団アジト)に向かう途中の廊下で、眉美は座敷童(のような少女)と遭遇する。ひどい毒舌を浴びせられる。この本は「物語シリーズ」ではないことを確認!
2 優しい不良くん
座敷童――百合花ちゃん(仮名)――が去ってのち、不良くん(袋井満)登場。いきなりの『ブギーポップ』発言ににやり。百合花ちゃん(仮名)の毒舌の後には、不良くんの皮肉さえ優しく感じる眉美。美術室に入ると、見覚えのない巨大な押絵羽子板があった。
3 押絵羽子板
咲口先輩を除くメンバー集合。犯人を議論するも答えは出せず――常識的な推理と調査はやはり咲口先輩、ということで、話題はリーダー主導で、美少年探偵団冬期合宿へ……。
4 川池湖滝
いやいや、有力な容疑者を目撃してるじゃん! そんなわけで眉美は経緯を説明。合宿の話で楽しそうだったメンバーのテンションがた落ち……。百合花ちゃん(仮名)の名前は川池湖滝、咲口先輩の婚約者で、美少年探偵団とはある因縁があった。
5 極秘任務(お使い)
百合花ちゃん(仮名)と美少年探偵団の因縁とは、百合花ちゃん(仮名)の手で美少年探偵団夏期合宿を中断に追い込まれたことだった。そんなわけで、リーダーの指示を受けて、眉美が咲口先輩を生徒会室まで呼びに行くことに――
6 指輪学園中等部生徒会執行部
咲口先輩に状況説明。期待を裏切る(?)『私にはこの事件の真相が最初からわかっていました』みたいな反応(にやり)――というのも、以前百合花ちゃん(仮名)は美少年探偵団への入団を断られていた。眉美の入団を受けて、この事態は危惧されていた。
7 合唱コンクール
美少年探偵団入団以降、男装で学園生活を送ってきたことが災いして、指輪学園の年末恒例行事であるクラス単位の合唱コンクールで、眉美は男性パートを担当することに。低い声の出し方を教えてほしいと咲口先輩に乞うと、咲口先輩は条件を出す。それは百合花ちゃん(仮名)と友達になること。そんな無茶な。
8 六名全員集合
場面は再び美術室。美食のミチルの晩餐。百合花ちゃん(仮名)が、処分するのも難しい巨大な押絵羽子板を、美術室に持ち込んだ方法は?
9 不可能犯罪(性)
推理すべきは2つ――
- なぜ(動機)
- どうやって(方法)
1は咲口先輩がおおよその見当がついている。問題は2。彼女の体格では持ち運びは不可能。台車を使っては校舎の階段は上れず。人に頼むのも友達のいない悪魔的性格ゆえに無理。では分解して持ち込んだ――羽子板に継ぎ目跡なし……。リーダーの指示で結論は明日早朝に持ちこし、各自美しい推理を持ち寄ること。それから合宿先の希望も。
10 悪魔との再会
翌日早朝、まずは声楽レッスンのため眉美は音楽室へ。途中、百合花ちゃん(仮名)と再遭遇。やはり毒舌だけを残して去っていく。重要な伏線あり。
11 考察
逆ハーの事実を認めたくない眉美(笑)
12 低音レッスン
音楽室、レッスン終了。咲口先輩が本人から自白を取ることには失敗。川池湖滝の生い立ちと、美少年探偵団とのいざこざの詳細が次章で語られる。
13 悪魔の降誕(祭、は横溝正史先生の作品)
川池家は没落貴族だった。悪魔的性格の歪みはそのせい。咲口先輩の婚約は、没落した川池家を救うための形式。そこに湖滝は義務感を感じ、以来咲口先輩に猛アプローチ。あるとき、定期的なデートと、美少年探偵団の夏期合宿がバッティング。合宿妨害のため、湖滝はリーダーを階段から突き落とした。
14 羽子板の理由
リーダーは大事には至らず、足を痛めて夏期合宿は中止に。リーダーへの忠誠心のみで繋がっているようなグループに、その手段は最悪。よく無事でいられたな湖滝。リーダーは『足が滑っただけだ』と湖滝を庇い、メンバーの手出しを禁じた。以降、湖滝と美少年探偵団の間に接触はなかったが、眉美の入団がトリガーとなった。押絵羽子板の動機(1)は婚約者アプローチ?
15 婚約破棄
アジト(美術室)にて、推理結果発表会。リーダー、『魔界トンネル』説……。生足くん(足利飆太)、『根性』論……。不良くんが『羽子板そのものを台車』に……、と昨日の推理を発展させるも階段の問題を解決できず……。いよいよ眉美の順番かと思いきや、咲口先輩が湖滝との関係を断てば、犯行を暴いて反省を迫らずとも問題は解決するのだと不良くんが指摘し――リーダーの件もあって、我慢も限界の咲口先輩は、婚約破棄を決断する。
16 美観のマユミ
それを受けてリーダーが眉美に問う。
「本当にこれでいいのか?」と。
眉美は考える――
「星を探す者は」
「空ばかり探す――だけどゆめゆめ忘れてはならない。俯いたときに見える地面も、また星だ」
西尾維新(2016)『押絵と旅する美少年』講談社タイガ,p.164,165
今回は最後まで喋らずに行くパターンかと思いきや、突然喋った天才児くん(指輪創作)の予言めいた助言を得て、眉美は真相に着地する。
17 エピローグ
合唱コンクールはみんなが一等賞。湖滝が美少年探偵団アジトである美術室に巨大な押絵羽子板を設置した動機(1)と方法(2)が判明する。いったいどうやって? さらに真の動機とは? 本当に婚約者アプローチだったのか?
