狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『二人兄弟/グリム童話』です。
文字数18000字ほどのグリム童話。
狐人的読書時間は約40分。
竜を倒して姫を助ける。王道RPG的なグリム童話。魔物使いの才能。食べると毎日枕の下に金貨が見つかるレア食材。王者の剣。人類の永遠の夢、生命の根っこなどのアイテムが出てくる。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
むかし、金持ちの金細工師と貧乏なほうき作りの兄弟がいた。兄の金細工師は心の悪い男だったが、弟のほうき作りは心の善い男だった。弟のほうき作りには二人の息子がいて、双子だった。
あるとき、弟のほうき作りは森に小枝をとりに行って金の鳥を見かけた。その羽を一枚拾って兄の金細工師に見せると、それが純金だとわかりお金で買ってくれた。翌日、弟のほうき作りは、今度は森で金の鳥の卵を見つけた。やはり兄の金細工師がお金と交換してくれた。兄は「金の鳥そのものがほしい」と言い、弟はまた森に行って金の鳥をつかまえた。兄はたくさんのお金を弟に渡したので、弟はこれで生活には困らないぞと満足して家に帰った。
兄の金細工師は、金の鳥の心臓と肝を食べると毎日枕の下に金貨が一枚見つかるようになることを知っていた。妻に金の鳥を丸焼きにするよう言いつけたが、妻がちょっと離れていた隙にほうき作りの双子の息子たちがやってきて、金の鳥の心臓と肝を食べてしまった。子供たちはいつもその家で残り物をもらっていたので、小さなかけらくらいならいいだろうと思ったのだった。
妻はばれないように鶏の心臓と肝を金の鳥の丸焼きにそえて出した。金細工師はそれらを残さず平らげたが、翌朝枕の下に金貨は見つからなかった。それから双子の枕の下に金貨が見つかるようになった。ほうき作りは兄の金細工師にそのことを相談し、金細工師はようやく事情を呑み込んだ。金細工師は腹いせに「お前の双子の息子たちは悪魔に取り憑かれている。すぐに森に捨ててしまえ」と弟のほうき作りに言った。弟のほうき作りは悪魔を怖れ、泣く泣く双子の息子を森に捨てることにした。
双子の兄弟は親切な猟師に拾われて育てられた。猟師は兄弟の枕の下に現れる金貨を二人の将来のために貯金しておいた。やがて双子の兄弟は猟師の試験に合格し、広い世の中へ旅立つことになった。猟師は銃と犬、貯めておいた金貨を双子の兄弟にそれぞれ与えた。そして最後に光るナイフを手渡して「二人が別れるときがきたら、分かれ道にある木にこのナイフをさすといい。それぞれにもしものことがあれば、それぞれの進んだほうの面が錆びるから、それでお互いの安否がわかる」と言った。
双子の兄弟は旅に出るとウサギを見つけて狩ろうとした。するとウサギは子供を二匹差し出して命乞いをした。兄弟はウサギの子供を旅の供に連れて行くことにした。同様の経緯で、キツネ、オオカミ、クマ、ライオンの子供も二匹ずつ仲間になった。やがて兄弟は別々の道を進むことになり、そこにあった木に光るナイフをさし、動物たちをそれぞれ一匹ずつわけて、兄は東に弟は西に、それぞれ旅立っていった。
弟はある町に辿り着いた。町は黒い布におおわれていた。宿屋で理由を尋ねた。この国では毎年、竜が食べるために乙女を一人要求し、国中の乙女がいなくなり、つぎは姫の番なのだという。王様はその竜を倒した者に姫を花嫁として与え、王位を継承させるというおふれを出し、多くの騎士が挑んだが生きて帰ったものはいない。つぎの朝、弟は竜のいる山に登った。頂上に教会があった。祭壇には三つの盃があり、それらを飲み干せば地上最強の力がつき、戸口の前に突き立った剣を抜くことができると記されていた。弟はそのとおりにして剣を手に入れた。
