狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『階段/海野十三』です。
文字数18000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約44分。
主人公は脚に恋をする。大学卒業後、その脚の女性と再会する。そして起こる殺人事件。フェティシズムと化学が融合したミステリー。ちなみに主人公が目覚める性癖は一つではない。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
大学三年生のとき、古屋は友江田先生の手伝いで、信濃町駅の階段で通行量調査を行う。女性客を担当することになった古屋は、階段下で脚を見ていれば効率的に調査できることに気づく。そしてある脚に恋をする。その脚の持ち主である女性は階段の途中で立ち止まり、友江田先生の顔を注視していた。「もう時間だ。やめよう」と言った友江田先生の様子は明らかにおかしかった。その翌日も女性は階段を上っていったが、立ち止まることはなかった。友江田先生の顔色を知りたかったが、窺う余裕はなかった。古屋は女性の脚に恋焦がれながら一週間の調査期間を終えた。
大学を卒業すると、古屋は国立科学研究所に入所して、所長の芳川博士の下で研究助手として働くことになった。先輩の四宮理学士が所内を案内してくれた。図書室の事務室で、図書係主任兼、天才女理学士の佐和山女史を紹介された。そして図書係の京町ミチ子と再会した。ミチ子は古屋が恋したあの足の持ち主だった。当然ミチ子は古屋のことを知るはずもなく、二人は初対面の挨拶を交わした。
古屋は研究課題の調査にかこつけて図書室へ通うようになった。図書室は螺旋階段でつながっているふきぬけの三階建てだった。古屋はいつも三階で雑誌や珍書を手に取っていたが、ミチ子が三階まで来ることはなかった。入所して十日後に事件は起こった。芳川博士が図書室の二階でネクタイを使って絞殺されたのだった。古屋はそのときも三階にいて、物音を聞きつけ第一発見者となる。
一番近くにいた第一発見者ということで警察に疑われたことから、古屋は素人探偵よろしく独自の調査を開始する。いつも二階で調べ物をしていたはずの四宮理学士、図書室事務所にいたはずの佐和山女史、そしてミチ子……それぞれに聞き込みをするも、芳しい話を聞きだすことはできなかった。しかしこの三人の中に犯人はいる、と古屋は確信している。
古屋はある直感を抱く。それは「図書室の三階に犯人が取り出したい重大な秘密が隠されているのではないか?」ということだった。人知れず三階へ上ろうとしている人物を見つけ出せば、その人物は犯人であるかもしれない。古屋は三階へ上る階段の一つに本を仕掛ける。本を踏んだ足跡からその人物を特定することができるかもしれない。そのとき、四宮理学士に声をかけられ、彼は犯人を知っているという。四宮理学士は自身の研究の一環として顕微音器を図書室の階段に仕掛けていたのだ。顕微音器は人間の足音を記録していた。人間の足音は一人ひとり違っていて、個人を特定することが可能だという。古屋は「犯人を教えてほしい」と四宮理学士に哀願するが、教えてもらうことはできなかった。
古屋はミチ子が犯人だと疑っていた。ミチ子に逃亡を勧めるつもりだった。ミチ子を探し、図書室の事務室に入った瞬間、女性の悲鳴が聞こえた。佐和山女史の身体が螺旋階段を転がり落ちてきた。そしてミチ子が階段から降りてきて言った。「四宮さんは二階に殺されていてよ」
古屋はミチ子に「早くお逃げ」と言ったが、ミチ子は「貴方こそお逃げなさい、今のうちに」と返す。そして古屋が仕掛けた本を袖の中から取り出す。ミチ子は古屋がすべての犯人だとカン違いしていた。だから証拠となる本を古屋に渡して逃がそうとした。ミチ子も古屋を愛していたのだ。
事件の真相はつぎのとおり。芳川博士を絞殺したのは佐和山女史だった。自分が犯人だと悟られたため、四宮理学士も絞殺した。急いでその場を離れようとした佐和山女史は、古屋の仕掛けた階段の本に足をとられて螺旋階段を転がり落ちた。佐和山女史は理学士認定のため芳川博士と忌まわしい関係を結び、その情痴のはてに事件は起こった。事件発生時の顕微音器の記録には、佐和山女史の足音が確かに残っていた。ミチ子は友江田先生の異母妹であった。古屋はミチ子と結婚したあとにその事実を知った。古屋とミチ子には互いに変質的な傾向があった。今日もこれから家に帰って、革鞭でミチ子の背中を血が出るまでひっぱたいてやろうと、古屋は思う。
狐人的読書感想
……ふむ、結局主人公が脚フェチとSMに目覚めた、というお話なんでしょうかね、これ。東野圭吾さんの『ガリレオシリーズ』的な(?)、科学要素のあるミステリーといった感じでしたが、脚フェチとSMのほうが印象としては強く残りました。
顕微音器、足音で個人を特定するという装置が登場しましたが、さすがにこれは現代科学でも難しそうな気がしますね。そもそも足音ってみんな違うものなんでしょうかね? 歩き方や左右の足の長さによって違いがあるようにも思えますが、個人を特定できるほどではないような気がします。
古屋とミチ子の関係を純粋なものにしてもよかったような気がしますが、しかしそれだと印象は弱くなってしまうかもしれませんね(これがエログロナンセンスの持つ力か……?)。
なんやかんやでけっこう楽しく読めたように思った、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
とある性癖に目覚める系科学ミステリー?
狐人的読書メモ
・『階段/海野十三』の概要
1930年(昭和5年)10月、『新青年』にて初出。
以上、『階段/海野十三』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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