狐人的あいさつ
コンにちは。狐人 七十四夏木です。
読書していて、
「ちょっと気になったこと」
ありませんか?
そんな感じの狐人的な読書メモと感想を綴ります。
今回は『めっけ鳥/グリム童話』です。
文字2000字ほどのグリム童話。
狐人的読書時間は約6分。
めっけ鳥は鳥じゃない。鳥にさらわれた子供の名前。めっけ鳥が拾われた家には魔女がいた。めっけ鳥を食おうとしていた。女の子が言う。わたしを見捨てないなら、あなたを見捨てない。
未読の方はこの機会にぜひご一読ください。
狐人的あらすじ
昔、森林官が木の上で泣いている子供を見つけた。獰猛な鳥にさらわれてしまったのだ。森林官は木に登って子供を降ろし、自分の娘のレンヒェンと一緒に育てることにする。子供は「めっけ鳥」と呼ばれ、レンヒェンと一緒に仲よく育つ。
森林官の家には料理番の老婆ザンネがいた。ある晩、ザンネは泉から何度も水を汲んできた。それを見たレンヒェンが、そのわけを尋ねる。ザンネは誰にも言わないことをレンヒェンに約束させてから「鍋いっぱいに湯を沸かしてめっけ鳥を煮るのだ」と話す。
「ねえ、あなたがわたしを見捨てないなら、わたしもあなたを見捨てないわ」
「いまもこれからも、決して君を見捨てたりしないよ」
翌早朝、森林官が狩りに出かけると、子供たちは家から逃げ出した。それに気づいた料理番は、三人の召使いに後を追わせた。子供たちは森の入り口で彼らを見る。レンヒェンはめっけ鳥にバラの木になるように言い、自分はバラの花になると伝える。
召使いたちがやってくると、そこにはバラの木とバラの花以外に何も見当たらず、そのまま帰って、そのことを料理番に報告する。ザンネは「バラの木を折り、バラの花は切って持ち帰らなければいけなかったんだ」と召使いたちを叱りつけ、もう一度子供たちの捜索に出す。
再び召使いたちがやってくるのを見ると、レンヒェンはめっけ鳥に、今度は教会になるように言い、自分は教会のシャンデリアになると伝える。召使いたちは教会以外何も見つけることができず、帰って料理番に報告する。ザンネは「教会を壊し、シャンデリアを持って帰らなければいけなかったんだ」
いよいよザンネ自ら召使いたちと共に森へ向かう。レンヒェンはめっけ鳥に池になるよう言い、自分はそこに浮かぶカモになると伝える。ザンネは池を発見すると、腹ばいになってその水を飲み干そうとする。しかし、カモがその頭をくちばしでつかみ、水の中に引きずり込む。ザンネは溺れてしまう。
レンヒェンとめっけ鳥は一緒に家に帰り、互いの無事を心から喜び合った。
狐人的読書感想
なんだか不思議な話でしたね(グリム童話は、ほぼいつも不思議ですが)。
料理番の老婆ザンネが魔女なのは一目瞭然ですが、レンヒェンとめっけ鳥もバラや教会に変身できるんですよね。しかも、森林官(森の番人)が登場したり……某魔法魔術学校を彷彿とさせられてしまうのは、僕だけ?
「家の料理番が魔女でした」という展開は、グリム童話にはおなじみの、当時の魔女狩り(魔女裁判)の影響が出ているようです。
では、鳥に子供がさらわれるストーリーは、実際にあったことなんでしょうか――調べてみると、大型の猛禽類が人間の子供をさらう事件は、近代でもまれに見られるらしいです。
日本でも1894年(明治27年)12月中旬、大鷲による子供の連れ去り事件があり、『広島県三次町大鷲小児襲撃事件』として当時の新聞に載っています。
捕らえられた大鷲は、翼長二間(約3.6m)、体重六、七貫目(22.5~26.25kg)もあったそうで、翼長2m、体重5kgのイヌワシでも同じ体重くらいの小鹿を運べるとのことなので、子供をさらうことだってできそうですよね。
鷲ってすごいですね。
ひろわれた子(めっけ鳥)とその家の子(レンヒェン)が、一緒に仲よく育ったというのは、なんとなく微笑ましくていい話ですね。
ひろわれた子はやっぱりいじめられてしまうイメージが強いからかもしれません。
「あなたがわたしを見捨てないなら、わたしもあなたを見捨てない」というのは、なんだかシビアというかリアルな感じがしました。
「与えよ、さらば与えられん」みたいな?
どんな人間関係も利害関係なんだよなぁ……みたいな。
まあ、言い方一つという気もしますが。
たとえば、
「ねえ、あなたがわたしを一人にしないなら、わたしもあなたを一人にしないわ」
「いまもこれからも、決して君を一人にしないよ」
とすれば、だいたい意味は同じだけれど、なんか違った感じに聞こえませんか?
義理の兄妹(あるいは姉弟か……姉妹って可能性も?)の絆を興味深く感じた、今回の狐人的読書感想でした。
読書感想まとめ
独りにしないで、独りにしないから。
狐人的読書メモ
・レンヒェンの名前は、リナとされているものもある。ザンネはザンナとも。
・『めっけ鳥/グリム童話』の概要
KHM51。原題:『Fundevogel』。歌の歌詞や店名などで見かけることがある。
以上、『めっけ鳥/グリム童話』の狐人的な読書メモと感想でした。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
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