一方、姫は竜の生贄となるため山を登っていた。大臣がすべてを見届けることになっていた。姫が山の頂上に着くと、そこには一人の猟師がいた。猟師は自分が竜を倒すことを約束し、姫を教会の中に隠した。猟師とお供の動物たちは七つの頭を持つ竜と激しく戦い、これを退治した。姫は驚きと喜びに打たれ、「あなたは私の大切な夫になります」と猟師にハンカチを渡し、動物たちにはサンゴの首飾りをそれぞれ分け与え、とくにライオンには金の留め金を褒美に与えた。猟師は竜の七つの頭から舌を切り取ってハンカチで包み、ライオンに見張りを任せて姫と一緒にしばらく休むことにした。しかし動物たちもとても疲れていたので、ライオンはクマに、クマはオオカミに、オオカミはキツネに、キツネはウサギに、それぞれ見張りを頼んで眠ってしまった。ウサギも疲れ果てていて、誰も見張りを頼むものはいなかったが、ついに眠ってしまった。
遠くからその様子を伺っていた大臣がそこへやってきて、竜が倒されているのを見て自分の手柄にしようと思い、眠っている猟師の首をはね、竜の七つの頭を切り取り、姫と一緒に持ち去ってしまった。姫が目を覚ますと、大臣は「自分が竜を退治したのだ」と姫を脅して王様にウソの証言をさせた。姫は大臣に従うしかなかったが、結婚式の日取りを一年と一日延ばしてほしいと王様に頼んだ。本当の夫の行方がその間につかめるかもしれないと考えたからだ。
やがて動物たちが目を覚ますと、主人の猟師が首をはねられているのを見て驚いた。動物たちはそれをウサギのせいにしたが、ウサギはここから二百時間かかる山に蘇生の根があることを知っていた。ライオンがウサギに二十四時間でとってくるように言い、ウサギはそのとおりにして猟師は生き返ることができた。息を吹き返した猟師は姫がいないことに絶望し、一年間世界をさまよったが、ちょうど結婚式の前日に、再びあの町に行きついたのだった。
町は赤い布でにぎわっていた。宿屋で猟師が理由を尋ねると、明日は竜を倒した大臣と姫の結婚式が執り行われるという。つぎの日になり、漁師は「もしここに王様のテーブルのパンを持ってきて食べると言ったら信じるか?」と宿屋の主人に聞いた。宿屋の主人は「信じない。金貨をかけてもいい」と返した。猟師はウサギを城へつかいにやった。ウサギは姫のところへ行った。サンゴの首飾りをしていたので、姫にはすぐに猟師のウサギであることがわかった。姫は喜んでパン職人に王様の食べるパンを宿屋の戸口まで運ばせた。同様にして、キツネ、オオカミ、クマ、ライオンもつかいに出され、それぞれ焼肉、つけあわせの野菜、お菓子にワインを持ってこさせた。こうして猟師は姫がまだ自分を愛してくれていることを確認できた。
猟師は宿屋の主人に「いまから姫と結婚してくる」と言い、金貨千枚を賭けた。城では王様が動物たちのことを不思議がって姫に尋ねていた。姫は動物たちの主人を呼んでほしいと王様に頼んだ。宿屋に王様のつかいが現れ、猟師は城へ出かけて行った。猟師は王様の前で姫からもらったハンカチに包んだ竜の七つの舌を見せた。それは竜の口にぴったりと合った。そのことは猟師が竜を倒した証明となり、姫は王様にすべてを打ち明け、ウソをついた大臣は処刑され、猟師は姫と結婚して総督に任命された。若い王様は自分の父親と育ての父親を城に呼んで宝物を持たせて親孝行した。賭けには勝ったが金貨千枚はあの宿屋の主人に気前よくあげた。こうして若い王様とお妃様は幸せに暮らし、動物たちも王様に従っていつも一緒に狩りに出かけた。
城の近くに森があり、そこには幽霊が出て、一度入ったら二度と出られないと噂になっていた。ある日、若い王様はお供の動物たちとともに白いシカを追ってその森深く入っていった。しかし白いシカをとらえることはできず、森の中で夜を明かすことになった。と、木の上に魔女がいた。王様は魔女とは知らずにおりてくるよう言ったが、魔女は動物たちが怖いからいまから投げ落とす枝でそれらの背中を打ってほしいと頼んだ。王様が言われたとおりにすると、動物たちは石化してしまった。魔女は王様も石に変えてしまった。