その答えはぜひ『押絵と旅する美少年/西尾維新』をご一読あれ!
人間飆
陸上部の1年生エースである生足くん(足利飆太)。指輪学園から唯一地区大会の決勝へ出場することに。リーダーの指示で、美少年探偵団代表として眉美はひとり応援に赴くも――競技場に指輪学園生徒はおろか陸上部の姿さえ見当たらず……、なんで!? 「美脚のヒョータ」を描くショートストーリー。
狐人的読書感想
さて、いかがでしたでしょうか。
眉美のひねくれものぶりに拍車がかかり、ひねくれものの僕としては狐人的に楽しめました。眉美には、ぜひ以下の作品を読んでもらって、その感想を聞かせてほしいところです(⇒君の膵臓をたべたい/住野よる=狐人的感想「とてもいい物語ですが、ひねくれものには感情移入に難あり?」)
あいさつのところでも書きましたが、今回は「美声のナガヒロ」回という感じで、ついにあの一面が明らかになるのか――と思いきや、とくに意外な展開とはならず……、しかしシリーズもまだ四作目なので、今後に期待! ということ?
百合花ちゃん(仮名)の由来である『立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花』の慣用句は、サンカクヘッド さんの漫画『干物妹!うまるちゃん』のアニメOP『かくしん的☆めたまるふぉ~ぜっ!』を思い浮かべてしまい、狐人的「にやり」でした。『放つ言葉は薔薇の棘』の付け足しも、百合花ちゃん(仮名)の悪魔的毒舌を語呂良く表していて、秀逸です。
不良くんの『ブギーポップ』(発言)は笑わない――いえ笑いました。西尾維新 さんは、『戯言シリーズ』が「ブギーポップシリーズ」のオマージュだとはっきり明言している――というのは有名な話ですよね。とかいいつつ、上遠野浩平 さんの「ブギーポップシリーズ」は、挑戦しようとして第一作『ブギーポップは笑わない』を読んで挫折した記憶があります。たしか多重人格要素があったように思い、『ジキル博士とハイド氏』や『多重人格探偵サイコ』が好きな僕としては、はまりそうな印象を持っていたのですが……、ぜひ再チャレンジしたいところです。
西尾維新 さんの作品といえば、やはりメタ表現は欠かせない、と思うのは、きっと僕だけではないように思うのですが、『押絵と旅する美少年』にも上記のようなメタ表現があって楽しめました。他の漫画作品やラノベに限らず、「物語シリーズ」や「忘却探偵シリーズ」といった自身の作品をメタとして利用することが多くなってきていて、ファンは嬉しい限りですよね。おかげで、「美声のナガヒロ」の「噛んだことない」発言を、ひょっとして八九寺真宵? と深読みしてしまう弊害も僕の読書には見られしたが……。
オマージュといえば、「美少年シリーズ」は、江戸川乱歩 さんの少年探偵団がモチーフとなっていますよね。タイトルも――
1.『美少年探偵団 きみだけに光かがやく暗黒星』= 『暗黒星』
2.『ぺてん師と空気男と美少年』 =『ペテン師と空気男』
3.『屋根裏の美少年』 =『屋根裏の散歩者』
4.『押絵と旅する美少年』=『押絵と旅する男』(『人間飆』=『人間豹』)
そして次は、美少年探偵団冬期合宿先、
5.『パノラマ島美談』=『パノラマ島奇談』
……すでに刊行されていますが、まだ未読。こちらも有名な話ですが、西尾維新 さんの執筆スピード「ぱないの!」ですね。読書スピード追いつかず……。
また読んだら、ぜひブログに書きたいと思いますが(既読作も追って)、江戸川乱歩 さんの小説についても書いているので、西尾維新 さんの「美少年シリーズ」とリンクさせていきたいですね。
6.『D坂の美少年』(2017年春刊行予定)=『D坂の殺人事件』(⇒小説読書感想『D坂の殺人事件 江戸川乱歩』超推理! 明智小五郎 鮮烈 デビュー!)
みたいな(公開済みブログ記事の関係上こんな先取りをするはめに……)。
つぎはぜひリアルタイム(?)でリンクさせたい!
読書感想まとめ
- 「美観のマユミ」のひねくれものぶりに狐人的シンパシー!
- 「美声のナガヒロ」の今後に期待!
- 百合花ちゃん(仮名)とうまるちゃん
- メタ表現がファンには嬉しい
- 西尾維新 さんの「美少年シリーズ」と江戸川乱歩 さんの「少年探偵団シリーズ」の読書感想ブログ(予定)をリンクさせていきたい!
狐人的読書メモ
・『押絵と旅する美少年/西尾維新』の概要
「美少年シリーズ」第四作。『押絵と旅する美少年』=『押絵と旅する男』(『人間飆』=『人間豹』)のオマージュ。「美声のナガヒロ」回。
ボタン科の多年草。
押絵が施された羽子板。ちなみに広島のおみやげ物屋さんに杓文字がある。
ソファーとセットになった足置き。もともとオスマン帝国を表す言葉。オスマン帝国で使われていた椅子には背もたれがなかった。それが18世紀イギリスに伝わった際、オットマンと呼ばれるようになった。
・シームレス(p.112)
継ぎ目のない状態のこと。
・鉛直線(p.117)
重力の方向、おもりをつり下げた糸が示す方向の直線。
・章題(p.122)
章タイトル。節タイトル。
・東西東西(p.138)
興行物などで述べる口上。もとは相撲で「東から西までお静まりなさい」という意味。
・カワバンガ!(p.153)
サーファースラング。「やったぜ!」。「『彼』が運んで来た」⇒「『波』が運んで来た」のもじりから。
以上、『押絵と旅する美少年/西尾維新』の読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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