奇妙な遠眼鏡/夢野久作=月世界の一日は人間世界の五万日になるのです。

狐人的あいさつ

コンにちは。狐人コジン 七十四夏木ナナトシナツキです。

読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?

そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。

奇妙な遠眼鏡-夢野久作-イメージ

今回は『奇妙な遠眼鏡/夢野久作』です。

文字数7000字ほどの短編小説。
狐人的読書時間は約17分。

どこでも見える遠眼鏡を手に入れたリイは月世界へ。月世界と人間世界では時間の流れが違い、一瞬で三十年が過ぎた人間世界で二人の兄は王となって戦争を始める。リイの決断とは?

未読の方はこの機会にぜひご一読ください。

狐人的あらすじ

アア、サア、リイという三人の兄弟がいた。三番目のリイはおとなしい性格で、小さいころに目の病気をして片目がつぶれていたので、二人の兄さんにメッカチメッカチといじめられていた。

ある夜、リイは二人の兄に部屋の外へ引きずり出されてしまった。すると魔法使いが現れて、リイに不思議な遠眼鏡をくれた。それは「アム」と言えばどこでも見られ、「マム」と言えばどこでも行ける魔法の遠眼鏡だった。

リイは「アム」と言って月を見て、「マム」と言って月へ行った。月には月姫様がいてリイをもてなしてくれた。リイは月から遠眼鏡で地球を眺めた。すると二人の兄も魔法使いから魔法のアイテムをもらっているのが見えた。

アアはなんでも当たる鉄砲を、サアはなんでも切れる刀をもらい、王様の城へ行って戦争で活躍し、それぞれ国を半分と王様の娘をお嫁さんにもらって親孝行をしていた。

リイが驚いていると、月姫様は「月の世界の一日は人間世界の五万日になり、あなたがその遠眼鏡を使っている間に人間世界では三年が経った」と教えてくれた。

リイは月世界でおもしろく遊んだが、またふと人間世界を遠眼鏡で覗いた。すると人間世界では三十年が過ぎていた。王様と両親はすでに亡くなり、二人の兄が王様となって戦争を始めようとしていた。

リイは遠眼鏡でアアとサアの城の宝物庫へ行って、二人の鉄砲と刀を盗み出した。そして二人の兄に仲よくするよう伝えて月の世界に帰った。

二人の兄は子供のままのリイの姿を見て、リイは神様になったのだと思った。以後、二人の兄は人間世界で仲良く暮らした。

月の世界に戻ったリイは、月姫様に言われて片目が治っていることを知った。きっと兄たちを仲直りさせたことで、神様がごほうびに治してくれたのだと思った。

リイはいまでも月の世界から遠眼鏡でみんなが悪いことをしていないか、見ているかもしれない。

狐人的読書感想

浦島太郎を思わせるハートフルな童話でしたね。最近の夢野久作さんの読書は、ちょっとグロめの話を続けて読んでいたので、こういうお話も書いているんだよなあ、ってちょっとギャップを感じました。

「末子成功譚」はグリム童話などでもおなじみですよね。なんとなく西欧童話風の雰囲気と日本童話風の雰囲気がミックスされて感じられて、けっこう楽しく読めました。

教訓は「みんななかよく」と童話っぽくシンプルでした。

月世界に行ったリイがあまり人間世界に拘泥していないところが印象に残りました。なんかもっと人間世界を懐かしんだり、両親に会いたいとか思わなかったのかなって気がしますが、まあリイからしたら一瞬で何年も人間世界の時間が経ってしまっているので、うまく実感ができなかったのかもしれませんね(その前に童話だから気にしちゃダメなところかもしれませんね)。

そういう意味ではリイはたしかに月の世界へ行って神様(超越者)になった感じがします。決して感情がないわけではないのですが、どこか無感情に見えてしまうのってなんとなく神様っぽいんですよね。

・どこでも見える遠眼鏡
・なんでも当たる鉄砲
・なんでも切れる刀

これら三つの魔法のアイテムも興味深かったです。創作のヒントになりそうですよね。童話にはおもしろいマジックアイテムがけっこう出てきて、いつもおもしろく感じます。

今回はなんといっても「どこでも見える遠眼鏡」ですね。どこでも見えるし、どこでも行けるって、すごいアイテムですね。

「どこでも見える遠眼鏡」が欲しい、そして月の世界へ行ってみたいなと思った、今回の狐人的読書感想でした。

読書感想まとめ

月世界の一日は人間世界の五万日になるのです。

狐人的読書メモ

・世界の違いによる時間の流れの違いは創作的にいつも興味深く感じている。

・『奇妙な遠眼鏡/夢野久作』の概要

1925年(大正14年)『九州日報』にて初出。九州日報シリーズ。初出時の署名は『香倶土三鳥』。ハートフルな童話。西洋童話と日本童話の雰囲気が両方とも感じられる。

以上、『奇妙な遠眼鏡/夢野久作』の狐人的な読書メモと感想でした。

最後までお付き合いいただきありがとうございました。

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