狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『のんきぼうず/グリム童話』です。
文字数10000字ほどのグリム童話。
狐人的読書時間は約21分。
ウソをつく、人に迷惑をかける。行き当たりばったりな人生。だけど、だからこそ、自分が持っていないのに、ひとに分け与えることができる。それは天国へ至る道。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
昔大きな戦争があり、それが終わるとたくさんの兵士がクビになり、のんきな男もそんなうちの一人で、パン一つと四クロイツァーのお金だけを受け取って旅に出た。
途中、聖ペテロが乞食姿で現れて、男に施しを求めた。男はパンを四つに分けて、そのひとかけらと一クロイツァーを渡した。聖ペテロは同じことを二度繰り返し、男はそれぞれパンのひとかけらと一クロイツァーを分け与えた。男は居酒屋に入ると、最後のパンを食べ、一クロイツァー分のビールを飲み、旅を続けるのだった。
聖ペテロは今度は兵士に扮して男に近づいた。しかし男にはもう分け与えるパンもお金もなく、一緒に乞食をしようと誘った。聖ペテロは医術の心得があるからすぐに稼げるよ、と言い、男と一緒に旅をすることにして、何か稼いだら半分やるよ、と約束した。
旅の途中で立ち寄った農家で、亭主が重い病にかかっており、聖ペテロはポケットから軟膏を取り出して、亭主の病気を癒した。夫婦はお礼をしたいと申し出たが、聖ペテロは何も受け取ろうとはしなかった。そこで男がかわりに子羊をもらうことになった。
それから森で男は子羊を料理した。聖ペテロは「料理にかかわりたくない、おれが帰るまで食べ始めないでくれ」と言って、出かけていた。男は子羊の心臓だけ先に全部食べてしまった。聖ペテロは帰ってくると「羊の心臓をくれ」と言い出した。男は「羊には心臓がない」と言ってごまかした。
二人はさらに旅をした。聖ペテロは進む道の先に大きな川の流れを作った。男は川が深すぎることを考えて、聖ペテロを先に川へ入らせた。聖ペテロが無事に川を渡り終わってから、男は川の中に入ったが、水はどんどん深くなり溺れそうになった。男は聖ペテロに助けを求めたが、聖ペテロは「子羊の心臓を食べたと白状するか?」と男を問い質した。男は白状しなかったが、聖ペテロは男を川から助けてやった。
二人はある国にやってきた。そこでは姫が亡くなって、王がとても悲しんでいた。聖ペテロは姫の手足を全部取り、水の入った釜に入れて、火を焚いて煮込んだ。そして、姫の骨を正しい順番に並べると、「三位一体の名にかけて、死者よ、立ち上がれ」と三回と唱えた。姫は復活した。王はとても喜び、褒美を与えようとしたが、聖ペテロは受け取ろうとしなかった。かわりに男が背のういっぱいの金貨をもらった。
森にさしかかると、男は金貨を分けようと聖ペテロに言った。そこで聖ペテロは金貨を三つの山に分け、「一つはおれの分、一つはお前の分、一つは子羊の心臓を食ったやつの分だ」と言った。男は二つの金貨の山を取った。聖ペテロは以前男が「羊に心臓はない」と嘘をついたことを非難した。二人はここで別れることになった。
男はやがて金貨を使い果たし、ある国で姫が亡くなったという話を聞いた。男は城へ赴き、釜で姫の肉体を煮て骨を取り出し、並べてあの呪文を三回唱えたが、骨の順番がでたらめだったので、復活させることができなかった。そこへ聖ペテロが突然窓から現れて、見返りを受け取らないことを条件に、今回だけ姫を復活させてくれた。男はまたしても背のういっぱいの金貨を手に入れて、さらに聖ペテロは男の背のうに「お前が入ってほしいものはなんでも入る」という性質を与えた。
男がまた無駄遣いして、最後のお金で居酒屋で飲んでいるとき、厨房から二羽のかちょうを焼くいい匂いがただよってきた。男は金を払って外へ出ると、「二羽の焼いたがちょうはかまどから出ておれの背のうへ入るように」と言った。こうして手に入れたがちょうを草原で食べていると、二人の旅人が通りかかり、物欲しそうな目で残り一羽のがちょうを見ていたので、男はその一羽を旅人たちに与えることにした。旅人たちは居酒屋に持っていってがちょうを食べたが、店の亭主に盗んだのだとカン違いされてこん棒でぶちのめされてしまった。
男はさらに旅を続けて、すばらしい城があるところにさしかかったが、その城には悪魔が出るとの悪評が立っていた。男は周囲の反対を押し切ってその城に一晩泊まることにした。男が寝入ると九人の悪魔が現れて大騒ぎを始めた。男は「お前たち九人とも背のうの中に入れ!」と言った。翌朝、城の持ち主がやってきたので、男は悪魔を退治したことを告げた。
男は鍛冶屋に入って、背のうをハンマーで叩くように、職人たちに頼んだ。悪魔たちはめちゃめちゃに叩かれ息絶えたが、一人だけ生き残り地獄へ逃げ戻った。
男は旅を続けるうちに年をとり、やがて亡くなることを考えはじめた。隠者のところへ赴き、天国へ入れる方法を尋ねた。広くて楽な道は地獄に通じ、狭くて苦しい道は天国へ通じている――男は狭くて苦しい道へ行くのはバカバカしいと考え、広くて楽な道を選んだ。
男が地獄の門にたどり着くと、門番をしていたのはあの逃げ出した九番目の悪魔だった。悪魔は散々な目に遭っていたので、男が地獄に入るのを拒んだ。しかたがないので、男は天国の方へ向きを変えた。男が天国の門にたどり着くと、そこでは聖ペテロが門番をしていた。聖ペテロは「お前を天国へ入れる気はない」と言った。男は「ならばかわりにこの背のうだけでも天国へ入れてほしい」と頼んだ。聖ペテロはその頼みを聞き入れた。男は「おれが背のうに入るように」と言った。男は天国の中の背のうに、つまり天国の中にいた。聖ペテロはしかたなく、男を天国においてやることにした。
狐人的読書感想
本作の主人公、のんきぼうず、男はまっとうなひとではないみたいですが、はじめに聖ペテロに善性を示します。
そしてその後はつぎつぎと悪性を示すことになるのですが、男はそれなりに自分勝手に人生を謳歌し、結局天国に入ることもできました。
いろいろ悩みながらややこしく生きるよりも、行き当たりばったりで何も考えずに生きた方が、人生楽だし楽しいよ、ということなのかもしれませんね。
自分も充分に持っていないとき、その物を他者に分け与えるというのは難しいことですが、行き当たりばったりだからこそそれができてしまうというのは羨ましい性質のように、僕には思われました。
のちに嘘をついたり、ひとに迷惑をかけたりする男が、このような善行を行えるというのは、たぶん人間の持つ二面性を如実に表しているような気がします。
善く生きるとか悪く生きるとか考えないで、行き当たりばったりで生きていてもいいのかな、やっぱりダメなのかな……、なんていろいろと人生を考えさせられた、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
行き当たりばったりが一番いい生き方?
狐人的読書メモ
・『のんきぼうず/グリム童話』の概要
KHM81。原題:『Bruder Lustig』。第2版で「鍛冶屋と悪魔」に代わって追加。パッシーがウィーンで聞き取った話という。
以上、『のんきぼうず/グリム童話』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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