双子の兄弟の兄は仕事が見つからず、世界を放浪し続けていたが、ある日弟のことが気になってあの木のナイフを確認しにくると、弟の行ったほうのナイフの面が半分だけ錆びていた。半分ならまだ弟を救えるかもしれない。兄は弟の行った西へ旅することにした。やがて弟が王様になった国に辿り着き、番兵は王様が戻ったのだとカン違いして兄を城に通した。兄は詳しい事情を知るためにしばらく王様になりすまして様子を見ることにした。とはいえ、夜お妃様と同じベッドに入るときには両刃の剣をあいだに置いた。そしてすべての事情がわかると、兄は森に入って白いシカを追った。同じように森で夜明かししようとして魔女に遭遇した。普通の銃弾は魔女には当たらず、銀のボタンを銃に込めて魔女を撃ち落とした。魔女を脅して弟と動物たちの石化を解かせた。兄弟は再会を喜び合い、魔女を処刑して帰路につく。途中、兄は弟になりかわって王様となり、姫と同じベッドに入ったことを話してしまう。弟は嫉妬にかられて兄の首を切り落としてしまう。衝動的な行いをして激しい後悔の念に苛まれる弟に、ウサギが再び蘇生の根っこをとってきてくれる。兄は生き返り、二人はともに城に戻った。双子の兄弟が戻ると、どちらが本物の王様なのか、周囲の人々は混乱したが、サンゴの首飾りや金の留め金をした動物たちが目印となり、お妃様にはすぐに自分の夫がどちらかわかった。それからみんなで食事をして楽しく過ごした。夜寝るときに、妻が「あなたはどうしてしばらくのあいだ、夜ベッドに両刃の剣を置いていたの?」と聞いたので、弟は兄がどれほど自分に誠実だったかを知るのだった。
狐人的読書感想
グリム童話にしては長かったですね。でもおもしろかったです。竜を退治してお姫様を助けるとか、動物たちを仲間にするとか、RPG的グリム童話の集大成って感じがします。
不思議なアイテムもいろいろでてきましたね。
・金の鳥の心臓と肝(食べると毎日枕の下に金貨1枚が見つかるようになる)
・光のナイフ(旅の途中、二人が別れることになったとき、分岐点の木にさしておく。すると、どちらかの命が絶たれたとき、その者の行ったほうのナイフの面が錆びる。これを確認すればお互いの安否確認ができる)
・王者の剣(竜の山の頂上にある教会の戸口のそばに突き立っている。教会の祭壇の三つの盃を飲み干すことで、その剣を抜くことができる。剣が特別というよりは盃の中身を飲むことで剣を抜けるほどの―最強の―腕力が身につくということらしい)
・生命の根っこ(口に入れるとどんな病気や傷も治すことができる。竜の山から200時間旅をしたところにあるという。ウサギだけがその場所を知っている。ウサギは24時間でそれをとってきた。ウサギはがんばった)
と、こんなところでしょうか。
『金の鳥の心臓と肝』は普通に食べたいですね。毎日枕の下に金貨が見つかったら、一生遊んで暮らせそうです。
『光のナイフ』は現在ではあまり役に立たないかもしれませんね。携帯電話とかで簡単に連絡が取れますし……。だけど災害時の安否確認とかには役立つんでしょうか……。光のナイフが錆びてない、だからあの人も無事生きてる、みたいな?
『王者の剣』は普通にかっこいいですね。アーサー王伝説のエクスカリバーみたいな。しかしこのグリム童話の場合、剣に魔力が宿っているというよりは、『三つの盃』の中身に力を授ける不思議な効力があるようです。最強になれるなら飲んでみたい気がします。
『生命の根っこ』は人類の永遠の夢ですね。きっと大富豪とかに高値で売れることでしょう(やはり金か……)。それだけにいろいろな争いの元になってしまいそうなアイテムですが……。人を生き返らせるアイテムはグリム童話では定番アイテムといった感じです(『三枚の蛇の葉』―KHM16―とかね)。
RPG的な想像力を刺激される材料に溢れたグリム童話だと思った、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
RPG脳を刺激されるグリム童話。
狐人的読書メモ
・作中アイテムでどれが一番ほしいかとか、話してみても楽しいかも。案外仲間の動物たちが一番いいかもしれないけれど。主人公の双子の兄弟には魔物使い的な才能があるよね。
・『二人兄弟/グリム童話』の概要
KHM60。原題:「Die zwei Brüder」。第2版で『金のたまご』に代わって追加された。グリムの注にパーダーボルン地方の話とある。これまでのところRPG的グリム童話の集大成(まだ140作品未読なわけだが……)。
以上、『二人兄弟/グリム童話』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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