不思議な島/芥川龍之介=これは芥川さんのグチなんだろうか?

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

不思議な島-芥川龍之介-イメージ

今回は『不思議な島/芥川龍之介』です。

文字数7400字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約18分。

『河童』のような芥川龍之介の風刺小説の一つ。ガリヴァーとサッサンラップ島で語る野菜の話は、じつは小説のことを言っている。小説が大量生産大量消費される時代の小説家のグチ?

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

「僕」は船の甲板にいた。目の前には野菜だらけの島があり、隣にいるイギリス人らしき老人が「あれはサッサンラップ島だ」と教えてくれた。その後「僕」は意識を失い、気がつくと島のホテルのサロンにいた。「僕」は老人と野菜について話をした。

サッサンラップ島の人はみんな野菜を作っていて、それは売れ残ってうず高く積み上げられている。野菜は商人が「間に合わない、間に合わない」と言いながら買い付けるのだが、野菜の善悪、つまり売れるか売れないかは片輪(身体の一部が欠損している人)が決めるという。しかし片輪に聞いても野菜の善悪の明確な区別などはなく、ひとによっては栄養だったり味だったりする。それは大学の教授であっても難しいようだ。……

甥が呼んでいるので「僕」は老人と別れることにした。握手して渡された名刺に「レミュエル・ガリヴァー」と印刷されていて驚いた。甥の声に「僕」が目を覚ますと、傍らには読みかけの『ガリヴァー旅行記』があった。どうやら三十分ばかり昼寝をしたらしい。甥は編集者が原稿を取りにきたことを告げにきたのだった。

狐人的読書感想

「『ガリヴァー旅行記』の読書中に見た夢の話」ということからもわかるように風刺小説みたいですね。「野菜の生産者=小説家」「商人=編集者」「野菜の購入者=読者」に置き換えられています。

風刺小説っておもしろく感じるんですよね。

直接的な不平不満だと不快だったりすることもあるのですが、何かに置き換えられた物語として読むとすんなりと受け入れられる気がする、みたいな。

不平不満の不快な要素が、物語化することによって緩和されているということなんですかね、ひとつの物語の持つ力というか、不思議な感じがします。

商人(編集者)が野菜(小説)を「間に合わない、間に合わない」と言いながら買いあさっているところは現代でも言えるところかもしれないな、と感じました。

他の物事と同じように小説もいまや消費物となってしまい、その中から長く残っていくだろう文学を生み出すのって難しいだろうなと考えてしまいます。

読者が小説の善悪を決めるというのは当然のように思えますが、小説を書かない読者が求めているのは純粋におもしろい小説であって、それは一時的に楽しめる物語でしかないのかもしれません。

大量生産大量消費される時代だからこそ今後長く残っていくような作品が生まれることは少ないのかもしないし、あるいは長く残る物語の原型はすでに出尽くしていて新たなものが生まれる余地はもはやないのだということなのかもしれません。

みんなが信仰しているバッブラッブベエダというカメレオンの偶像が出てきますが、現代ではなんとなく本屋大賞みたいな文学賞を彷彿とさせます。

要するに、芥川さんのグチだったのかなあ、と思った、今回の狐人的読書感想でした。

読書感想まとめ

これは芥川さんのグチなんだろうか?

狐人的読書メモ

・「サッサンラップ島(Sussanrap)」は、逆に綴ると「パルナッソス(Parnassus)」となり、これはギリシア神話においてミューズたちが住む、詩、文学、学問の発祥の地(というメタファーとして文学ではよく用いられる)。

・『不思議な島/芥川龍之介』の概要

1924年(大正13年)『随筆』にて初出。1924年(大正13年)短編集「黄雀風」(新潮社)に収録。人間社会を風刺した芥川龍之介の作品のひとつ。

以上、『不思議な島/芥川龍之介』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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